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異世界小説家  作者: キクメン


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18/383

18:張り込み

 お爺さんの面会を終えて家に着いた途端、急に眠気が襲ってきた。


 普通のイエロースライムゼリーを半分食べてから4日目でようやく眠くなるのかと私は感心しつつ、干したばかりのフワフワの布団を縁側の近くの畳部屋の上に敷いて、眠気と闘いながらなんとかシャワーを浴びて髪を乾かして口をゆすいでから布団に入って寝た。まだ夕方5時台だった。


 その後私が目覚めたのは午前3時頃でほぼ10時間近くも寝ていたことに驚いた。そして目覚めと共にもの凄い空腹感に襲われ、私はどうしようかと少し考えた挙句、最初のイエロースライムゼリーの半分と4人前シチューの素のルーの4分の1ブロックを水に溶かしてスープを作ることにした。


 目分量で入れた水を沸騰させ、シチューのルーと最初のイエロースライムゼリーの残り半分を入れてから弱火にしてスプーンでゆっくりかき混ぜた。湯気から伝わる香りが実にたまらなく食欲を掻きたて、腹の虫がグゥグゥと鳴り止まなかった。


 5分もかからず全部溶けきってトロリとした黄色のスープが完成した。私は皿に移すことすらもせずに小さな取っ手つき鍋から直接スプーンで掬って飲んだ。


 スプーンを口に運ぶ手が止まらず、後半少し冷めた頃には鍋に口をつけて飲むという有様だった。最後にパンを買っておくんだったと後悔しながらスプーンでなんとか鍋にこびりついた汁を一滴残さずこすりとって舐めるというとても人様には見せられない姿だった。


 全部綺麗に飲み切ってからしみじみ味を思い返すと、十分以上に美味しかったと思える出来だった。もしもシチューではなくカレールーに溶かしてご飯の上にかけたら一体どれほど素晴らしいのだろうかと想像して口の中に唾液が充満した。


 ともあれ気分はこの上なく爽快になり、満腹感と幸福感で満たされて最高に気分が良くなった。


 その後私はそれらも踏まえて、タブレットPCのテキスト記録に追記し、顔を洗って歯を磨いてから装備を整え、スライム部屋へと向かって行った。


 スライム部屋へと向かう途中、どうせ今日からまた4日は眠くならないのだから、今晩はずっと部屋の前で待機して、いつ扉が閉じてスライムが補充されるのか確認してみようと思いついた。


 いつもの扉の前に到着すると、今日は両手で両方の扉を押してみた。もうほとんど力を込める必要もなく両方の扉は全開に開き、そのまま私は中に入っていった。


 今日は一切もったいぶらずに最短でどれくらいの速さで倒せるか試してみることにして、イエロースライムが移動して停止するのを待たずに速攻で仕留めることにした。


 リュックを置いて槍の穂先の鞘を抜き、軽くトントンとジャンプしてから足早にイエロースライムに向かって行った。


 私は全く止まることなく向かって左のイエロースライムに近付きざま槍を突き放った。イエロースライムはまだ動く前だったので難なく中心核を突き抜けてベチャリと潰れながら消滅した。


 続けて全く動きを止めずにもう一匹のイエロースライムに向かって行き、私の射程圏内に入ったところで槍を突き出し始めたのだが、イエロースライムがピョンと私の向かって斜め右奥に逃げるように移動したので、私はイエロースライムの中心核の未来位置を予測して途中で槍の穂先の軌道を修正し、さらに一度踏みつけた右足を左足に引き寄せて送り足を追加してさらに斜め右前方にステップインしながら両腕を伸ばして槍を突き入れた。


 まるでスローモーションのように私の意図した通りに私の槍の穂先の移動とイエロースライムの中心核の移動がピタリと一致し、互いに同じ点に向かって行くのが分かり、そしてその通りになって私の槍は見事にイエロースライムの中心核を貫いた。その瞬間私はまるで極意を開眼した大昔の剣豪のような気になった。


 誰もいない部屋で私は槍を高らかに掲げ、何度も勝どきを上げた。入室からわずか2分程の出来事だった。


 時刻は午前4時、これから長い1日が始まるのかと少々ゲンナリしつつ濃い色のイエロースライムゼリーを拾い上げて私は帰宅した。


 家に帰ってからは昨日お爺さんが言っていたお爺さんの畑ノートを探して整理することにした。以前家の物の整理整頓をしていた時にノートはまとめていたので、それを取り出して何が書かれているのか仕分けしようと思ったが、表紙に野菜の名前が書かれているのですぐに出来た。


 パラパラとめくってみるととても綺麗な字で書かれていて、時折詳細な絵も描かれていてこれは見る人によっては大きな宝物だと思った。しかし今の私にはまだ畑を耕そうという気がないので、とりあえず見開きページごとに写真を撮ってせめて記録に残しておこうと思った。お爺さんには申し訳ないがほぼほぼ時間つぶしだった。


 イエロースライムゼリーの効果なのか分からないが、私は飽きもせず飲食も休憩もトイレにも行かずひたすらお爺さんの畑ノートをスマホで撮影した。全てのノートを写し終えてふと気が付いてみると完全に日が落ちていたので、作業を止めてスライム部屋へと向かうことにした。


 時刻は夜の8時、まだ開いたままのスライム部屋の扉の前で私は待ちづけることにした。とはいえただ待っているのも退屈なので、あらかじめ電子書籍で購入してタブレットPCにダウンロードしておいた「~分かりやすい~初めての資産運用」というタイトルの本を読むことにした。


 当たり前の話だが正直今の私にとっては全然分かりやすくもないし面白くもないのだが、イエロースライムゼリーのおかげで眠くならないので、いつもなら確実に数ページ目を通しただけで眠くなりそうな本でもなんとかいけるんじゃないかと思って購入したのだが、案の定読み始めて早々にマンガやラノベにするんだったと後悔した。


 当然のことながら今居る場所はスマホもネットも圏外でオフラインなので、この場で電子書籍版のマンガやラノベを買ってダウンロードすることは出来ない。それでもせっかくお金を出して買ったのだからせめて頭に入らなくても一度くらいは通しで読むことにした。


 分からないところはどんどん飛ばして読んでいったので、1時間もかからず最後のページまできてしまい、いよいよやることがなくなってしまった。


 どうにも退屈で仕方がないのでタブレットPCに記録しているテキストファイルを開いて、これまでの記載内容を再確認しながら思いついたことを書き足すことにした。その時その時の私の心境も含めて書いていき、結構情報密度が濃くなっていった。


 段々と書いているうちに私もノッてきて、まるで物語調の文章になってきた。これは結構楽しいぞということでどんどんテキストを書き足していき、そういえばあの時はこうだったとか、こうすれば良かったとか、こうしていたらどうなったことだろうかなどと想像が膨らんでいき、時間が過ぎていくのを忘れるくらい没頭した。


 そうして私が没頭していたところ、ズズズと音を立てて扉が閉まっていくのが見えた。


「きたっ!」


 私は口に出して喜び、すぐにスマホを確認したところちょうど午前0時だった。


 扉は徐々に閉まっていき、扉が閉まりきる直前に部屋の中がピカッとフラッシュのように輝き、扉の隙間から美しい光が漏れ出た。


 私はタブレットPCとスマホをリュックにしまって背負い、完全に閉まった扉に近付いて閉まったばかりの扉を開けることにした。

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