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異世界小説家  作者: キクメン


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40/383

40:対人戦

 護衛任務を無事終えて、大人しく優しい性格のザラの背に乗りのんびりと町へと向かっていたのだが、どうやらそうした平穏な旅もここまでのようだった。


 双眼鏡で確認したところ、人数まではまだ良く分からないが少なくとも4人以上の、恐らく人間だと思うが、一団がこちらの行く手の前に立ちはだかっていた。そのうち2本の槍が見えた。


 いよいよこの時が来てしまった。モンスターではなく人間を相手に戦わなくてはならない時が。避けられるものならば避けて通りたいが、果たしてどうすればいいのだろうか。


 昨日あの筋骨隆々で歴戦の戦士のようなギルド長のレベルを確認した時、私なんかよりも遥かに強そうな人物でさえレベル6だったのに驚き、さらに防具屋で厳重に管理されたその店一番の防具ですら、防御力6という性能だった。そのことから、恐らく今の私ならば、そう易々と殺されることはないと思うが、それでもこの手で人間を傷つけ、恐らく殺してしまうかもしれないということには大きな抵抗感があった。


 さらに警戒しなければならない点として、これまで戦ってきたスライムやロックワームと異なり、相手はしっかり頭で考えて互いに連携してくるという点である。


 いくら個々の能力が自分よりもレベルが低いからといって、集団で連携してかかってこられたら間違いなくやられる可能性が高い。


 迂闊だった。いつかは現れるであろう事だとは思っていたが、今このタイミングでやってくるとは。


 どうすればいい?どう対処すればいい?ポータルゲートで逃げるか?恐らく10日以上元の世界で過ごせば異世界でも1日くらいは経過して、目の前の一団も諦めるはずだ。


 私はザラに向けてアイテム格納バッグを開いて押し当ててみたが、バッグの中には格納出来なかった。やはり生きている生物は格納出来ないのか。


「クエエー」

 優しそうな目をしたザラをこちら見た。恐らく私だけ逃げ出せば、このザラは捕まって道具として利用されるか売り飛ばされるか殺されるだろう。


 さぁどうする?どうすればいいんだ?何かないか何か・・・


「・・・やるか・・・どうせ、いつかは通る道だ」


 それにしても恐らくこうした事にも慣れているであろうドルバやベルムがせめて一緒にいる時であって欲しかった。


 私はザラの鼻筋を撫でて、そこで待っていてと言って前へと歩いて行った。だがザラは私の後をついてきた。後ろを振り返って手を前にかざして「待て」と強く言ってもしばらくすると私についてきた。


 私はいったん立ち止まってアイテム格納バッグからリュックを取り出し、濃いブルースライムゼリーを二つ取り出してポケットに入れた。さらにリュックの中の残りの濃いブルースライムゼリーとレッドスライムゼリー全種類全てを一つ一つアイテム格納バッグに直接入れ直した。


 そしてまた前へと歩き続けた。


 いよいよ目視でもハッキリと分かる程にまで近づいた。目に見えて確認出来る人数は4人、しかしどこかに隠れている可能性もある。


 一応「地図」と念じてみたが、残念ながら目の前にいる4人の赤い丸印と自分の後ろに付いて来ているザラと思われる青い丸印以外は何も表示されなかった。ちなみに町の中で地図を表示した時、一般人は皆白い丸印で表示されていた。


 私はそこで槍の鞘を抜いた。同時に前方にいる一団も槍と剣の鞘を抜いた。残念ながら平和的なコミュニケーションは出来ないようだ。


 私は槍の鞘をアイテム格納バッグの中に入れて、何度も深呼吸しながらゆっくりと歩きだした。


 心臓の鼓動が鳴り止まず、呼吸も速く荒くなった。手に汗がにぎって、革のグローブをしていないことが大いに悔やまれた。


 とうとう20メートル程の距離まで近づいた、いよいよ相手の容貌が大体分かる程の位置になった。


 私は「情報」と念じたが残念ながらこの位置からでは相手のステータスは確認出来なかった。情報は何より重要だ、自分よりも強ければすぐに逃げ出すし、自分よりも弱ければ僅かでも安心出来る。私は頭の中で「情報」と何度も連呼しながらそのまま歩き続けた。


 目の前の4人は若干うろたえたように見えたが、武器を構え始めた。なんとなく腰が引けて重心位置が高いような気がした。


 間もなく10メートルを割るといったところで、待望の情報が出現した。と、同時に若干上ずった大きな声で「止まれ!」という男の声がした。


 私はまだ槍は構えず静かに止まった。目の前には4人とステータスが表示されており、右から左にスクロールして確認した。


-------------------

???

??歳男性

レベル:3

生命力:28

魔法力:0

持久力:26

攻撃力:3

防御力:3

素早さ:3

幸運度:2

魅力:2

魔法技能:0

異常耐性:0

【スキル】

槍使いLv3

-------------------


-------------------

???

??歳男性

レベル:2

生命力:20

魔法力:0

持久力:20

攻撃力:2

防御力:2

素早さ:2

幸運度:1

魅力:1

魔法技能:0

異常耐性:0

【スキル】

槍使いLv2

-------------------


-------------------

???

??歳男性

レベル:2

生命力:17

魔法力:0

持久力:17

攻撃力:2

防御力:2

素早さ:1

幸運度:1

魅力:1

魔法技能:0

異常耐性:0

【スキル】

剣士Lv2

-------------------


-------------------

???

??歳男性

レベル:2

生命力:15

魔法力:0

持久力:15

攻撃力:2

防御力:1

素早さ:1

幸運度:1

魅力:1

魔法技能:0

異常耐性:0

【スキル】

剣士Lv2

-------------------


 ひとまず私は安堵して落ち着いた。


「貴様はゴドルム村の狩人二人と一緒にいた奴だな!」


 声を出すと舐められそうだったので頷いた。


「ならば、ロックワームを売った時の金を持っているはずだ!それとその槍を置いていけ!そうすれば命だけは助けてやる」


 やはりそうなるのか・・・交渉の余地はなさそうだ。くそう・・・この槍で人を刺さなければならないのか・・・


 私は静かに槍を構えた。そこでふと閃き、槍の穂先ではなく、硬そうな何かの金属製の丸い球、所謂石突で相手の足を狙えば殺さずに済むのではないかと考えた。恐らく二度と歩けなくなるかもしれないが、それでもこの手で人を殺すのだけは避けられるかもしれない。


 私は槍を構え直し、石突の方を相手に向けた。


「舐めやがって!こっちは容赦しねぇぞ!」


 全員がこちらに刃を向けて構えた。しかしその刀身は微妙に震えているように見えた。


 落ち着け、まずはステップワークだ、こちらは今では7メートルの距離までなら減速せずに一気に移動出来る、しかもスマホカメラで見た限りでは全速力の場合、自分の姿は影にしか見えない程の速さだ。


 私はこちらも極度に緊張していることを悟られないように音を立てないように注意しながら呼吸を整え、トーントーンと軽くステップを開始した。


「野郎ッ!」

「囲めッ!奴の周りを囲むんだ!」

「オウ!」


 いいぞ、これは実に良い。相手にとっても私の背後や左右の死角から襲えるので実に良い選択だが、私にとってもこれは実に都合が良かった。


 正面の恐らくリーダー格以外の3人がバラけたのを見計らって、私は真正面のリーダー格に向けて最大速度でステップインを開始した。

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