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第六十三話

 とりあえず、このまま何もしないわけにもいかない。


 まずあの門を突破しなければ。とは言っても防具を着ているだけで、ゴリクラブ自体は何度も倒した事があるから問題はないはずだ。




「行こう」


「私たちだけで大丈夫でしょうか……」




 確かにサシャと父親がいなければ俺たちはとっくに死んでしまっていただろう。ただ、やるしかない。


 エルフ達は不安そうに王城を見上げている。こんな横暴を許しておくわけにはいかない。異世界の住人まで俺と同じ思いはして欲しくない。




「大丈夫じゃなくても俺は行くよ」


「私も行きますよ。クリハラにだけやらしていては、私の家族と変わらないので」




 ココがいなかったら、俺が試験に落ちたあの瞬間から何もできていなかったはずだ。




「そんな事ない。もっと自分の力を信じて良いと思うよ」




 ココは俯いて、門の方に向かっていった。慌てて俺も追いつく。


 俺たちがゴリクラブの前に立つと。




「入れてくれないか?」


「ウホホッ」




 人間らしい振る舞いをしているみたいだが、言葉が話せるわけではないみたいだった。前触れもなく、鋏を突き出して、俺の胸を貫こうとしてきた。


 俺はそれを避けて、鋏に手を触れる。二段階目のスキルを発動して自分の腕を鋏に変えた。日本刀はもうボロボロで使えない。




 俺はゴリクラブの鋏に自分の鋏を叩きつけた。


 ゴリクラブの鋏から不穏な音が鳴った。どうやら割れたらしく、絶叫しながらゴリクラブが後ずさった。俺はその隙を見逃さずにゴリクラブの頭を鋏で挟んだ。力を込めるとゴリクラブは失神した。


 


「おい、あの人間、モンスターを捻り潰したぞ。軍も勝てなかったのに!」


「すごい!」




 エルフ達が集まって俺に歓声を浴びせ始めた。


 振り向くと、エルフのお姉さんが手を振ってくれた。俄然やる気が出てくる。


 そのままの勢いで門の前にいるゴリクラブを全て倒し切ってしまう。




「急に強くなりましたね」


「成長したんだよ」


「本当ですか?」




 ココの声は何処か冷たい。


 門は普通に空いたのでそのまま侵入する。




 後ろからはエルフ達の俺を応援する声が聞こえてきた。人間だからといって敵視するエルフは少ないみたいだ。




 中には巨大な庭園があり、その先に三つの巨大な石でできた塔がある。


 外からは見えていなかったが、相当な数のモンスターが整然と並んでいる。




「繰原君、君が教会から逃げられたのは意外だったよ。運が良いんだね。さて、向かってきてくれるならありがたいね。逃げるウサギを追うのは大変だから。流石にここで消えてくれよ、繰原君。よし、お前達。こいつら、食っていいぞ」




 塔の上の方からかなりの声量で鳳凰院の声が聞こえてきた。




「望むところだ」




 俺たちは走って、モンスターたちの群れに向かって走る。




「クリハラ、私がスキルで敵を引き寄せるのでその内に侵入してください!」


「了解!」




 了解とは言ったものの、あの数を俺は走り抜けられるのか?


 俺たちも走っているがモンスターたちもこっちに走ってきている。砂埃が立ち上り、視界が若干見えにくくなった。


 数百匹はいそうだ。


 俺の知っているシープローチのようなモンスターもいたがほとんどが見たことが無い。象よりも大きいモンスターもいる。


 俺は攻撃を躱して、進んで行くが、完全に囲まれた。腕の鋏で攻撃するが、それでは対処できない。




「——瞬間移動テレポート」




 ココが一瞬で消えた。




「お前たちの敵はこっちですよ!」




 遠くからココの声が聞こえた。


 俺を囲んでいたモンスターたちが減っていくのが分かった。ココに何匹かがつられたのだ。その隙に俺は目の前にいるモンスターを纏めて吹き飛ばした。その隙間に飛び込んで王城を目指す。




 三つ塔があるが、真ん中の塔が一番近い。まずはあそこに入ろう。


 あと数十メートルだ。


 このまま全力で走れば、たどり着ける。




 ココに気を取られているモンスターは多いみたいだ。このままなら行ける。




「ココ! 絶対に死ぬなよ!」


「クリハラこそ! また後で会いましょう」




 俺が叫ぶとココが応えた。




 あと数メートル。




――突然、塔の扉が勢いよく開いた。




 わざわざ歓迎してくれたのかと思ったが、大量のモンスターが、あふれ出してきた。


 この感情は絶望だ。頭から血の気が引いていくのが分かる。




「クリハラ君、遅くなった! あきらめないでくれ! 俺たちがいる」




 俺が後ろを振り向くと、オーウェンさんが白馬に乗って、剣をモンスターに突き刺していた。


 オーウェンさんだけじゃない。馬に乗った何人もの騎士団がモンスターを駆逐している。

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