第六十四話
「オーウェンさん! なんでここにいるんですか?」
オーウェンさんはモンスターを軽くあしらいながら、俺の隣まで馬で駆けてきた。
「ルーナリア王国から協力依頼があってね。ここまで来させてもらってよ。クリハラ君は戦いに行ってるだろうと思っていたよ。やっとこれで手伝える」
ルーナリア王国というのはこのエルフの国のことだろう。
「ありがとうございます」
「いやいや、騎士としての仕事だからね。恩を売る訳じゃない。教団の件では悪いことをしてしまったしね、さて、僕たちで先に進もうか。ココは騎士が絶対に守り抜くから安心してくれ」
オーウェンさんは金色の髪を風で揺らしながらそう言った。涙が出そうだ。でも、泣くのはまだだ。
「行きましょう。オーウェンさん」
「ああ。第一小隊、道を開け!」
オーウェンさんが剣を扉から迫ってくるモンスターの集団に向けた。そうすると、10人程度の騎士が雄叫びを上げながら、扉に向かっていった。
モンスターが蹴散らされ、オーウェンさんの言った通りに道が開いていく。
俺たちはその道を進んで、塔の中に入る事ができた。
塔の中は広く、大きな広間がある。レッドカーペットが敷き詰められている。ただ、ところどころにシミができている。血だ。エルフと鳳凰院が争った跡だろう。
側面にはかなりの数の扉がある。外に繋がっているものも、何かしらの部屋に繋がっているものもあるだろう。
最も目を引くのは広間の中心に、巨大な螺旋階段があることだ。
それを登れば上層階に上がれるみたいだ。
オーウェンさんと俺は広間で戦闘している騎士団を手伝う。
「オーウェンさん、どこに鳳凰院……この事件を起こした主犯格はいると思いますか?」
「そうだな……その主犯格がこの王城を全て占拠できているという前提に立てば、やっぱり王の部屋が一番安全だからね。そこにいるんじゃないかと思うよ。ただ、予想されていることを見越して別の場所にいるかもしれないけどね。僕は所用で何度か訪れた事がある。この上だよ」
オーウェンさんは螺旋階段の上を指差した。
「じゃあ、俺はそこに行ってきます」
「僕も行くよ。案内させてくれ。それに、騎士として冒険者に手柄を取られる訳にはいかない」
そう言ってオーウェンさんはウィンクをした。
オーウェンさんは馬に安全な場所で待っているように指示した。
俺たちは階段を登り始めた。
「罠がある可能性があるから気をつけるんだよ」
慌てて足元を見る。
2階にたどり着いたが、結局罠はなかった。
ただ、
「王よ……なぜここにいるのですか?」
オーウェンさんが問うた先には、二十代後半くらいに見える大人びた雰囲気を持った女性のエルフがいた。
周りに武装したエルフが何人も付き従っている。
……王、とういうことはルナーリア王国の長なのか。
一見拘束されているようには見えない。
「ようこそルーナリア王国へ、若人さん。こんな素晴らしき日にいらっしゃるなんてなんて運の良い方々でしょう。騎士オーウェン、久しぶりですね」
「素晴らしき日、だなんて……これはあなたがやったことなんですか」
「いいえ、偉大なるホウオウイン様が会議文書を発動されました」
衝撃で頭が割れそうだ。まさか、ルーナリア王国側が鳳凰院に協力しているとは……。
「我々騎士団はルナーリア王国の援助要請があったから参りました」
「それは、ルナーリア王国じゃないわ。私たちを裏切った者たちが呼んだのよ」
全く話が見えてこないな。
オーウェンさんは指を顎に当てて思案している。
「なるほど……。あなたが民を裏切ったという訳ですか。それなら騎士団としては動けない。わかりました、今からはオーウェン個人として動かせてもらう。今からあなたたちを止める!」
オーウェンさんは、騎士団の紋章を外した。
「そうですか。それは残念です。ホウオウイン様を止めたいなら、私たちを倒さないと先へは進めませんよ」
「戦いますか?」
「もちろんだ、クリハラ君。でも、王は傷つけないでくれ。あれはおそらく我が国の王が操られていたのと同様に、ルーナリアの王も操られているはずだ。本来あんなことをする方ではない」
「わかりました。突破するだけにしましょう」
「ああ」
オーウェンさんは剣を構える。
「そういえば、王から授かった剣はどうしたんだい?」
俺の蟹の鋏になった腕を見ている。
「持ってくる暇がなかったんですよ」
「そうかい。なら、これを貸すよ」
オーウェンさんが腰から二本目の剣を抜いて俺に渡してくれた。
俺はスキルを解除して剣を受け取った。
「ありがとうございます」
俺たちが剣を構えると、王の後ろに控えていたエルフたちも剣を抜いた。
「エルフたちの剣技は美しく、強い。気をつけてくれ」




