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第五十三話

 姉の言動からなんとなく察してはいたが、ココは元貴族の出身らしい。幼い頃は姉と同様に育てられてきたが、スキルが使えるようになってからは周りの対応が大きく変わったそうだ。




 この国では遺伝でスキルが決まることが多いので、家業を継ぐことが多い。例えば、水を操れるスキルを持つ家系なら洗濯屋になったりする。


 貴族は人を治めるのが仕事であったため、人を統率するためのスキルが遺伝する事が多く、それを前提に教育もされている。




 だから瞬間移動テレポートのスキルを持つココは、出来損ないとして扱われたそうだ。一人だけスキルが違ったことから「巫女」だと見做され、冷徹に扱われたらしい。




「それで私、ここまで逃げてきたんですよ。10歳の頃です。探されもしなかったみたいです」




 さも面白い冗談を言ったかのようにココは笑った。俺は笑えなかった。


 少なくとも、幼少期は親に愛されていた俺はまだ幸せなのかもしれない。




「三段階目のスキルが、発現したことが決定的でした。別世界とを行き来できることはすごかったのですが、一度しか使えなかったので」




 そこで完全に見放されたのか。


 俺からすれば、ココのスキルは役に立つ。俺の力は人を痛めつけることぐらいしかできない。


 まあ、貴族の考えていることなんてよくわからない。




「でも、ある時思いついたんですよ。異世界からすごい人を連れてこれれば、私の力でも役に立ったことの証明になるんじゃないかって。あの世界に行ってからしばらくウロウロしたら、私の世界に行ける人を選ぶ、世界一難しい試験があると知ったので、それで一位になった人を連れて行こうと思ったんです」




 まあ、私以外にも同じ事ができる人たちがいると知ってショックでしたけれど。と、ココは続けた。この世界で試験のことを知ったわけではないのか。




「俺で良かったのかよ?」


「大っ正解でした。能力が優れているのはもちろんですけど、優しかったので……最初は怖い人だと思って、あんな格好もしましたし、仕事の関係ということにもしましたが」




 地球に来て、スーツ姿でいる人がしっかりしている人だと見做されていたので、あんな妙ちくりんな格好をしていたらしい。


 怖い人だと思われていたのか……心当たりはなくはないが、あのときは気が立っていたので仕方なかったんだ。人生を賭けたテストに落第した直後だったからな。




 ココは恍惚とした表情で俺のことを見ている。




「自分が正しいと思ったことをやってただけだ」


「それをやり通せる所が優しいんですよ」


「力が無いと出来ないよ」


「それは、そうかもしれませんね」




 ココは眉を、ハの字にする。


 力がなかった俺は何も出来ずに燻っているだけだった。結局試験も俺が努力したところでどうにかなるようなものではなかった。




「今度は、クリハラの番ですよ」


「俺の番……」


「私だけ喋るのはアンフェアですよ」


「そうだな……」




 俺は自分の幼少期について話した。




「良いですね、幸せそうです」


「ここまではね」


「含みのある言い方ですね」




 俺は鳳凰院グループに親が働く工場が買収された時の話をした。生き甲斐が無くなり収入源もなくなり、父親は酒ばかり飲むようになった。母親は部屋に引きこもって出てこなくなった。


 ココは涙を流して俺に同情してくれた。なんの苦労もなく生きている奴に同情されれば良い気分にはならないが、ココは本心から共感してくれているような気がした。




「……私なんてまだましですね。やっぱり、自分の大切な人が傷つくのが一番、苦しいですから」




 俺はそんなことない、と言って、それから試験を受けるまでの日々を語った。まあ、ひたすらIQテストを解いたり、走り込んだり、筋トレをしていただけなのだから。




「なるほど、クリハラはやっぱり異常にタフなんですよ。当たり前みたいに言ってますが、誰もそんなことはできませんよ……」




 ココは俺のことを大袈裟に褒めてくれるな。単純な作業なんてやろうと思えば誰でも出来るのに。


 高校に入学してからの生活も話した。皆、転移者選定試験のために入学していたから、少しでも教師からの評価を良くしようと、足の引っ張り合いがおこっていた。それに伴って、強烈なスクールカーストが形成され、愉快な思いはしなかった。教師に気に入られてなんの意味があるのかと思っていたが、結局意味はあったみたいだ。どれだけ金を積むか、どれだけ気に入られるかが重要だった。




 貴族の子供たちに囲まれて生きてきたココも、スクールカーストに似たものが形成された環境で育ったらしく、どこでもそんなものなんですね、と共感していた。




 高校で因縁の相手、鳳凰院に再会したことも話した。




「確かヨドガワに、ホウオウインが何処にいるか聞いていましたね。私も合格者リストで名前を見たような気がします。まさか、この世界に来ているのですか?」


「どうやらそうみたいだな」


「まさか、復讐しようとしてるんですか? 今まで倒してきた転移者たちにも復讐目的で……」




 朝比奈と淀川は、必要に迫られたから倒した側面が大きい。


 鳳凰院に関しては……復讐したい気持ちがあるのは確かだ。あいつをこの世界で目の前にしたら、冷静ではいられないだろう。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 一番最後の「 朝比奈と鳳凰院は、必要に迫られたから倒した側面が大きい。」は鳳凰院ではなく淀川なのではないですか?
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