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異世界小説家  作者: キクメン


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19/383

19:動画撮影

 たった今閉まったばかりのスライム部屋の扉を開けてみると、そこには思った通りバランスボール程の大きさのイエロースライムが2匹いた。


 私は大いに喜び部屋の中に入ろうとしたが、何の考えもなしにただ入って戦ってはその後の時間がヒマで大変だと考え直し、その場でどうやって時間を潰そうかと考えた。


 そこで先日カメラの三脚を買ったことを思い出して、自分が戦う姿を撮影しようと考えた。といっても動画投稿サイトなどに投稿するためではなく、さらにその他のSNSに投稿するためでもなく、あくまでも自分の記録動画として録画するつもりだった。そもそも私はSNSの類は一切やっていなかった。


 いったん家に戻って、まだ開封すらしていなかった三脚を取り出して、スマホを固定するアダプターを取り付けてスライム部屋へと戻った。


 まがりなりにもモンスター部屋だというのに、どこにカメラを設置すればいいアングルで自分とイエロースライムを映すことが出来るだろうかなどと、極めて相手を軽視して油断しまくって舐め切った行動を私はとっていた。


 考えてみれば私が本気を出せばあちこち移動することなくすぐにイエロースライムを倒せるので割と近くに三脚を設置してもいいかと思った。


 そもそも投稿動画のように視聴回数を稼ぐとか誰かに見せるわけではないので、いつもの自分の地味だが確実な動きで倒す様子を記録に撮るだけなので見栄えの良いアングルにこだわる必要もないなと考え直した。


 とはいえ、それでもせめてちゃんと記録動画として自分が納得できるくらいの動画は残したいので、なんとか自分の動きとイエロースライムの動きが画面に納まる距離と角度を確かめながらスマホを固定した三脚を持ってイエロースライムの周りをウロウロ動き回っていた。第三者が見ていたらさぞやおかしな光景に見えたことだろう。


 とりあえず妥協出来る場所に三脚を置いたので、いよいよ私はイエロースライムを攻撃することにした。チラチラとスマホを見ながらの攻撃という有様で、戦いをかなり舐めているような態度だった。


 とりあえず録画中の赤いライトが光っているのを確認して、イエロースライムをいとも簡単にサクッと一刺ししてあっけなく終了した。


 納得いく三脚の位置を決めるのに20分以上かけたのに、肝心の戦闘は数秒で終わってしまった。


 なんといってもこちらは安全圏内で戦えるのと、サッと前方に移動して槍を突き出すだけで終わるので、実に短く味気ない動画になってしまった。


 早速私はスマホに近付いて今の様子を再生して確認したところ、一応イメージ通りに私とイエロースライムがしっかり画面に収まっているのが確認出来て満足した。


 スマホ画面では小さいので、私はリュックからタブレットPCを取り出してスマホと有線接続で繋いで動画ファイルを転送し、早速大きな画面で今の動画をもう一度確認することにした。ちなみにブルートゥースなどの無線接続は出来ないようだった。


 この部屋にはまだもう一匹バランスボール大のイエロースライムが後ろにいるというにも関わらず、敵モンスターそっちのけで自分が撮影した動画を確認するという無防備過ぎる有様だった。


 動画を確認してみるとしっかりイエロースライムの中心核が見える程に鮮明なことに満足したが、次の瞬間私は驚きの光景を目の当たりにすることになった。


 それは何かというと、私の槍の動きがまるで見えないのだ。まるでコマ落ちしたかのように、私がイエロースライムの前で槍を構えたと思った瞬間、まるで一瞬だけ動画が止まったようになって、その後は潰れていくスライムと動作を終えた私の姿になっていたのだ。


 動画再生ソフトのスライダーを動かして、スローモーションにしてみると、スライムは鮮明に映ったままなのだが、私の姿がブレブレで映っている途中の映像が続いているのが分かった。


 私は我が事ながら驚いた。いつも自分目線で戦っていたが、こうして第三者的な視点で客観的に自分を見ると、こんなにも素早い動きをしていたのかととても驚いた。そしてじわじわと嬉しい気持ちが込み上げてきて、少し恥ずかしいが「オレスゲー!」という喜びの気持ちが沸き上がった。


 割とうまく撮れていることに気を良くした私は、次はイエロースライムの攻撃をひたすら躱す動画を撮影してみようと考え、三脚をもってまたしてもどこに置けばうまくファインダー内に収まるかあれこれ設置位置を確認した。


 そこそこいい感じの位置が定まったので、私は槍を持たずにイエロースライムに近づき、またしてもカメラ目線で録画されているのを確認してから、ステップワークを駆使してイエロースライムの対象察知圏内に出たり入ったりを繰り返し、イエロースライムの攻撃を躱して見せた。


 徐々に慣れてきたので、わざと歩くようにして躱してみせたり、マタドール(闘牛士)がサッと華麗に躱すモノマネをしてみせたり、カメラ目線で躱してみせたり、さらにはイエロースライムに触ってから躱してみせたりした。明らかに舐め切っている態度だった。


 他に思いつくレパートリーがなくなったので、一度三脚のところまで戻り、三脚を持って反対側の壁にまで戻った。


 先ほどと同様にして、タブレットPCに今の撮影動画ファイルを移動させて、タブレットPCの画面で録画したばかりの様子を確認した。


 またしても止まって見えるイエロースライムに対して私の動きはブレまくりで、わざと歩くようにして躱した時だけが私の姿も鮮明に映っていたが、それ以外はほとんどブレているようにしか見えなかった。


 そんなに自分のステップワークは速いのか?と少々疑わしくなり、三脚を自分の前に設置して、スマホを取り付け、録画ボタンを押して自撮りを開始した。


 スマホカメラを前にして、私は前後左右にステップワークで移動した。いつも通りの速度と、ゆっくりした速度と、出来るだけ速くした速度を撮影した。その際「普通に移動」とか「ゆっくり移動」というようにカメラの前で口に出してから移動した。


 その間イエロースライムは完全に私の後ろで放置状態だった。


 早速今の動作をタブレットPCで確認したところ、やはりゆっくり移動以外はブレまくりで「全速力」と私が言った後の動画は何かの影が映っているようにしか見えなかった。


 私は自分の姿の動画なのに思わず嬉しくなって興奮して拍手してしまった。まさかこれほどまでに自分は素早く動けるのかと我が事ながら大いに感心した。これでレベル5だというのだから、もしもこの先レベル99とかにでもなったとしたら、それはもう瞬間移動になってしまうのではないかと考え思わず苦笑した。


 攻撃と回避の動画に関してはそこそこ満足いくものが撮れたので、次は何を撮ろうかと考え、出来ればイエロースライムの攻撃力を映像で表すことが出来ないだろうかと考えた。


 例えば軽トラで対象察知圏内に入って正面衝突実験をしてみせるとかだと分かりやすいのだが、残念ながらここまで入って来れないし、そもそもお爺さんの軽トラを壊すわけにもいかない。


 どうしたものかとあれこれ考えたが、うまいアイディアが思いつかず、スライムの攻撃力を録画するのは諦めて、夜が明けて明るくなったら自分の槍の攻撃力とかキックの攻撃力などでも録画してみようと考えた。


 そうして、もうこれ以上この部屋で試してみたいこともなくなったので、私は最後にスマホを片手に持って録画ボタンを押した後、もう片方の手で槍を持ち、イエロースライムにスタスタと近づいて、今の私にとっては大きいので狙うのも容易な中心核にサクッと槍を突き入れてあっさり倒し、そのまま地面に出現したイエロースライムゼリーを拾って、自撮りモードに切り替えて、ほぼ無表情でイエーイなどと実にありきたりなことを言って録画を終了し、家に戻ることにした。

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