女性が三人集まれば…①
★ご注意事項★
本作はノベルを最後まで読んだ方向けの後日談SSです。
ノベル版ではWeb版のその後の物語も含まれており、時系列としてはノベルラストのあとの物語となりますので、WEB版だけ読まれた方はこちらのSSを読むとネタバレにつながる可能性がありますのでご注意ください。
また、コミックス派の方で、ネタバレがお嫌いな方は、コミックスが終わるまでお待ちいただいてから読まれた方がいいかと思いますのでご注意ください。
「それで、レナってクラウス様とどこまで進んでいるの? 行くとこまで行ったのかしら?」
「ぅぐっ!」
うふふ、と無邪気な笑身を浮かべてのフローラの爆弾発言に、レナは口の中のクッキーを喉に詰まらせた。
「あら、フローラは直球ね」
フローラの隣で、これまた「うふふ」と楽しそうに笑っているのは、王太后ユリアーナである。
王弟クラレンスを夫に持つサラバード公爵令嬢と王太后という錚々たる顔ぶれに、ちょこんとなんてことない伯爵令嬢のレナが混ざって何をしているのかと言えば、ユリアーナに誘われた「身内のお茶会」だ。ちなみに三人だけのお茶会で、王妃テレーズは呼ばれていない。声をかけたとしても、ユリアーナを恐れてこないだろうとフローラが言っていた。
しばらくジョージル三世とテレーズの監視をすると言って、エルネスト前国王夫妻が王都に滞在して約十日。
クラウスがもぎ取った一週間の休暇を使い彼の領地のスケート場に行っていたレナが、帰って早々に待っていましたとばかりに開かれたお茶会だった。場所はユリアーナの部屋。内緒話を楽しむように、侍女たちは遠ざけられている。
レナが喉に詰まったクッキーをやっとのことで紅茶で流し込むと、フローラがわくわくと顔を輝かせてさらに畳みかけてきた。
「ちゃんと男らしく求婚されたんでしょ? 一週間も旅行に行っていたんだもの、もちろんうふふな展開はあったのよね? ね?」
クラウスの生母の前でなんて恐ろしい質問をするのだろう。
レナは青くなったが、何故かユリアーナも食いついて来た。
「あらあら、そうなの? 色恋沙汰には奥手そうなあの子は頑張ったのかしら? で、どうだったの? あの子はちゃんとできた?」
(ひーっ)
あけすけな言い方に、レナは今度は真っ赤になった。
このままだと盛大に勘違いをされそうで、ぶんぶんと首を横に振る。
「なにもありません‼ ありませんでした‼」
すると、途端に二人ががっかりした顔になる。
「え、だって一週間よ……?」
「同じ部屋だったんでしょう? そう聞いてるけど……」
フローラはともかく、ユリアーナはレナとクラウスの部屋情報をどこから仕入れてきたのだろうか。元王妃の恐ろしいまでの情報収集力にレナは茫然とする。
「本当に何もなかったの? 何かあったでしょ、何か! 隠してないで教えてちょうだい」
最近娯楽に飢えているとこぼしているフローラは、「娯楽」という意味を取り違えているのかもしれない。レナとクラウスの話題で盛り上がる気満々だ。
(な、何かって言われても……)
レナはふと一週間前のことを思い出す。
幻想的な雪で作られた祭壇。
揺れるオレンジ色の蝋燭の灯り。
レナの前に跪き、見上げてきたクラウスの綺麗な顔。
真剣な碧色の瞳に、告げられた求婚。
そして――
「――――――っ!」
レナは真っ赤になって両手で頬を抑える。
その瞬間、フローラとユリアーナがずいっと身を乗り出して来た。
「「やっぱり何かあったのね⁉」」
この義母と義娘は、なぜこうも息がぴったりなのだろう。
さあ白状しろと迫られて、レナは赤い顔でぽつりぽつりと語り出した。







