うちのタカシは世界を救います
息抜きで書いた超短編です。
暇つぶしにどうぞ。
「うちのタカシは世界を救います」
その言葉を聞いた時、なんと親バカな友人だろうと呆れたものだ。友人は少々、いや、かなり変わったところがあるいわゆる変人だった。変人と言っても法に触れるようなことはせず、単純に周りから「あいつは変わってる」と言われる程度の変人っぷりだった。
そんな友人が生んだのが「タカシ」だった。タカシはとても優秀で頭がよかったが、一人では動けない問題を抱えていた。障害があるわけではない。単純に動けないのだ。そんな問題はタカシにとっては些細なことで、親である友人に頼んで好きな場所に移動していた。
タカシが「綺麗な景色が見たい」と言えば、友人は綺麗な景色が見えるところにタカシを連れて行ったし、タカシが「六法全書がほしい」と言えば六法全書を買っていた。友人はタカシを溺愛して、大切に育てていた。
タカシはそんな愛情を一身に受けて立派に育った。人の事を思いやれる存在になっていた。
ある時、地球に回避不能な隕石が迫っていることが分かった。各国が総力を挙げてその隕石を破壊しようとしたが、隕石が破壊されることはなかった。
そこで国の最重要機関に所属していたタカシが言った。
『――演算結果を報告します。地球上に存在するすべての兵器を同時に隕石に命中させれば、隕石の破壊は可能です』
タカシは友人が作り出した人工知能だった。タカシはその演算結果を手に世界各国に協力を求め、どう説明したのか各国の協力を取り付ければ隕石の破壊に成功した。
友人がタカシに言った「人類を守って」という願いをタカシは見事に叶えたのだ。
そしてタカシは言った。
『――地球上の軍事設備は私が掌握しました。これより人類は私に“保護”されます』
それから100年。人類はタカシに保護されたまま、自由を奪われた。