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異世界小説家  作者: キクメン


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100:大魔法協会

 大魔法協会が所有する宿泊所の玄関から出て見ると、馬そっくりの動物二頭に牽引された馬車が2台用意されており、今日はこれで魔法の町まで移動するとのことだった。


 馬そっくりな動物はここではルマと呼ばれており全頭美しい白馬だった。そして馬車は驚いたことにサスペンションがついていた。といっても現代的なスプリングではなく板バネになっていた。一応私は高専出身なのでこの辺りの機械構造については少々知識がある。


 いかにも王室貴族が使うような豪華で華美な馬車ではないが、作りはかなり精工でこの手の映像作品で出てくるものとは少しだけ細部が異なり、割と現代的な工業製品的な作りと、少しだけ未来的な流線形のフォルムがとても美しかった。


 そうして私がすごく興味深くあちこち見て感心している様子を見て「タダノはルマ車を見るのは始めてのようだが、着眼点が実に良い、これは中央大陸北部にいるドワーフ職人達によって作られた最新のルマ車だ」とハルケンロルグが教えてくれた。


 私はまずネジが用いられていることに驚いた。しかもちゃんとプラスとマイナスの精工なネジがあるのだ。つまりこれはこの異世界の工業化がある程度進んでいることを示しているのだ。これはいつか中央大陸北部にも行ってみたいと強く思った。


 つい高専の頃の思い出がよみがえり、車輪の車軸の内側にはボールベアリングが入っているのだろうかなどと調べたくなったが、さすがにそこまで専門的な知識があることがバレるとまずいと思ったのと、出発時間を遅らせるわけにもいかないので、我慢して2台目のルマ車にヴァルヘルムとトゥルリィーンと一緒に乗車した。


 ルマ車にも風移動魔法をかけているようで、速度は大体50キロ程もあり、地球の馬と異なり桁違いに持久力が高くほとんど休みなしで走り続けた。これも魔法などで強化しているのだろうか。


 一面の小麦畑を抜けて、美しい草原の丘陵地帯を走り、徐々に民家の数が増えていき、遠くの丘の上に沢山の建築物が立ち並ぶ場所が見えた。どうやらそこが魔法の町のようで、その町には防護壁や柵のようなものは一切ないように見えた。


 それから程なくして昼食休憩のため、結構大きな村へと立ち寄った。この村は太い木によって守られた防護柵が設けられていたが、門はそれほど厳重に警戒している様子はなかった。


 百世帯以上は住んでいるようでここまでくると現実世界ならば小さな町という程の規模だが、ここでは村と呼ばれていた。


 いよいよここまで魔法の町まで近づいていると、生活魔法というものがかなり浸透しており、魔法石の街頭の数が多く、さらに風魔法を利用したエレベーターがあり、まったく継ぎ目のない土壁で出来たかまどのようなものがあった。まさかあれはボイラー室だろうか、だとしたら蒸気機関が存在することになる。


 私がキョロキョロと完全に田舎から出てきたようなおのぼりさん状態で辺りを見回すので、ハルケンロルグ達も少し愉快に思ったのだろう。これから魔法の町に入ればもっと驚くことだろうと言った。


 昼食は始まりの町の高級料理店よりもさらに豪華な感じのする料理店でご馳走になった。まさにコース料理のような上品で豪華な料理が運ばれて、若干テーブルマナーやドレスコード的に大丈夫かと心配になる程だった。


 ただここでも私の名は知れ渡っているようで、とりわけ防具を着込んで槍を持って入店してきたのは自分ぐらいしかいない程に浮いているので、すぐに自分の正体が分かったようで、ロックゴレムやワイバルンをたった一人で無傷で倒したという話しはかなり話しに尾ひれがついて出回っているようで、まるで英雄がやってきたかのような歓迎ぶりで、食後には店主が直々にやってきて、是非とも当店を今後ともごひいきにお願いしますと言って見送られた。


 そうしていよいよ目の前にある大きな魔法の町へと向かうことになった。


 魔法の町への道をルマ車で進んでいると、町には大きな防護壁のようなものはなかったと思っていたが、その手前には何重にも張り巡らされた背の低い防波堤のようなものがあるのが分かった。


 あれは何かと尋ねたところ、かつてまだ町同士の争いが絶えなかった頃に使われた魔法防壁の名残だと説明された。土魔法使いたちが待機して土の壁を何重にも作り、壊れても別の魔法使いがすぐにまた土の壁を作ったそうだ。さらに火攻めの攻撃を受けた際は水の魔法使いが水の壁を作ったり、その逆に火の壁を作って敵が入ってこれないようにしたこともあったそうだ。


 ルマ車はやがて枠だけが残った大門を通過し町の中へと入っていった。その手前から既に地面がコンクリートのように固い地面になっており、道路の繋ぎ目が全くない茶色い舗装道路になっていた。


 建築物も繋ぎ目のないコンクリートのような土の建物があり、それとは別にとても趣のある木製の建物もあった。これも以前はほとんどが強固な土製の建物の方が多かったが、今では町同士の争いもなくなったので風情や趣のある木製建築物も多くなったとのことだった。


 そしてやはり街頭は全て魔法石であり、生活用水路が流れており、それとは別に恐らく地下排水溝と思われるものもあるようで、ところどころにマンホールと思われる金属製のフタが見受けられた。


 至るどころに魔法石が設置されていたり埋め込まれたりしていて、照明用、送風用、送水用など様々な場所に様々な形で配置されていた。


 これは現代日本よりも相当衛生環境が整っていると思った。そもそも結構な建物が密集していて、人も数多くいるにも関わらず都市部にあるような不快な匂いが全くしなかった。


 やがて町の奥深く、中央部付近にさしかかったところで、目の前には実に立派で大きな白い建物が現れた。いかにも中世ヨーロッパの歴史的建造物のような印象を与える建物で、壁や柱に刻まれた紋様や彫刻も非常に精工で芸術的だった。


 大きな玄関前には大勢の人達が出迎えており、ルマ車から降りると拍手で迎えられた。


 出迎えてくれた人達は皆やはり明るいグレーの清潔感漂うローブを来ていたが、魔法の杖を持っている人は一人もいなかったし、魔法使いか被っていそうな帽子を被っている人も一人もいなかった。そのため魔法使いの集団というよりも聖なる宗教関連の人達のような印象を受けた。


 突然真っ赤な絨毯が魔法で出現することもなければ、花が咲き乱れることもなければ、空を飛んで移動することもなく、普通に拍手で出迎えられ、会長のハルケンロルグが手を挙げて出迎えてくれたことに感謝を述べながら足で階段を上っていった。


 私も後に続いて歩いて行ったがやはり一人だけ冒険者用の防具に身を包み、リュックを背負って、袋に入れた棒を肩に掛けて、大きな槍を手にもっているものだから完全にその場にそぐわない恰好となり、かなり場違いな感じをしながらも、出迎えてくれた人たちからの視線は温かく、全く敵意や害意や差別めいたものはなく、ようこそとかお会いできて光栄ですとか後で色んなお話しを聞かせて下さいねなど、好意的な声を投げかけられた。


 玄関ホールには恐らく歴代の偉大な魔法使いだと思われる人物の彫像が立ち並んでおり、どれも凄まじい程の見事な出来栄えで、ただリアルに作られているだけでなく今にも動きだしそうなくらいの躍動感に溢れていた。


 さすがにそれらの彫像達の手には、いかにもといった感じの魔法の杖を手にしていたり、魔法の帽子を被っていたりした者もいた。中には杖も帽子も被らず筋骨隆々な魔法使いもいた。


 玄関ホールを抜けて大きな扉の前に差し掛かったところで扉は一瞬緑色に光り、大きくて重くて頑丈そうな扉はスーッと自動的に開いて行った。現代日本の左右に開く自動ドアとは違って、これぞ魔法だといった感じで両扉が後方に開いていった。


 扉の奥は大広間になっていて、そこには石のような土の座席に座った大勢の魔法使い達がいて、我々が入ってきたと同時に立ち上がって、拍手喝采で迎え入れられた。


 私はいよいよ大魔法協会の懐に入ってきたぞという思いで胸が高まった。

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