女性が三人集まれば…⑤
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こちらでコミックス発売記念SS完結です!
「「…………」」
赤い顔で回想を終えたレナを、ユリアーナとフローラが生暖かい目で見やった。
「お義母様、わたくし、なんだか急に熱くなりましたわ。真冬なのにおかしいですわねぇ」
「わたくしもよ、フローラ。馬に蹴られてなんとやらとはよく言ったものね。別に邪魔をしたつもりはないんだけれど、調子に乗りすぎたみたい。純愛に胸をときめかせるには、わたくしたちは擦れすぎているようね」
「ええ、本当に……」
何故か疲労感たっぷりにため息を吐かれてしまった。
「何はともあれ、仲がよさそうでよかったわ。誰に似たのか、四兄弟の中で一番朴念仁だったクラウスが、変われば変わるものねぇ」
ユリアーナがしみじみとそんなことを言って、クッキーに手を伸ばす。
「婚約したての子を揶揄うのはこのくらいにして、重要な話をはじめましょう。ねえ、フローラ」
「ええ、そうですわね」
(重要な話?)
今日はただお喋りを楽しむために呼ばれたのではなかったのだろうか。
レナが首を傾げると、真剣な顔をしたフローラがクッキーを口に入れてテーブルの上で手を組んだ。
「フローラ、議題を」
「ええお義母様」
どこから取り出したのか、フローラがさっと紙の束を取り出す。
「じゃあはじめるわよ、レナ。議題はそう――あなたとクラウス様の結婚準備についてよ‼」
「ええ⁉」
ついこの前婚約したばかりなのにとレナは目を丸くしたが、新たに家族になるレナに興味津々の二人は、その後、ドレスがどうだのパーティーがどうだのと大盛り上がりで、レナが解放されたのはそれから四時間後のことだった。
☆
「くしゅん!」
「兄上、どうしたの? 風邪?」
「いや――」
リシャールの部屋で休憩を取っていたクラウスは、不意に背筋を這いあがって来た寒気に嫌な予感を覚えた。
「リシャール、レナは今、母上とフローラに捕まっているんだ」
「ああ」
それだけで合点したリシャールが苦笑を浮かべる。
「母上と義姉上は、レナを新しいおもちゃにするだろうね。頑張ってね、兄上」
その結果一番迷惑をこうむることになるのがクラウスだろう。
他人ごとのように言って笑うリシャールをじろりと睨んで、クラウスはがっくりと肩を落とした――







