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第六十七話

 俺は迫ってくるゴーレムを無視して、鳳凰院のいる場所まで突っ走った。




「おやおや、血気盛んだね。学校では隅の方で大人しくしていたじゃないか」




 俺は二体のゴーレムの間を走り抜ける。意識を持っているだけあって、すぐさま攻撃の対象を俺に切り替えたみたいだった。


 飛んでくる岩の拳を躱す。宝物の山に突き刺さって、コインや宝石が舞う。




 一瞬の内に鳳凰院まであと数メートルの場所にまで来れた。




——殺してやる。




 世界を嘲笑っているようなその綺麗な顔をめちゃくちゃにしてやる。


 俺は剣を抜く暇さえ煩わしくなって、拳を振りかぶる。


 そして、狙いを定めて思いっきりぶつけにいった。




「強制服従カリスマ」




 手応えはあった。だが、ありすぎた。血が飛び散るのが見えたが、俺の手からの出血だ。コインや、宝石が浮かび上がって集まり、壁のようになって鳳凰院を守っていた。


 魔法か?




 俺は痺れるような拳の痛みで多少の理性を取り戻した。




 こいつのスキルは自分の魅力で相手を服従させることだ。ただの物体を空中浮遊させたりはできないはずだ。


——いや、そういうことか。




「ボクのスキルが有効なのは、意識を持っているもの全てだよ。魔石や、時間を経て意識を獲得した遺物はボクの言いなりになって動く」




 俺の予想通りだった。鳳凰院は生物でなくても、意識のあるものを操れる。つまりそれはどれだけ強力な魔石を使っても、魔法を契約なく行使できるということだ。


 


「だから、さっさと降伏して、ボクの言いなりになった方が良いよ。君のお父さんを降伏させるのは大変だったみたいだが、血筋かな?」


「人から大切なものを奪っておいて、言いなりになると思うのか? 親父の精神がお前らみたいに曲がっていなかっただけだ」




 鳳凰院は黄金の目を輝かせて、哄笑する。




「でも、結局負け犬になったんだろ?」


「うるさい! とっとと死ねよ!」




 俺は何も考えず、力任せに拳を振り回した。


 コインや魔石は的確に俺の拳を阻んでくる。




「やっぱりお前は負け犬だ! はっはっはっは!」




 突然、鳳凰院を守る壁が割れ、足が飛び出してくる。意外な攻撃を避けることができなかった。凄まじいダメージが内臓を揺らした。


 俺は吹き飛んだ。




 数々の黄金を吹き飛ばしながら転がって、ようやく俺の体は止まった。


 息ができない。激痛で意識が飛びそうだ。


 視界が白く染まっていく。


 俺は「守り」を持っている。それでも鳳凰院の方が、レベルが上だったみたいだ。不意にココの、「クリハラには復讐が似合わない気がしますよ」という言葉を思い出した。


 そんなこと言われたってしょうがないじゃないか。俺はそのためだけに生きてきたんだから。




 痛みをもう感じなくなってきた。




(おい、相棒よ。起き上がれ。これでは我のメンツが立たたない)




 コルハジャがいつになく真剣に話しかけてきた。




(俺が弱かったせいだ。コルのせいじゃない)


(いいや、そんなことはない。我はタルマハジャ神に選ばれた推薦者なんだからな)


(前から思ってたけど、何の推薦者なんだ?)




 それはただのコルハジャの妄言じゃないのか?




(ああ……強いて言うなら……我は魔王を倒すための勇者を神に推薦するための魔石なんだ! 凄かろう!)


 


 コルハジャは甲高い声で笑った。




(だから、どういうことだ?)




 まずい、頭が回らなくなってきた。コルハジャのどうでも良い自慢を聞いている場合じゃない。




(どうでも良くない! つまり、我が勇者として選んだお主が、魔王であるあいつに倒されそうになっているってことだ! さっき戦っているのを見てわかった。あいつは放っておけば神殺しを達成する。そしてモンスターたちを連れて人間を駆逐してしまう。神様が言っていた魔王はあいつのことだ)


(俺が勇者?)


(そうだ、我が選んだ。感謝するが良い。神お墨付きの我が選んだ!)




 なんだか御伽噺みたいだな。




(俺が勇者とか魔王とかはどうでも良いけど、それなら助けてくれないか?)


(あ、そうだな。ヒール!)




 体の感覚が戻ってくる。痛覚が蘇って、意識が飛びそうになるが、それも引いていった。


 視覚も戻ってくる。


 鳳凰院が腹を捩らせて笑っているのが見えた。




(今から我は、普通の魔石のふりをやめる。全力でサポートするし、使って欲しい魔法があれば契約なしに、遠慮なく言うと良いぞ!)


(わかった)




 今までほぼ契約がないようなものだったが、手間が省けるのは大きい。




 俺は立ち上がる。




「鳳凰院、なにがおかしい?」


「お、クリハラ君、起きてくれたんだ。会議文書の試練が終わるまで暇だからね。ありがたいよ……ほら見てくれ」




 鳳凰院が指をさした先を見てみると、この部屋の角に追い込まれたオーウェンさんがゴーレムに殺されそうになっていた。




(コル、あのゴーレムを止めてくれ)


(合点承知)




 次の瞬間、ゴーレムが一瞬にして凍りついて動かなくなる。




「へー。すごい魔法だ。楽しませてくれるじゃないか」




 鳳凰院の余裕の表情は崩れない。

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