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第六十八話

 俺は凍ったゴーレムを尻目に倒れているオーウェンさんに駆け寄った。頭から血を流しているが致命傷ではないみたいだ。腕が折れている。




「くっ……油断して一撃を食らってしまったよ。助けてくれたみたいだね、ありがとう」


「いや……俺のせいです」




 俺が怒りにかられて鳳凰院を攻撃しようとせずに、ゴーレムと戦っていたらオーウェンさんは怪我をしなかっただろう。




「君と因縁の相手みたいだからね。仕方がないよ……」




 オーウェンさんの優しさが、力ない笑顔が俺の心に刺さる。


——やっぱり、復讐は何も生まない。


 ココの言う通りだ。




「——ヒール」




 俺が唱えると、オーウェンさんの身体が緑色に包まれる。


 


「驚いた、腕が治ったみたいだ。クリハラ君、どんな代償を魔石に支払ったんだい?」




 俺も驚いた。「ヒール」にそこまでの力があるとは思わなかった。これがコルハジャの全力か。




「大丈夫です。今は無償でやってもらえるみたいなので」




 オーウェンさんは首を傾げる。一から説明する時間はないし、説明をしても信じてもらえないだろう。


 俺はオーウェンさんの手を引っ張って起き上がらせる。




「とりあえず、あいつが会議文書の試練をクリアしてしまう前に倒しましょう。意識が無くなれば、試練が止まるはずです」




 俺は淀川の時のことを思い出してそう言った。




「わかった。僕は、足手まといじゃないかい?」


「そんなことないですよ。一緒に戦いましょう」




 俺たちは再び鳳凰院に向かって走り始めた。




「二人とも立ち上がってくれたかい? うん、それは良かった。その方が幾分にも楽しい」




(コル、あのコインの壁は砕けるか?)


(我が直接は無理だ。お主の力を強化しよう。そして、これを)




 俺は走りながら自分の脚力が増しているのを自覚した。


 拳が鋼鉄でできたグローブで覆われる。


 


 全速力で鳳凰院のいる場所にまでたどり着く。俺と同じスピードでオーウェンさんはついてくる。流石だ。




 さっきまでと同じようにコインや宝石で壁が作られた。そしてそれを強化された拳で殴る。


 そうすると砕け散った。


 だが、俺は気を抜かないで身構える。




「へえ、君の強さには訳がありそうだ。じゃあこれはどうかな」




(コル、オーウェンさんと俺を守ってくれ)


(了解だ!)




 鳳凰院の周りに魔石だけが集まって、光を放ち始めた。




 俺とオーウェンさんの周りに透明のバリアが張られる。


 


「——効果を表せ」




 鳳凰院の周りに集まったすべての魔石から色とりどりのビームが放射される。


 バリアがじりじりと焼かれていく。




(なんて力だ……バリアが破られるぞ)




 俺は咄嗟の判断で、オーウェンさんの前に立つ。


 バリアが破れ、光線が俺を貫く——




「ヒール!」




 俺の身体が貫かれようとするのと同時に体を回復させることで、オーウェンさんの盾になる。


 本当に焦がされているのだろうが、焦がされるような痛みだ。




「クリハラ君、やめてくれ。僕は騎士だ。大義のために戦って死ねるなら本望だ」




(我の魔力量なら勝てると思っていたが、流石に数の暴力には勝てぬな……)


(あ、あいつとの距離を縮めてくれればスキルでどうにかできるかもしれない)




「はっはっはっはっは! 面白いな! なぜそこまでしてボクを倒そうとするんだ。ちなみに、後三十秒くらいで試練は達成される。ボクを止められるかい?」




 本当に暇を、俺たちと戦うことで潰そうとしているようにも聞こえる。だが、それなら俺たちから身を隠すことはしなかったはずだ。鳳凰院は俺たちを恐れている。




 後三十秒か。




 再び俺の前にコインと宝石の壁が現れる。これを壊して、攻撃を防いでいたら時間が足りない。




「クリハラ、私にスキルを使ってください!」




 俺が声のした方向を見ると、俺のすぐそばにココがいた。


 スキルを使ってテレポートしてきたのだろう。テレポート……? そうか!




「わかった! ありがとう、ココ!」




 俺はココに触れて三段階目のスキルを発動する。


 そして、鳳凰院の背後を意識する。




 そうすると俺の視界が一瞬で、切り替わった。


 黒髪の後頭部、その奥にはココとオーウェンさん、そしてそのさらに奥には凍り付いた巨大なゴーレムがいた。




 俺はすかさず拳を黒髪の後頭部に放った。


 当たる……だが、これで気絶してくれるかは分からない。




 拳が、後頭部に触れたが俺の手は止まった。


 


 バリバリと何かを引き裂くような音がした。




「おっと、危ないな。一応つけておいて良かった。驚いたかい? 繰原君。これは「不意打ちから必ず一度は身を守ってくれる」ペンダントだよ」




 俺は自分の頭から血の気が引くのがわかった。




 鳳凰院は俺の方を振り向いて、首にかけているヒビが入ったペンダントを見せてきた。

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