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あやかし相談所、永遠に!

 夜神が先頭になって、ジンが運ばれた病院に向かった。そこは、ひかり先生のお父さんが経営している病院で、城山先生が連れて行ったそうだ。ひかり先生のお父さんは校医をやっていて、入院施設もあるし、快く受け入れてくれたらしい。倒れているジンを見つけたのが城山先生だったというのもラッキーだった。こちらの事情をある程度知っている人だったからだ。


 病室に着くと、ジンは意識もあり、思ったよりは元気そうだった。

「――よかった」

 ひかり先生が、ジンのところにかけよった。

「大丈夫か?」

 タイジと私は、一緒にかけよった。


「悪かった、ごめん」

 ジンに謝る夜神。

「夜神が謝るなんて珍しいこともあるもんだ。明日、雪でも降らなければいいけどな」

 とつっこむタイジ。


「大丈夫だよ。ネックレスのおかげで助かったんだ。そして、大けがしたときに、少しずつ、つくもがみだった記憶がよみがえったんだ。城山先生やみんなと実験したことや、夜神と出会ったときのこと。何も疑問に思わず、夜神を家族だと思い込んで行動していたこと……あやつりの力が解けたらしい」

 ジンが握っていたのは夜神と同じネックレスだった。


「いざというときのために、少しだけ妖気を入れて渡していたんだ。僕のそばにいれば、妖怪に狙われる可能性が高いからな」

 ネックレスを見て夜神が答えた。


「ネックレスの妖気に守られて、傷は思ったほどひどくなかったよ、ありがとう」

 ひねくれもののジンが、素直にお礼を言うなんて珍しい。

 そして、ひねくれものの夜神も珍しく素直だ。


「似た者同時だね、ジン君と夜神先生」

 私が思わず声に出す。


「本当にひねくれもの同士似ているね」

 ひかり先生がほほえんで二人を見渡す。


「ひねくれものってどういう意味だよ?」

 夜神がひかりに言い返す。


「でもさ、つくもがみの場合、死ぬってことあるのか? 人間に見えるようにしているだけだろ?」

 タイジがもっともらしいことを言った。


「たしかに、消滅って可能性はあるかもしれないけど、札は効かないし」

 私も納得してしまった。


「俺って正確に言うと、不老不死ってことなんだろうか?」

 ジンが夜神に聞いた。


「そうか、あわてていたせいで、気づかなかったが、ケガをしても、死ぬことはないのか……つくもがみだから……」

 夜神が自分のあごのあたりを触りながら、冷静になって答える。さっきまでの、あわてふためいたときとは別人のようだ。


 ひかり先生がひらめいたように言った。

「でも、人間に見える時間が長くなると寿命が生まれるかもしれない。太陽の神もこの世界に来て、歳を取って死んだのだから」

「今のところ、どんなにケガしても死ぬことはない、最強じゃないか、ジンのやつ」

 タイジの発言はいいところを突く。そして、鋭い。


「夜神、何にも言わないで妖魔界に帰ろうとしていただろ。俺は恨んでないぞ。あやつりの力のおかげで楽しい時間が過ごせたんだから、むしろ感謝しているけどな」

 ジンは、心から夜神を慕っていた。


「僕が妖魔界へ帰ろうとしていたことに気づいていたのか? でも、妖魔界へ帰る量の妖気が足りなかったんだ……」

「夜神はジンのためにここに残る決意をしたんだぞ」

 タイジがその時の様子を伝えた。夜神はバツの悪そうな顔をした。


「立つ鳥、あとをにごして去るわけにはいかないから、僕はここに残るよ。少しずつ妖気はネックレスにためておくけど」

 夜神は照れを隠すかのように言い放った。


「また妖怪に狙われるから、夜神は無茶しない!!」

 ひかり先生は教師らしく夜神に注意する。


「じゃあ、これからは、しばらくこのメンバーであやかし相談所、できるんだね。ひかり先生も夜神先生も入会ね! 夜神先生の居場所はあやかし相談所だよ」

 私が提案する。


 ひかり先生はジェスチャーでOKとポーズを取ったが、夜神は、

「なんで僕が……」

 と気が重そうな顔をした。


「私たちは秘密を共有する特殊能力を持つ仲間なんだから」

「そのとおり!」

 会話に混ざれていなかった城山先生が急に答えた。


 タイジの両親も遅れてやってきた。あんな電話を受け取れば、心配になるのは当然だ。そして、思わぬことを口にしたのだ。


「こちらが札の持ち主に当たる二人なのね、運命感じるわぁ」

 なんて乙女チックなタイジのお母さん。


「この札を持つものは結婚するジンクスがあるんだから、きっと本当の持ち主の二人も結ばれるわね、お父さん」

 タイジ君のお父さんに同意を求める。

 お父さんは困った顔をしながら、軽くうなずいた。

 モフモフ二匹も微笑みながらうなずいた。


 そのことを聞いた光と闇の神が気まずそうな顔をしたのは言うまでもない。

 そして、私とタイジの空気も微妙に甘酸っぱい香りが漂っていた。


 私は、みんなとこの町で生きていく。そして、みんなに出会えたことに感謝したい。どんな妖怪が現れても、この町を守っていくんだから。どんなことがあっても、明日も楽しみと思える毎日を過ごしたいよね。

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