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異世界小説家  作者: キクメン


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108:見た目がアレでも

 始まりの町を出立してから3日が過ぎたので、私は現実世界に戻って時間調整をすることにした。


 ただその前に寄宿舎の大浴場に行ってゆっくりと誰もいない大きな風呂を大いに堪能して、その後久しぶりにお爺さんの家の布団で寝た。


 なんだかんだいって結構疲れていたのか、9時間程グッスリ眠り、起きた後はお待ちかねの食事タイムということで、大感謝祭でのワイバルンの特別料理を筆頭に色んな料理や食材がタップリとストックされているので、どれを食べようか選択に困ってしまうほどに嬉しい状況だった。


 これはもう朝からガツンといっちゃう?と一人ニヤけてワイバルンステーキと始まりの町の食べ慣れたナンに似た美味しいパンを食べることにした。


 魔法の町で手に入れた最高に美味しそうな食パンは別の機会にトーストでいただくのだ。何せあれはパンだけでも絶品だから主張が強い他の料理と組み合わせて食べるのはもったいないのだ。


 そんなわけで朝から最高に美味しいワイバルンステーキをガッツリ食べるという幸せを大いに文字通り噛みしめた。


 幸福に包まれた朝食の後は久しぶりにタブレットPCを開いて、これまでの出来事を異世界冒険記録テキストに書き加えた。


 始まりの町でひと月も過ごしたので、テキストファイルも結構なボリュームになり、様々な出来事を思い出しながら書き足しているうちに気分がノッてきて、これは物語形式で書いていったらもっと面白いのではないだろうかと閃き、もう一つ別のファイルを新規作成してそちらに書き始めた。


 これが思いのほか楽しい作業で、時間つぶしにもってこいの作業になった。初日はほぼずっと物語を書いては読み返して文章を修正してという作業に明け暮れて時間を潰すことに成功し、二日目は飛行魔法の着陸基礎訓練に明け暮れた。


 三日目、普通の食事だけではなかなか魔法力は回復しないことが分かり、昨日残り三分の一以下まで消費した魔法力は今は半分を少し超える程度までしか回復していなかった。これによりマナ料理の効果がいかに凄いか如実に分かった。今度マナ料理もテイクアウト出来るか聞いてみて出来るようならエナルと一緒に買い込んでおこう。


 ここでレッドスライムゼリーを食べればすぐに魔法力は回復するが、緊急時でもないのに食べるのはもったいないので、通常の食事と休息のみで回復させることにして、今日は飛行魔法の自主練はせずに異世界冒険譚の続きを書くことにした。


 物語形式で書き続けているとやはり気分がノッてきてかなり良い時間潰しになり、三日目も退屈で辛くなることもなく消化することが出来た。そしてさらに時間を調整をして、現実世界で睡眠を取った後に異世界での朝になるようにした。


 異世界に戻って昨日気に入った小さな店に朝食を食べに行くと、昨日と同じ少女が昨日と同じ席を提案してきたので喜んでその席について日替わりモーニングセットを注文した。


 それほど待たずに出来立てホヤホヤのメインディッシュを乗せたモーニングプレートが運ばれてきたがその際少女から「お客様は冒険者タダノ様でいらっしゃいますか?」と聞かれて少し驚きながらも肯定すると少女は少し微笑んで「これからもウチの店をよろしくお願いしますね」と言って奥へと戻っていった。朝からかなり幸せに気分になった。


 今日の日替わりモーニングはパンがクロワッサンそっくりのバターの香りがたまらないもので、スープはグラムチャウダーのようなクリームスープで、メインは目玉焼きとソーセージだった。食後のお茶はルイン茶というこれまた出てくるまで分からないお茶だった。


 さすがに前回のオムレツのように、もう二度と自分で作ったオムレツは食べたくなくなってしまう程の衝撃的な美味しさとまではいかなかったが、それでも例えばクロワッサンなどはもうスーパーやコンビニで売られているものは買おうという気が起きなくなる程美味しかったし、目玉焼きだって塩コショウだけの味付けなのに何でこんなに美味しいんだ?という程の美味しさだし、ソーセージにしたって、やはりもうスーパーで安売りのものは買いたくなくなってしまう程美味しかった。


 今朝もクロワッサンをおかわりして大変満足した後に、ルイン茶が出てきた。これはかろうじて似たようなものをあげるとすればハチミツゆず茶といったところだろうか、酸味と蜜の甘さが絶妙に美味しくて五臓六腑に染み渡る優しい美味しさだった。


 そうして朝からとても幸せいっぱい元気いっぱい、おまけに確認してみたところ魔法力ゲージも満タンになっていて実に気分良く今日も火の魔法使い達の集会所へと向かって行った。


 集会所に到着したが、やはり誰もおらず、恐らくイフリルも昨日の様子からこちらに来るのは朝昼兼用の食事をする頃だろうと思って、自主練に励むことにした。


 集会所の屋根に飛んで、そこからフワリと着地する昨日の復習練習をして、問題なく出来るようになったので、もう少し高度をあげてもしっかり着地出来るように練習した。


 現実世界と異なりここではもう誰の目をはばかることなく自分の力を発揮して練習出来るので、15メートルを超える高さで飛び上った姿を目撃されても通報されることはない。


 そうしてイフリルが来るまでひたすら着地練習を繰り返したのだが、結局イフリルはやって来ることはなく、かなり腹が減ってきたのでマナ料理店へと向かうことにした。ひょっとしたらイフリルと店で会うかもしれないとも思った。


 マナ料理店に到着したがまだイフリルは来ておらず、開店を待つ客の列の最後に並んだ。といっても自分で3人目という状態で、昨日よりは少し早かった。恐らく爆発事故がなかったからだろう。


 前後にいる人に話しかけられ、幾つか短い会話をしていたところで開店となり、店の給仕に昨日はどうもと挨拶をして、ほぼ朝のイフリルの指定席になっているという席にかけて日替わりを注文した。


 料理が来るのを待っていると頭のてっぺんからつま先まで真っ赤な衣装に身を包んだイフリルが元気よく入って来て、足早にこちらへと近づいてきた。


「おうタダノ!来ていたか!おはよう!」


「おはようございます」


「日替わりくれ!」


 給仕は了解といった感じで片手をあげて応えた。この辺りはいかにも常連といった感じだった。


「午前中は練習してたのか?」


「はい、集会所の倍くらいの高さからの着地まで出来るようになりました」


「おおー!凄いな!さすがタダノだ!よし!それならアタイの計画も実行出来そうだ!」


「計画・・・ですか?」


「ああ、とっておきの計画だ、とりあえず飯を食ったら詳しく聞かせてやる、楽しいぞ!」


「そ、そうですか・・・それは楽しみですね」


 程なくして給仕が同じタイミングで二人分の日替わりランチを持ってきた。給仕が近づいてきた時にジュウジュウというたまらない音がしているのと共に、何かの肉が焼けるすごく良い香りが漂ってきて、申し訳ないがイフリルの話しよりもランチメニューの方が楽しみでしょうがなかった。


「コレはエスカルか?」


「はい、今朝仕入れた新鮮なエスカルです」


「おぉー!こいつはラッキーだぞタダノ」


 目の前に出されたのは分厚い何かのステーキだった。昨日の料理にも入っていたニルニルというニンニクによく似た味の野菜のスライスがカリカリに焼かれて香ばしい香りもたまらなく食欲をそそり、すぐにでもかぶりつきたくなった。


 早速大き目にカットしてみるとナイフがスッと入っていくほどに柔らかく、大きく口を開けて一切れ全部口の中に入れてガブリと噛んだところ、イカ焼きのような弾力性のある食感で、サーロインステーキのように噛んだ途端肉汁がジュワーと出てくる肉と違ってほとんど肉汁は出てこなかったが、肉自体に旨味成分がギュッと濃縮されているようで、噛めば噛む程その旨味が口に広がって征服感が半端なかった。


「モグモグ、ウマッ!モグモグ、ウマッ!何ですかコレ!こんなの初めてですよ!噛むほどにウマイ」


「モグモグ、だろう!エスカルは噛み応え抜群なんだ!ウメェーッ!」


 昨日のポーもだが、エスカルがどんな生き物なのか全く分からないが、コレも実に美味しかった。


 これまでロックワームや大サソリやトカゲやワイバルンなど、元の生き物の見た目がアレでも料理そのものが抜群に美味しいので、私はそうした見た目に左右されることはなかった。

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