21:アイテム格納バッグ
先ほどまでまるで冷蔵庫のように直立していた大きな岩は、私の槍のひと突きで綺麗に真っ二つに割れて後ろに吹き飛んでいった。
私はポカーンと間抜けな顔をしつつも「ハッ!」と気が付いて、すぐさま穂先の刃を確認した。
相変らず私の顔が映りこむ程に美しい刀身にはまったく刃こぼれした様子はなく、じっくりくまなく注視してもどこにもキズ一つ付いていなかったので私は大きく息を吐いて安堵した。
その後二つに割れた岩へと近づき、断面を見たところ、磨いた御影石かと思う程に美しかった。
私はこれでもう十分良く分かったと納得することにして、攻撃力測定記録を終了した。これからは異世界はさておき、現実世界ではなるべく人の多い所に行って、力を発揮するような場面には出くわさないようにすることを誓った。
とりあえず岩は物置小屋の近くに並べ、粉々になった岩は地面に埋めて、家の中に戻って今朝からの出来事を異世界記録テキストに新たに追記することにした。
その後の暇つぶしにかなり悪戦苦闘したので、やはりどんなに美味しくともイエロースライムゼリーを口にするのはしばらくやめようと心に誓い、念願の午前0時になってもスライム部屋に行くのは我慢して夜が明けるのを待った。
なんとか朝6時まで耐え忍んで時間を潰し、これ以上は我慢出来ないということで、装備を整えてスライム部屋へと向かった。
今日でこの部屋の攻略は完了するはずで、レベルアップと報酬アイテムが何なのか楽しみで待ちきれない思いだった。
早速部屋の中に入り、速攻で終わらせるかそれともゆっくり時間をかけて終わらせるか大いに悩ましいところだった。しかしもう思いつくことは大体試したので、結局すぐに倒してしまうことにした。
そうと決まればその後の行動は実に速いもので、わずか1分もかからずバランスボール大のイエロースライム2匹を倒してしまった。
さぁお楽しみの時間がやってきたぞ、と期待に胸を膨らませて待ち構えた。
すると早速黄色い枠が表示され、その中には次のように書かれていた。
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多田野 仁
20歳男性
レベル:5⇒6
生命力:50⇒60
魔法力:50⇒60
持久力:50⇒60
攻撃力:5⇒6
防御力:5⇒6
素早さ:5⇒6
幸運度:5⇒6
魅力:5⇒6
魔法技能:5⇒6
異常耐性:5⇒6
【スキル】
ステップワークLv5⇒Lv6
キックLv5
槍使いLv4⇒Lv6
【魔法】
小回復
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そしてさらにお待ちかねの報酬アイテムが何なのか、ワクワクしながら足元を見てみると、そこにはそれ程大きくない肩掛けバッグと濃いイエロースライムゼリーが出現していた。
私はバッグを見てすぐにピンときた。恐らくこれはゲームや異世界モノによくあるアイテム格納バッグだと。
まさしくその通りで、バッグを手にした瞬間目の前の上の方に「0/200」という文字が表示され、私は思わず「バッグキターッ!」と声に出して喜んだ。
これはもうすぐに家に戻って色々確認せねばと喜び勇んで家に戻ることにした。次の部屋はボス部屋だが、楽しみは後にとっておいて、まずはこのアイテム格納バッグをあれこれ試すのが先決だ。
元の世界に戻ってまず真っ先に向かったのが物置小屋で、まずはお爺さんの原付バイクをバッグに入れてみようと思った。いきなり軽トラを試してみてもいいが、さすがにそれは飛躍し過ぎだと思い、普通に本来ならば有り得ない物として原付バイクが真っ先に思いついたのだ。
頑張れば原付バイクぐらい簡単に持ち上げられると思うが、とりあえずバッグを開けて原付バイクに近づけてみた。すると原付バイクはバッグに吸い込まれるように入っていった。
「スゲーッ!」
これにはさすがに思わず声が出た。
そしてバッグの中がどうなっているのかと思い、バッグの中に手を入れた瞬間、目の前上部に「1/200」という数値と、小さな原付バイクの写真が表示された。
次に原付バイクをイメージして取り出そうと思うと、原付バイクの模型を手にしたような感覚が伝わり、それを取り出して地面に置くとすぐに元の大きさに戻った。
私は小躍りする程喜んで、もう一度バッグに原付バイクをしまいこんで、すぐに古墳の洞穴に向かって行った。そして青黒い石の回廊に着いてすぐに原付バイクを取り出して、エンジンをかけてみると無事にエンジンは始動して、私はまたがってゆっくりとアクセルを回してみると、全く問題なく原付バイクは動き出した。
これは予想以上に嬉しくて、私は「イエーイ!」とまるで初めてバイクに乗った学生のように大はしゃぎで喜んだ。
そしてボス部屋の扉の前で停車して方向転換し、今度は原付バイクに乗ったまま元の世界に戻れるか試してみた。一応手前で停車して、ゆっくりと前進してみたところ問題なくバイクに乗ったまま通過することが出来た。
ちなみに元の世界からは古墳の洞穴のサイズが小さいので、バイクでそのまま通過は出来ないだろうと思ったし、やってみるつもりもなかった。
とにかくもういきなり上出来の状況に私は本当に大喜びだった。その次に一応念のため軽トラに試してみたがもちろん何も起きなかった。
次にイエロースライムゼリーを普通のを3っつ、濃いのを4っつ入れてみたところ、7/200と表示され1個1個別々の写真が表示されたが、濃いブルースライムゼリーが4っつと空の水筒とタオルが入っているリュックを入れてみたところ8/200と表示されて、リュックの写真が表示された。
またしても私は小躍りする程に喜び、さらに素晴らしいアイディアが閃き、いったん家に戻って普段着に着替えて原付バイクでコンビニに向かった。
コンビニではアイスを2つとアツアツの肉まんを買ってバッグに入れて家に戻り、バッグからリュックとアイスを1つ取り出して、リュックの中にアイスを入れてからまたバッグにしまった。
その後午前10時を過ぎたところで軽トラに乗って大型店舗のホームセンターに行き、一番大きいサイズのクーラーボックスとコンテナボックスを買って軽トラの荷台に載せて家に戻り、家に着いてからコンテナボックスに短剣と衣類と適当に目についた日用雑貨品を入れて中身が空のクーラーボックスと一緒にバッグにしまってみた。
試しに目をつぶってバッグに手を入れてみると、まぶたの裏には12/200と表示されて、コンビニで買ったアイスと肉まんとクーラーボックスとコンテナボックの写真が新たに追加されていた。
私は嬉しくてたまらず、この喜びを誰かに伝えたい程だったが、当然思っても実行にうつすことはせずタブレットPCを開いて異世界記録テキストに書き加えることで心を落ち着かせた。
テキストに追記しながら他にも何をどこまで格納できるのか考えてみた。例えば水など液体をそのまま入れたらどうなるのかとか、生き物は入れられるのかとか、自分自身が入ろうとしたらどうなるのかとか・・・と、書いたところで私は唾をゴクリと飲み込んで顎に手を当てて考えこみ、少々危険ではあるが試してみることにした。
もしもバッグに入ったら最後、自力で脱出出来なくなったらどうしようかと考えたが、意を決して試してみることにした。腕を入れるとアイテムを取り出すと認識されるようなので、私は大胆にも頭からかぶってみた。
しかし何も起こらず、足でも試してみたがやはり何も起こらなかった。この結果にガッカリすることはなく、むしろ少し安心した。
次にホースで水を入れてみようと思ったが、今後そうした状況などあるだろうかと考え、もしも大量に液体を格納したい時がきたら、その時はコンテナボックスとか子供用の空気で膨らませるプールに入れて格納すればいいかと閃いたので直接バッグの中に液体を入れる実験はしないことにした。




