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第五十八話

 攻撃を受けた部分を見てみる。血は出ていないし、骨が折れたわけでもなさそうだった。スキルのお陰でそこまでダメージを受けなかったみたいだ。だが、何度も食らうとまずい。


 暗い水中ではよく目が見えない。


 やっぱり空中で戦うしかないな。


 俺は口に水をできる限り含んで、湖面から飛び出した。


 俺を追いかけて、飛び出してきた二つの頭に向かって俺は口に含んだ水をすべて放った。三段階目のスキルだ。


 強力な弾丸となって、水の塊は一匹の頭をぶち抜いた。タツノオトシオヤの、水を飛ばして攻撃するスキルをコピーした。半ば賭けだったが、やっぱりあの技はスキルだったか。


 そして狼狽しているもう一匹の頭の上に着地する。


 本当にアニメや小説で見たドラゴンとそっくりだ。


 刀を腰から抜いて、脳天に突き刺した。大きなうろこが飛び散って、剣は深々と突き刺さった。


 咆哮と共にタツノオトシオヤは一匹目と同様に湖に沈んだ。




「うおあああああああああああ」




 俺も空中に放りだされ落下する。


 


「ルル、あそこまで動かしてください!」




 背中に強い衝撃を感じた。


 水面に……叩きつけられたわけではなさそうだった。


 目を開くと、ココとルルの顔が見えた。




「えっと、船は壊れたんじゃ?」


「ルルがもう一度妖術で船を作ってくれました」


「あ、ありがとう」




 便利な力だな。




「う、ううん。こんなこと、大したことじゃないよ」




 ルルは顔を赤くしてうつむいた。




「いいえ。すごいと思いますよ。妖術でも高度な方だと思います」




 高度かどうかは俺にはわからないけど、もしそうなら意外だった。ルルはいかにも冴えない感じだ。




「そんなに褒めないで……慣れてないから。クリハラ、ココ、助けてくれてありがとう。何でもするから食べないで……」


「別にルルを食べるために助けたんじゃないぞ」




 本気で食べられると思っていそうだった。


 


 船で進む。


 タツノオトシオヤ以降、襲われることもなく順調に進めた。


 岸が見えてきた。


 森が生い茂っている。メトカーフ王国側とたいして変わらない光景だ。ただ、木の上に奇妙にねじれ曲がった建物が見えるのが特徴的だ。この森を抜けると、隣国があるらしい。そこそこ広い森だ。それでもなお見えるということは思っていたよりも建物はかなり大きいのかもしれない。


 焦げ臭い。火で武士を撃退しているせいだろう。


 森が燃えていないのは奇跡だ。


 俺たちは船を降りた。




(コル、この服、乾かせるか? この世界のモンスターは、俺の世界の動物を組み合わせたようなものが多い。この知識でどうだ?)


(そうなのか、お主の世界の動物を見てみたいものだな……良いだろう! 乾かしてやる!)




 服が一瞬あったかくなったかと思えば、乾いた。




(ありがとう、なんというか、魔法の加減が上手くなったな)


(当たり前であろう。我を誰だと思ってるんだ)




 ポンコツ魔石だと思ってる、とは言わなかった。




「ルル、ここからなら自分の家がどこかわかるか?」


「うん。分かるよ。もう家の近くだよ」


「家の近くって、ここは森だぞ」


「ダークエルフは森に住んでいると聞いたことがあります」




 そういうもんか。


 俺たちは森の中に進んで行く。ルルはこの辺りの地理が頭に入っているらしく、先頭を歩いてくれた。妖術で作った松明で周りを照らしてくれている。


 森の中ではあるが、傾斜がある場所は整備されていたりと、誰かの手が加えられていることはわかった。




 岸に到着した瞬間に、武士に襲われる覚悟をしていたから、森の静けさは意外だった。


 しばらく、道なりに進んでいくと光が見えた。


 ダークエルフの男が松明を持って、木製の門の前に立っているみたいだ。




「なあ、ルルは襲われて逃げてきたんじゃないのか?」


「もう、あの怖い人たちはいなくなってるみたい。よかったぁ」




 もうメトカーフ王国側にすべての武士が移動してしまったということなのだろうか。いや、会議文書が生み出したものなのだとしたら、湧き続けるはずだ。


 


「クリハラ、様子が変です。警戒してください」


「俺もそう思っていたところだ」




「ふふ、遅いわよ。意外と鈍感なのね」


「誰だ⁉」




 急に近くで声がした。




「やっぱり戦闘ができるだけの馬鹿なのかしら? 私はルルよ。まあ、偽名だけど」




 俺たちの方に振り返ったルルの目は、鋭く、何もかもを見透かしていそうだった。


 雰囲気が幼いものから一気に酸いも甘いも知った大人のものに変わっていた。




「ど、どういうことだ⁉」


「あんたたち、捕らえなさい」




 松明を持っていたダークエルフの男達がぶつぶつと何かを唱える。




「ココ、とりあえず逃げよう!」


「そうですね、逃げましょう!」




 走りだそうとしたが、足に何かが絡まってこけてしまった。


 地面に手を付く。


 クソ、このタイミングでつまずくなんて……。




 立ち上がろうと思ったが、それはできなかった。


 俺の下半身は植物のツタに巻き付かれて動かなくなっていた。


 ココも同様に、ツタで拘束されたみたいだった。




——俺たちはルルに騙されたのか⁉




 でもなぜだ?


 武士がいないのも謎だ。

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