第六十一話
俺たちは一際大きい岩の住居に向かって歩き始めた。東京タワーを彷彿とさせる高さのある岩が三本聳え立っている。
知識豊富なサシャの父親によると、あそこが王城の代わりになっているらしい。その周辺にある教会に会議文書があるはずだ。
王城に近づくにつれて、炎は無くなっていった。エルフの姿もちらほら見える。全員がハッとするくらい美形だ。
武士たちに美麗な剣技で応戦している。
「あの、教会は何処にありますか?」
俺は、近くにいるエルフの青年に話しかけた。
「お前たち……人間か。よくもやってくれたな!」
青年に胸ぐらを掴まれた。怒り心頭みたいだ……理由はわかる。
「いや、俺たちはこの騒動を起こした人間をとめにきたんだ」
青年は虚をつかれたように目を見開いた。
「そ、そうか……放っておいてくれと言いたいとこだが、我々の力だけではもうどうにもできないのも確かだ。国が全て焼けてしまう。何をするのか知らないが、教会はあっちだ」
青年の指差した方向には彫刻が施された巨大な岩があり、両開きの扉がついていた。あれが教会らしい。扉は開け放たれ、そこから武士が続々と出てきている。街全体に武士が溢れかえっているので、わかりにくいがそこが教会であるのは確かみたいだ。
青年はまた戦闘に戻った。
早く鳳凰院を止めなければこの国が持たない。この国のエルフたちを俺の二の舞にはさせたくない。
「よし、クリハラ。あそこにいるブシたちは焼き払っちゃうよ?」
「頼んだ」
「効果を表せ」
サシャがそう言うと、教会の入り口付近にいたゾンビたちが炎に焼かれて消し炭になった。炎も消え、最初から何もなかったみたいだ。とんでもない火力と制御だ。天才と言われる所以もわかる。
俺たちは教会の中に入った。灯りは全くなく、暗くて何も見えない。サシャが空中に火を灯して灯りをつけた。
教会は武士で一杯になっているが、動き出す様子はない。
「妙ですね」
「ああ」
俺が頷いた途端に、扉が勝手に閉まった。
俺はすぐに開けようとするが、びくともしなかった。
「しまった! 魔法で閉じられているから開けられませんよ」
ここの父親がそう言うなら、そうなんだろう。俺たちは敵地に閉じ込められたみたいだった。
「やあ、聞こえてるかな? こちらからは見えないけど、繰原君と巫女、それに雑魚が数人いるのはわかってる。ここにいると言うことはエルフちゃんたちの誘いは断ったってことなのかな? なら、ボクの邪魔になるだけだから消えてもらうよ」
スピーカーがあるわけではないが、空中から鳳凰院の声が聞こえてきた。協力する気のない俺たちを消すつもりらしい。他の転移者も同様に消されたのだろう。
「おい、鳳凰院、聞こえてるか? おい!」
返答はない。聞こえているのかどうかはわからないが応えるつもりはないらしい。
教会内に光が差したような気がした。
違う、武士達の目が光ったんだ。音もなく、俺たちの方へ向かってくる。
「まずいですよ。このままじゃ一網打尽にされます!」
「私たちが、この扉をどうにかしてあけてみるから、ブシ達を抑えておけますかい? ココさんのスキルも封じられてるでしょう?」
ココは首肯した。テレポートで外に逃げるわけにはいかないみたいだ。隙のないやつだ。じゃないと人を何人も消したりできないか。
無茶な話だと思ったが、俺やココに魔法で閉じられた扉をどうにかできるわけでもないのは確かだ。
「わかりました。やろう、ココ」
「やりましょう……でも、どうします?」
「そうだな……火が有効なのはわかってるけど……」
この密閉された空間で火を放ってしまえば俺たちまで焼かれる。そうはならなくても、酸欠になってしまうだろう。
「この教会の中ならスキルが使えるみたいです。ブシをテレポートさせれば時間は稼げると思います」
「お願いできるか?」
「わかりました。瞬間移動テレポート」
ココが指で空中を大きくなぞると、空間に巨大な穴が空いた。そこを通ろうとした武士たちが消えていく。教会内の何処かにテレポートさせられたのだろう。
「あとどれくらい時間がかかりそう?」
「5分はかかると思う! これでも早い方なんだよ」
「ありがとうサシャ」
ココの額にはすでに汗が浮いている。5分は持たないだろう。
そうだ、サシャは空中に炎を浮かせている。それを魔法で動かすのは難しくても、これなら……!
(コル、俺の日本刀を燃やせるか?)
(ああ、可能であるぞ! 今回のことは我も不服ゆえな、無償でやってやろう)
俺は腰に刺していた日本刀を引き抜く。
最近、よくコルハジャはサービスしてくれるな。
「効果を表せ」
刀身に炎がまとわりつき、熱によって赤くなる。この刀を振り回し続けることはできないだろう。だが、あと数分持ち堪えれば良い。




