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第六十話

 目を瞑る。今からコルハジャに防御してもらおうにも時間が無い。


……。


 いくら時間が経っても、俺の首が飛んでいくことはなかった。恐る恐る目を開くと、ルルが口と目を開いて、固まっていた。


「クリハラ、お姉ちゃん。大丈夫?」


 聞き覚えのある声だな。俺の背後から幼い声が聞こえてきた。


「サシャ、ほどいてあげなさい」


——サシャ⁉


「そうだね。——効果を表せ」


 俺に巻き付いたツタが灰になって崩れ落ちた。

 俺は立ち上がって、同じくツタから解放されたココを立たせた。


 やっぱりサシャと父親がいた。あのやつれた姿からは想像もできないほど顔にハリが戻っており、精悍な男といった感じになっていた。


「助けてくれてありがとう、ところで何でここにいるんだ?」

「あのね、謎の生物が大量発生してたから、お父さんと調べてたの。そしたらね、クリハラ達が見えたから後ろをつけてたんだ」

「話しかけてくれればよかったのに」

「いや、ダークエルフが一緒だったからね。それもかなり強い妖力を持ってる」


 サシャがルルを指さした。

 ルルはわなわなと唇を震わせている。


「あんた達何者よ。なんで妖術がつかえるの?」


 俺たちを刀で斬ろうとしていた男たちは植物のツルでぐるぐる巻きになっている。

 サシャ達がやったのだろう。


「妖術を魔法で再現できないか、試して遊んでたの」


 俺の命は遊びで救われたのか。


「さすが私の娘だ! 完璧な再現だ!」


 サシャの父親はそう言って大笑した。キャラが変わりすぎだろ。よっぽど朝比奈にこき使われたのが苦痛だったんだな。娘が人質に取られてたし。


「そんな、人間ごときが再現できるはずがないわ。どういう絡繰りかは知らないけど、もう二度と魔法が使えない体にしてあげる。お前たちやっちゃって! ……あれ?」

「残念だけど、もう全員動けなくなってるよ」

「なん……ですって」


 俺たちがここで鳳凰院の映像を見せられている間にダークエルフを完全に制圧してしまったらしい。

 魔法の天才とはいえ、ここまで強かったとは。


「クリハラ達、外のダークエルフたちは動けなくなってるけど、動き出すのは時間の問題なの。だから今のうちに逃げよ?」


 サシャがココに液体の入った瓶を手渡した。


「これってポーションですか?」

「そう、飲めばまたスキルが使えるようになるはずだよ」

「ありがとう、ございます。こんな高価なものを貰っても良いのですか?」

「良いんですよ。私達からのお礼だと思ってください。こんなもので返せるとは思ってもいませんが」


 ココはポーションを飲み干した。


「酸っぱい……、力が湧いてきますね。長距離移動、できそうです」

「よし、じゃあ、エルフの国まで移動しよう」

「分かりました——瞬間移動テレポート」


 空間に穴が開いた。

 俺たちはその穴に飛び込む。


「待ちなさい! そんなことさせな、」


 ルルの声が聞こえてきたが途絶えた。


 景色が切り替わった。

 まず感じたのは熱さだった。

 炎がそこかしこに見える。

 巨大なねじれた建物がたくさんある。ここはエルフの国みたいだ。

 

 炎を免れた武士たちがちらほら見える。すでにここに住んでいたエルフたちは避難したのか、姿が見えなかった。


 ねじれた建物だと思っていたが、巨大な縦長の岩をくりぬいて家にしているみたいだった。


「これは、ひどいですね。でも、わざと燃やしているみたいです。岩は燃えにくいですから」

「そうだね、これはわざと燃やしてるね」


 サシャが悲しそうに同意した。


「俺たちはこの騒動を止めに行こうと思ってるんだけど、サシャ達はどうする?」

「もちろん、わたし達もついていくよ。役に立てると思うし。あれから強くなったんだよ!」


 ダークエルフを一網打尽にしてしまえるのだから、かなり強くなったのだろう。朝比奈なんて一瞬で倒せてしまえそうだ。


「私とサシャは、貴方達の役に立つなら何でもやりますよ」

「そこまでしてもらわなくても、感謝は伝わってますよ」

「いいえ、やりたいんです」


 そこまで言われてしまえば手伝ってもらうしかない。

 俺は鳳凰院について簡単に説明した。

 俺と同郷であること、神を呼び出して自分の言いなりにしようとしていること。


「——クリハラって別の世界から来てたの⁉」

「そうなんだ。いままで黙っててごめんね」


 二人は鳳凰院のことよりも、俺の出自に驚いているみたいだった。


「まあ、それは置いておいて、ブシ? の発生源にホウオウインはいるんですね?」

「おそらくそうです。多分、教会にいるんじゃないかと」


 サシャの父親は大きくうなずいた。


「会議文書を保管している教会ともなると、やはりこの国の中心部にあるのではないかと思う」


 メトカーフ王国ではそうだった。一理あるな。

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