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第七十四話——エピローグ——

 まるで夢から醒めたみたいだった。あの循環の世界での出来事が嘘だったみたいだ。 

 雑居ビルが立ち並び、スーツを着たビジネスマンがうろうろしている。

 

——ここはどこだ?


 俺は振り向いてココに話しかけようとしたが、穴はすでに塞がっていた。


 反対に、心には穴が空いてしまったような気分だ。

 自分がここにいる違和感が半端ではなかったが、地球であることは確かだ。そうだ、スマホ!

 俺はスマホを取り出してマップアプリを開く。場所は……ああ、ここか。実際に来たことはなかったが西大附属に近いビジネス街だ。名前だけは聞いたことがある地名だ。


(……おお! それがスマホか⁉︎ すごいな)

(コル……ついてきたのか⁉︎)

(そりゃ、我を置いてこなかったらそうなるであろう! そんなに一緒にいたかったのか! 仕方がないから一緒にいてやるぞ! ほらスマホを使ってみるんだ!)


 俺はため息をつく。

 確かに地球に興味を持ってたからな……。わざとついてきたのかもしれない。まあ、困らないから別に良いけど。

 俺はスマホで駅の場所を確認してそっちに向かう。


 日時は……ちょうど俺が異世界で過ごしていた時間が経過している。

 俺はどういう扱いになってるんだろうな? 行方不明?

 

 俺は財布から小銭を取り出して、家の最寄りまでの切符を買った。

 電車に乗っている間、コルハジャは興奮し続けていた。センチメンタルな気分が紛れるから、その点ではコルが付いてきてくれて良かったと思った。

 

 俺は電車から降りて、駅の外に出た。田舎とも都会とも言えない、町工場が集まった街だ。昔は知り合いが工場から顔を出していたものだったが、ここら一帯を鳳凰院グループが買収してしまったので、建物は小綺麗になって従業員も一掃されてしまった。そこを抜けて、住宅街に入るとすぐに俺の家が見えた。そこそこ大きな一軒家だが、壁が少しくすんでしまっているくらいには古い。

 

 軽トラックに荷物を積んでいる母親が見えた。

 どこか吹っ切れた表情をしている。


「お母さん……」

「誰……た、たすく⁉︎」


 母親は目を見開いて俺の名前を呼んだ!


「一体どこに行ってたの⁉︎」


 母親は俺ののめの前までものすごい形相で歩いてくると、俺に平手打ちをした。痛かったが、なぜか嬉しかった。


「ごめん、説明は難しいんだけど……頭冷やしてきたんだ。もう一度父さんと、工場を作り直そうと思う。それができなくてもどうにか生きていけるようにしようと思う」

「そう、詳しくは聞かないわ。それならお父さんと話をしてきなさい」


 お酒ばかり飲んでいた母親の声は少し枯れていたけど、これから良くなっていくような気がした。


「わかった。ところで母さんはなにしてたの?」

「……えっと、もうここから出ていって、心機一転やり直すつもりでいたの。でも辞めた!」


 家を出ていってしまうくらい追い詰められてたんだな。


「クリハラ、お父さんと話すんですか? それなら私のことも紹介してくださいよ」

「なんでだよ……って、ココ⁉︎」


 いつもの癖で普通に対応しようとしたが、俺に話しかけてきたのはこの世界にいないはずのココだった。

 俺が振り向くと、両手に大量のガジョの実を抱えたココが立っていた。


「どうしてここにいるんだよ?」

「素直に喜んでくれたら良いのに……私はやっぱりクリハラのことがもっと知りたいんです。異世界転移者選定試験について調べるという目的も、あるにはありますけど。神様の「守り」のおかげで四段階目のスキルがもう一度使えるようになってたので、チキュウに来れました」


 俺はココの言う通り、素直に喜ぶことにした。

 俺はココを抱きしめる。


「あら、彼女ができたのね。ついでに紹介しなさいよ」


 母親はさも当たり前かのような感想を述べた。


「そうさせてもらいます!」


 ココは図々しく俺の家の中に入っていく。


「ちょっと待てよ!」


 俺はココの背中を追いかけた。


 ココがいるなら俺はもう、俺が現実から目を逸らしてしまうことはないだろう。ちょっとズルにはなってしまうかもしれないが、ココのスキルやコルの魔法があればこの世界で工場を建て直すまで時間はかからないかもしれないな。




End.

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