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第七十話

 鳳凰院は、走ってくる騎士団の方に目をむける。




「止まれ」




 鳳凰院がそう言うと、騎士団が敬礼の姿勢で止まってしまった。


 ココも惚けたように鳳凰院を見ている。




「大丈夫か、ココ?」




 返答がない。身体を揺さぶってもびくともしない。




「よし、良い子だ。——神々よ。今からこの偉大なるこのボク、鳳凰院様が命令を下す。いまからボクのいた世界、地球とこの世界を繋いでほしい。そして、君たちの支配下にある生物すべてに、『鳳凰院グループの方針に従え』と伝えておいてくれ。神の言葉は支配力があるだろう?」




 神々がココと同じように惚けた目で鳳凰院のことを見ている。全員がこくりとちさくうなづいた。




 まずい、まずい、まずい。


 このままじゃ、この世界も地球もすべてあいつの思惑通りになってしまう。焦燥感と怒りで体が震えてくる。




 この世界の生物を奴隷にして、地球で大儲けするつもりだ。


 


(ちょっと待ってくれ、不意打ちをした方が絶対に良いはずだ)




 俺が動こうとした瞬間に、コルがしゃべりかけてきた。自分から助言してくるのは珍しい。




(だめだ、あいつは今すぐに殺さないと)


(待つんだ! あいつはお主が動けるとは思っていないはずだ。だから、スキルを発動すれば不意打ちになる。あいつに触っただろ?)




——そうか。ダメージこそ負わせれなかったが、俺は鳳凰院の後頭部に触れている。ということは三段階目のスキルを発動させることができる。




(ということは、みんなの意識を取り戻せる)


(そういうことだ。今お主が動けておるのも、そのおかげだろうな)




 よし、そういうことなら。




「——強制服従カリスマ! 全員、鳳凰院の言うことには従うな! 目を覚ませ!」




 俺は全力で叫んだ。




「はっはっは、なんでボクのスキルが効いていないのかは知らないが、僕と同じスキルが使えるわけがないだろう?」


「そんなことないよっ」




 鳳凰院の哄笑に、青色の光を纏った少女が言い返した。


 ポニーテールの快活そうな少女だ。複雑な模様が描かれた服を着ている。だが、人を畏れさせるだけの雰囲気がある。


 語尾に☆が付きそうな喋り方をしている。




——彼女は多分、タルマハジャ神、人間の神だ。




「なんだとっ! なんで自由にしゃべれるんだい?」


「クリハラちゃんがスキルを発動したからだよっ? なんでそんなことも分からないの?」




 流石に鳳凰院は目を白黒させていた。




「クリハラちゃん、君のスキルは?」




 タルマハジャ神は俺に話を促した。




「俺のスキルは「エナジーコピー」だ。俺が触れたことのある相手とレベルを同じにしたり、姿かたちを同じにしたり、同じスキルを使ったりすることができる」


「そういうことっ! 相手がどんなに強くても同じ土俵に持ち込めるスキルだよっ!   まあ、私がクリハラちゃんにあげたスキルなんだけどねっ」




 タルマハジャ神は俺を見て嬉しそうに笑っている。


 俺に備わっていたスキルじゃなくて、神が俺に与えたのか。


 しかし、なぜ。




「そうかい。君のスキルを知っておかなかったのは、君を消しておかなかったのは、ボクの失敗であり傲おごりだったよ。だが、同じ土俵に立ったところでボクには勝てないよ」


「そうかなー。こんなことが起こる予言があったから、一応、目はつけてたし、信頼してる魔石ちゃんの推薦もクリハラちゃんだったから問題ないとおもうけどっ。こんなにタフな人はいないしね~」




 そういえば、コルハジャの文様と、タルマハジャ神の服に描かれた模様が似ている。信頼してる魔石はコルハジャのことか。


 俺はそこまで神に惚れ込まれていたのか。




「スキルが無効化されたところでボクの有利は揺らがないよ。神は手出しできないはずだしね。それなら負けないさ」


「やってみると良いよっ。私たち神が直接手出しできなくても方法はあるしっ」




 神が直接戦うことはできないみたいだ。だから、鳳凰院にされるがままになっていたんだ。




「そうかい」




 鳳凰院はポケットから何かを取り出した。




「こいつとボクは今契約した」




 片手で持てるくらいの岩に魔石が埋め込まれており、そこから四つの円柱が飛び出している。


 どこかで見たことがあるな。




「ボクは強大な力を貸してもらう代わりに、この身体すべてを差し出すことにした。たまたま拾ったんだが、こいつはすごいぞ。周りの魔石吸収して自分の力にしてしまう力があるんだから」




「クリハラ、あれは主ですよ」


「まさかっ! あれにそんな力があったのか?」




 ケルシャ山で戦った主だ。戦った後に小さい姿で逃げたのを、俺は無力だからという理由で見逃した。


 どうりで見覚えがあったわけだ。


 魔石は集まることで、一つの強大な力になることがあると言われているが、主はその逆だったんだ。


 魔石を集めて自分の力に変えていたんだ。




「まあ、力を集めるのに長い年月がかかるみたいだけど、ボクの身体すべてを差し出せば今すぐに可能みたいだね。じゃあ——力を表せ」




 長い年月がかかる、だから俺たちは主の力に気が付かなかったんだ。




 俺は鳳凰院に向かって走った。魔法が発動する前に片を付ける。今の鳳凰院は無力に等しいはずだ。

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