表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界小説家  作者: キクメン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/383

32:時間の流れ

 チュートリアルダンジョン、恐らくそう言っていいだろうスライム部屋を攻略し終えた私は、新たな世界、新たな冒険の旅へと突き進んだ。


 素早さ10のブーツの性能を発揮し、出来る限り大きく速く一歩一歩前に出して早歩きを開始したのだが、まるでいつも法定速度内で走っている原付バイクとそれ程変わらないんじゃないか?という速度に驚いた。


 そもそもこれまでの戦闘用ステップワークや水上歩行の検証で少しの間移動したのとは違って、こうしてブーツを履いてまともに移動手段としての早歩きをしたのはこれが初めてである。


 歩きながらどんどん流れていく地面を見ると、本当に原付バイクで走っているかのようで、足を出している速度と足元を流れていく地面の速度が脳内で一致せず思わず「脳がバグる!」と笑いながら歩き続けた。


 この速度でも自分では早歩きをしているという感覚なので、それならば少し全力で走ってみるかと思いついた。高専を卒業してからというもの体育の授業がないのでかなり身体もなまっていたが、ここ最近はスライムとの戦闘で大分足腰も鍛えられたはずだ、ここならば誰の目も気にすることなく全力で走れるので、私は初めて自分の全速力を試してみることにした。


「せーのっ!」


 さすがに地上最速の動物チーターのように時速100キロとまではいかなかったが、先ほど原付バイクでフルスロットルで疾走した60キロと同じか、やや届かないかくらいの速度は出ていた。


 自分の原付バイクもそうだが、大抵の市販車はハッピーメーターといって実際の速度よりも多めの数値が表示される車種が多いということを高専時代に実際にGPS計測器で実測した経験も含めて知っているので、それを鑑みて恐らく本当の実測値としては大体50キロ程の速度が出ているだろうと思った。


 そして驚いたのが、全力疾走可能時間である。最初は息を止める程に目一杯全力疾走をしてみたのだが、それが1分以上も続けられたのである。


 しかもその後筋肉疲労や全身疲労で倒れるかと思ったのだが、今こうして冷静に考えられるほどに徐行運転が可能なのである。これには非常に驚いた。自分の基礎体力と脚力はここまで鍛え上げられてるのか、いや、もしかしたらブーツの性能のおかげかもしれない。


 ともあれ、私は今では軽い駆け足でランニングを続けている、心肺機能も驚くほど向上しているようでまったく息が上がることがなく、我が事ながら信じられなかった。


 そうして時速40キロぐらいで走り続けていると、間もなく夕日が地平線のかなたに沈んでいき、辺りは薄暗くなったので、まだヘトヘトというには程遠いが、少し腹も減ってきたので今日のところはこれで終わりにして家に戻ろうと思い、バッグからポータルゲートを取り出したのだが、鏡の中に映った元の世界の映像がまだ全然明るいのに驚いた。


 私はすぐに元の世界に戻ってスマホを取り出して確認したところ、時刻はまだ午後3時半だった。縁側から家にあがって、目覚まし時計を確認しても同じく午後3時半だった。


 かなり不思議に思ったのだが、走ってて結構脳がバグってたし異世界では日が落ちるのが早いのだろうと考えて、縁側に戻ってポータルゲートをバッグに格納して本日の冒険はここまでとし、早めの夕食の支度をすることにした。


 早めの夕食を済ませ、風呂に浸かり、その後眠くなるまで異世界記録テキストにタップリと様々な事を書き足し、まだ夜の9時台だが眠気を覚えてきたので布団に入り、明日からの冒険に思いをはせながら深い眠りについていった。


 翌朝4時頃に目が覚めて、食パンをトーストして目玉焼きとウインナーソーセージを焼いて食べて、スティックカフェオレを飲んで装備を整え、縁側から庭に出てポータルゲートを取り出して設置した。


 ポータルゲートが元の大きさに戻った瞬間、私は「えっ?」と思った。鏡の先の映像がまだ薄暗い状況なのである。


 私はすぐにポータルゲートをくぐって異世界へと行き周りを見渡してみたのだが、夕日が沈んだ方向がまだかすかに明るく、昨日退出した光景とほとんど全くと言っていい程変わっていなかった。


 まさかちょうどぴったり異世界で1日が経過したのかだろうか?それとも全く異世界の時間が経過していないのだろうか?私は何となく後者のような気がした。


 とりあえずここに突っ立ったままでいるのはもったいないので、ランニングしながら考えることにした。


 異世界モノで現実世界と異世界との時間の流れが違うというのはよくある定番設定だし、何なら相当古い日本昔話の浦島太郎の時代から、時間経過のズレというのは良いネタになっている。そのことから今居るこの世界でも恐らく時間の流れが異なるのはほぼ確実ではないだろうか?どうやってそれを確認しようかと私は考えながら走り続けた。


 走りながらアイディアが二つ閃いたのだが、それを試すにはまだしばらく走り続けようということで、疲れるか腹が減るまで走り続けることにした。


 いつしか辺りはすっかり日が暮れて夜になったのだが、地球の月よりも遥かに大きい月明かりがとても明るく、そして星々も群馬の田舎の家で見られる明るい星空よりもなお一層明るい満点の星々が沢山明るく光り輝いており、走りながら遠くの星々を見てとても感動しながら走り続けた。


 大きな月が移動して頭の真上に来た辺りで、少なくとも4時間以上は走っただろうと、とんでもない時間を走り続けたことをスルーして、そろそろ家に戻ってお昼にしようと思い、その前にスマホを取り出して時刻を確認したところ、まだ朝の5時前という表示に驚いた。つまり全くと言っていい程【スマホの時間】は経過していなかった。


 すぐにポータルゲートを取り出して家に戻り、目覚まし時計を確認したところ、やはり午前5時前だった。


 私は走りながら二つのアイディアを閃いていたが、どうやら二つ目の方のアイディアを試してみることは必須だなと頷いた。ともあれその二つ目を試すのも今ではなくまだ先なので、私はいったんポータルゲートをしまって昼食をとることにした。こちらではまだ朝の5時ではあるが・・・


 昼食後しっかり休んだ後でまた異世界に戻り、月明かりの中ひたすら走り続け、途中で小腹が減ったのでまた家に戻り、相変らず朝5時前であるのを確認しながらバナナを食べて牛乳を飲み、小休止してからまた異世界に戻りさらに走り続けると、背中から温かな朝日の光を感じ目の前を走る自分の影がクッキリと濃くて長いのを見ながら走り続けた。


 結構な疲労感とかなり腹が減ったので、今日の冒険移動はこの辺りで良いだろうということで、ポータルゲートを取り出して家に戻り、いよいよ二つ目のアイディアに必要な古い機械式のアナログ針時計を持ち出して来て、もう一度異世界に戻りアナログ針時計を地面に置いてスマホでその時の時間を撮影した。


 少々不安であるが、誰かに持ち去られることはまずないだろうと思ったし、まだ一度も接触していない何かの動物に持ち去られることもなさそうだし、乾燥した荒野で天気もいいから雨に降られることもないだろうということで、そのまま置きっぱなしにすることにした。


 その後家に戻って夕食を食べシャワーを浴びて、先ほどのアナログ針時計の時間を含めて今日の出来事を異世界記録テキストに追記して朝寝することにした。ちなみに家に戻って夕食を食べてから寝るまでに3時間程経過したので時刻はまもなく午前8時になろうとしていた。


 その後目が覚めたので目覚まし時計を確認すると午後4時過ぎだった。腹が空いたので夕方に朝食を食べるというなかなかに昼夜逆転生活のようなことをして、腹が膨れたところで装備を整えてポータルゲートを取り出して異世界に入ってみると、異世界はまだ日の光が強いままで、地面に置いた機械式アナログ針時計を見たところ、想定通りほとんど変わっていなかったが、しっかりと針が動いているのを確認した。


 この結果から、恐らく私がどちらかの世界に行くと、もう一方の世界は時間の動きが止まる程に遅く流れるのだろうと結論付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ