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異世界小説家  作者: キクメン


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101/383

101:魔法の町

 中央大陸のそのまた中央にある魔法の町の中央部にある大魔法協会の本部と思われる建物の中にある大広間にて、ハルケンロルグは今回の始まりの町訪問で町長と交わした今後の互いの交易と交流に関する報告を行った。


 その際始まりの町到着直前で非常に純度の高い大きな紫ヒスイが採掘されたことにも触れ、これまでの魔法宝石や黒水晶に漆黒水晶も含めて全てが今回一緒に同行してきてくれた冒険者タダノによる功績であることと、これから魔法の学習のためにしばらくこの町に滞在することを説明した。


 そこで拍手が沸き上がり、全く事前準備もないままに大勢の前で一言挨拶をするように言われた。ここで会長からのまさかの無茶振りを食らうとは思わなかったが、さすがにこれからお世話になる人達の前で何も言わずに済むとも思っていなかったので、ある程度は覚悟していた。


 壇上に立って見渡してみると数百人はいると思われる魔法使いの人達の前で、心の中でマジかよ!と逃げ出したくなる気持ちになったが、なんとか自己紹介をした。とうとう魔法の町で数百人を前にして嘘の自己紹介をしてしまった。


 それから自分の村では魔法に関するノウハウが全くなく、ただひたすらこれまで槍の修行をしていたが、ヴァルヘルムとトゥルリィーンと出会ったことで、私には魔法力があることを教えてもらい、今回の留学を薦めてくれたことを伝えた。


 私の声は風魔法によって遠くの席に座る人にも届けられていて、風魔法は万能だなぁと感心した。


 報告会終了後、別の魔法使いの女性協会員から寄宿舎のある区画へと案内された。魔法協会本部のすぐ近くにある立派な建物で、土魔法で作られたとのことだが、真っ白い大理石のような美しい表面で、やはりどこにもつなぎ目がなく、中世ヨーロッパのデザインを現代建築技法で作ったかのようだった。


 3階建てで部屋数は100部屋程あり、協会設立間もない頃は空き待ちが出来る程に人で溢れていたが、いまでは10部屋程度の利用者しかいないとのことだった。そのため食事は基本的に外でするか、買ってきて部屋で食べるか、以前大食堂として利用されていた食堂にあるキッチンを自由に使っていいので自炊するかして欲しいとのことだった。入浴に関しては一階の大浴場が昼前後の清掃時間帯以外はいつでも利用可能だそうだ。トイレについては各階に二か所共同トイレが設置されているようだった。


 やはりここでも人気があるのは出入りしやすく大浴場にも近い1階でまだ結構空きがあるようだった。確かに基本外食中心で、魔法の講義や修練などに行くのにも1階の方が便利だ。今回は自分の好きな時間に依頼に行けるのと違って、人から教わる身なので、のんびり朝風呂などに浸かるようなマイペースの身分ではないから、1階の出入口近くの部屋にすることにした。


 その後も各施設の利用規則などを説明されて、最後に周辺案内地図を渡され、翌日は火の魔法使い達のいる区画にある集会所に昼までに行くように言われてガイダンスは終了したが、おすすめの食事処とか食べ物を売っている場所はありますか?と聞いていくつか教えてもらい、ついでに生活雑貨や魔法道具などを購入するのに便利な店も教えてもらった。


 部屋に入るのには通常の鍵もあるのだが、さらに防犯対策として扉の横の壁に綺麗なクリスタルの石板があり、それに手をかざすと個人個人で異なる魔法力を感知して認証する機能もついていた。当然魔法力のない人には使えないが、この辺りが魔法の町ならではという感じがした。


 部屋に入って普段着に着替え槍を置いて棒だけを持って、早速魔法の町の料理を味わいに行くことにして部屋を後にした。


 先ほどもらった案内図を見たことで私の情報能力の「地図」もアップデートされており、それを頼りにおすすめの料理店に行った。店は繁盛しているようで大勢の客がいたが、カウンター席が空いているのでそこに腰かけた。


 席に座りメニューと書かれた石板を手にした途端、料理名と写真の様に精密な絵が浮かび上がり、まるで日本でも導入が進んでいるタブレット注文端末のようで非常に驚いた。そのままページをめくって確認し、季節のおすすめ料理のところで絵の下に「注文する」と書かれている文字をトンと軽く指で叩くと「注文しました」という文字が表示された。


 思わず「スゲーッ!」と声に出てしまったところで、水を持ってきてくれた給仕の人が笑顔で「初めての方と思いますが、良く使い方がお分かりになりましたね」と声をかけてきた。


「おや、もしや・・・あなたは、冒険者タダノさんですか?」


「はいそうです、今日こちらの町に到着しました。これからしばらくの間留学生としてお世話になります」


「そうでしたか!ようこそタダノさん!今後とも是非当店をよろしくお願いいたします」


 そう言って給仕の人はいったん戻ってから、ジョッキに入った発泡酒とおつまみを持ってきてくれた。


「こちらは歓迎のサービスとさせていただきます」


「わっ有難う御座います!」


 給仕が持ってきたのは白いビールのような発泡酒で、ビールは苦手なんだけどせっかく持って来てくれたので飲んでみたところ、甘くてごくわずかに苦味のある実に美味しいお酒だった。何かの木の実をもとに作っているとのことだったが、どことなくミルキーな甘さで大いに気に入った。


 頼んだ料理も非常に美味で、大きな器の上にドーム屋根のように覆われたパンの生地をスプーンでパリッと割るとその下にはシチューがタップリ入っており、何かの肉と野菜がゴロゴロ煮込まれていて、味もボリュームも満点の料理だった。これで650デンというのだからリピート決定の店になった。


 人気の店だが回転効率も良いようで、次々と客も入れ替わっていき、自分もひとしきり満腹で満足したので会計を済ませて外に出ると、始まりの町とは違ってあちこちに飲み屋があり、酒だけでなく夜のカフェといった感じのお茶を出して活発に魔法使い同士が議論している店も多数あり、なんとなく大きな大学がある学問の町のような印象を受けた。


 まだ冒険者の頃の生活時間が抜けず、眠くなったので寄宿舎に戻り、大浴場に行ってみるとまるで古代ローマの風呂かと言いたくなるような素晴らしい建築様式の風呂場があった。しかも誰もいないというのがまた素晴らしい。電気こそ使われていないものの、一人一人の洗い場には蛇口もあるしシャワーもあるしもちろん正面には鏡もある。ここまで近代的な設備が整っているとは正直思わなかった。


 始まりの町のバザーで買った孤児達の手作り石鹸で身体を洗い、小さなプールのような大きさの浴槽に浸かって極上の気分を味わった。天然温泉ではないがどことなく森林の香りのする素晴らしい湯を大いに堪能し、部屋に戻っていつも通り現実世界で寝支度を整えてから寄宿舎のベッドの布団にもぐりこんだ。とても清潔感のある肌触りの良いシーツだったがやはりポルルの干してくれた布団とは異なりヒンヤリして少し寂しい気持ちになりつつも眠りについていった。


 翌朝、やはり冒険者のときの習慣で早く目覚めてしまい、朝の魔法の町はどんな様子か確認がてら町に出て見ると、意外と朝早くから店を開け始めているところが結構あった。


 せっかくなので人気のパン屋に行ってみると既に客が並んでいて焼きたてのパンを販売していたので、自分も並んで焼きたての食パンを買ったのだが、並んでいる段階で既にたまらない香りがしてきて、これは相当期待できるぞと朝から胸踊る気分になった。


 一人で一斤買ったのだが当然すぐに食べることはなく誰も見ていないところでアイテム格納バッグにしまい、また別の店を物色すると朝食を提供している小さな料理店を発見したので早速入ってみると、早朝で小さいながらもそこそこ客が入っており、なんとなく常連客のような感じのする人達が静かに食事をとったり食後のお茶を飲みながら新聞を読んでくつろいでいる姿があり、とても雰囲気が良く居心地の良さそうな店だと感じて少し嬉しくなった。

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