39:護衛
初めての大きな町の防具屋の鉄格子部屋にて大事に管理されている、この店とっておきの防具を見ることが出来るということで、私は期待に胸躍らせて店員とベルムの後について行った。
「これがウチの店自慢のとっておきの防具です」
そうして店員が指し示したのは、ほんのりとごくわずかに紫がかった金属製の胴鎧だった。
「これは・・・かなりの上物だ・・・一体いくらするのだ?」
「さすがベルムさん一目で分かりますか、これは60万デンです、ウチの店でも一番の高級品です」
「60万デンか!いや、確かにこれだけの防具、それぐらいして当然だろう・・・」
私はすぐに「情報」と念じてみた。
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胴当て
防御力:6
耐久性:6
損耗率:0%
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見た目はいいのだが、私は少々残念な気持ちになり、つい表情に出てしまった。
「まぁそうガッカリせずに、ベルムさん達ならばそう遠くない未来に手に入れられるほどのお金を稼げますよ!」
店員は私のつい残念な気持ちが出てしまった表情をうまい具合に別の意味で勘違いしてくれた。
「そうだな、私の方は稼いだ金は村の皆のために使わねばならないが、タダノならば一度の狩りでこれくらい余裕で買える程の金をすぐにでも稼げるだろう」
「ホウ!ここの方はそれほどの腕前なのですか!」
「ウム、実に見事な腕前だった、今日売りに出した一番のロックワームはタダノが一撃で仕留めたものなのだ」
「そうですか!それは素晴らしい!ウチの店の自慢の防具を見せて良かった!是非ともごひいきにお願いしますね、タダノさん!」
「はい、他にもう少し安い防具はありませんか?」
「でしたら、こちらの胸当て、それとグローブなどはいかがでしょうか」
そうして店員が持ってきた胸当てとグローブを見てみた。
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胸当て
防御力:4
耐久性:4
損耗率:0%
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グローブ
防御力:4
耐久性:4
損耗率:0%
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「ええと、こちらの防具はおいくらぐらいするのでしょうか?」
「はいこちらはそれぞれ40万デンです」
私は値段ではなく性能に対して残念な気持ちになった。
「すいません、今私は手持ちに20万デンしかありません」
「そうでしたか、それは失礼いたしました」
「なに大丈夫だタダノ、明日には我らの護衛任務も完了する、そうすれば40万デン手に入るだろう」
「おお!そういうことでしたか」
「それにだ、もしも運よくロックワームを一匹でも仕留めてみろ、さっきの防具どころか他の防具も全て一式揃えられるぞ」
「それは素晴らしいですね!是非そうして下さいタダノさん!」
今アイテム格納バッグに隠しているプロテクターの方が性能がいいので正直ここにある防具は買いたくないのだが、ここにある防具を買って身につければ周りから怪しまれることもなさそうなので、そういう用途で買うのもいいと考え直した。
「そうですね、分かりました、その時はよろしくお願いします」
「はい、どうか今後ともよろしくお願いいたしますタダノさん」
そうして私達は防具屋を後にした。その後肉屋のすぐ隣の飯屋で朝食を食べ、弁当を買って村へと帰ることにした。今出発すれば日が沈む頃には村に着くとのことだった。
朝通過した門を通る際、ドルバが門番に事情を説明してくれて、数日後もう一度私がギルドの依頼完了報告のために戻ってくると伝えてくれた。
「ほう!いっきに3等級冒険者か!それは大したもんだ、分かった他の連中にもお前さんのことは伝えておく」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
私達は町の門を後にして、ゴドルム村へと向かった。一応護衛任務なので、なるべく辺りを見回して警戒しながら進んだ。ザラは私が操作しなくても真っ直ぐに進んでくれるので、辺りを見回すことが出来るので便利だった。
かなり進んだところで、昨晩利用した休憩所の小屋に到着したので、同じように渡り板を堀の上に置いて小屋の中に入って弁当を食べた。
「タダノは大分警戒してくれたようだが、恐らく我らを襲ってくる者はいないだろう」(ベルム)
「こっちには腕利きの槍使いが3人もいるし、あれだけ大声で大金のほとんどはギルドに預けたと言ったから、小銭稼ぎで命の危険を侵す奴等はいないだろう」(ドルバ)
「なるほど、そうですね、でも一応ギルドからの正式依頼ですし、これからもこうした護衛任務はありそうですから、練習のつもりでしっかりと警戒しようと思います」
「なるほど、さすがだ、ギルド長が感心しただけのことはある」(ベルム)
その後、二人からは護衛任務の際の心得のようなものを教わり、非常に参考になった。
束の間の休憩の後、行きに使用した何かの毛皮の毛布を小屋に戻してから、再び村への帰還を再開した。
それからしばらく移動し続けたが、ベルム達が言った通り自分達を襲ってくるような者は最後まで現れず、無事に夕方にはゴドルム村へと到着した。
村の皆から大歓迎で迎えられ、またしても最高のロックワームの肉のご馳走に舌鼓を打ち、何か乳の香りと味のする甘い酒を飲んだ。酒を飲むのは初めてだったが乳酸菌飲料のようで美味しかった。
翌日、特に二日酔いすることもなく、スッキリと目を覚ますことが出来た。ゴドルム村の人々は相当に早寝早起きなので、自分も昨日は早く寝て、日の出と共に起きた。
「おう、起きていたかタダノ!どうする?今から出発すれば、午後には町に着くぞ」
「そうですか!では是非そうしたいと思います」
「よし、では朝飯を食べたら行くといい、すまないが我らは付き添うことは出来ないが、ザラを貸してやろう、ザラは昨日の小屋の男に金を渡せば、後日我らがまた買い物に行くときに連れて帰る」
「ありがとうございます!大事にお借りします!」
そうして朝食にかなり美味しい雑炊のようなものをご馳走になり、昨日食べたロックワームサンドをお弁当にもらい、水筒はそのまま持っていくといいといってもらい、そして大事な任務完了の符丁となる木片のようなものをもらった。
村の皆から、またいつでも来てくれと言われ見送られながら私はゴドルム村を後にしてまた町へと向かった。
ゴドルム村を出て村が遥か遠くに見える程にまで移動してから、ザラを撫でて停まってと言うと、すぐに停まってくれたので、私はザラから降りてアイテム格納バッグからポータルゲートを取り出して設置した。
昨日自分が乗ったのと同じ大人しいザラの鼻筋を撫でながら「すぐ戻ってくるか待っててね」と言うと、ザラはペロリと私の顔を舐めた。
それからポータルゲートを通り抜けて元の世界に戻り、すぐにトイレへと駆け込んだ。スッキリした後にウォシュレットで入念に洗浄してからまたすぐに異世界に戻った。ザラは大人しく待っていてくれた。
「お待たせ、それじゃ町に行こうか」
「クエエー」
「あっ、お前そういう鳴き声なんだね」
「クエエー」
そうしてまた、大人しくどことなく可愛い優しいザラの背中に乗って、町へと向かっていった。
今はザラ以外に誰もいないので暑さ対策と日差し避けのためにアイテム格納バッグからマントを取り出して羽織ろうとしたが、一応念のためプロテクターも取り出して着込んでからマントを羽織った。マントを羽織ってフードを被った途端、暑さがまるで感じなくなり非常に快適になった。
そうしてザラとの旅を続け、休憩所まで辿り着いたが、ザラをそのまま進ませて、私はザラの背中でお弁当のロックワームサンドを頬張った。
「最高か!」と口にしながらお弁当を食べ、水筒の水を飲み、弁当を食べ終わった後しばらく進んでいたところで、ふいにザラが停止した。
私も何となく違和感を感じたので、アイテム格納バッグから双眼鏡を取り出して前方を見てみた。
どうやら前方にはあまり友好的じゃなさそうな一団がいるようだった。




