第五十一話
俺たちはギルドにに戻って、アルルさんに挨拶をした。
ギルドのメンバーは相変わらずで、俺たちを見るやぼそぼそとなにかをささやいていた。俺が目を合わせると、悲鳴を上げて陰に隠れてしまう。
「あはは……レベルが100以上で王様に呼び出されたともなれば、怖がられてしまうのはしょうがないかもしれませんねー、最近は隣国で戦争もあったらしいですし、気が立ってるのかもー?」
確かに王城でその話題はよく聞いたな。隣国の戦争で気が立つのか……。平和な日本生まれとしては実感は湧かない。
屈強な戦士たちに化け物扱いされると、なんというか……心に来るものがあるな。
「それで、王様となにをしてきたんですかー」
俺はココと顔を見合わせる。
「本当に申し訳ないんですけど、言えないんです」
「やっぱりそうなっちゃいますかー、王様が冒険者に依頼するなんてよっぽどのことですからねー。しょうがないです。また戦ってきたんでしょうしー、レベル、測っていきます?」
「話したいんですけどねー。測って欲しいです」
「部屋で二人きりなら話してくれません?」
「それはダメです」
アルルさんが妖艶な笑みで俺を誘惑するが、ココが即座に否定した。
また何か物を売りつけられる可能性もあるからその対応で正解だ。
アルルさんは仕事人なだけあって、理解があって助かる。
アルルさんは俺たちの身体にいつも通り、レベルを測る機械をかざした。
「もう驚きませんよ。クリハラさんのレベルは152ですー。え……ココさんは132、ですねー……」
俺たちを陰から見ていた人たちが一斉に音もなく逃げだし始めた。真っ黒●すけかよ。
俺はオーウェンさんと訓練をしたし、淀川と戦ったから、妥当だ。守りを持たないココがなぜ……。巫女として、生贄になりかけたのが関係しているのだろうか?
それは分からない。本人も驚いているみたいだ。
「そろそろー、私も貴方達二人が怖くなってきましたよー」
俺はライセンスカードに書かれた自分のレベルを修正してもらった。
「どうされますー? 今日は宿に泊まっていきますかー?」
「そうします」
俺たちは二つ部屋をとってもらった。
王からもらった報酬をアルルさんに預ける。
よっぽどの大金らしく、アルルさんは目を白黒させていた。
宿はギルドの二階にある。二人で階段を上がっている最中。
「あの、クリハラ、明日は休日にしませんか?」
「依頼を受けれなくなるけど良いのか……。報酬は欲しいですけど、私達は仕事上の関係じゃないんですよ」
そうだったな。それなら俺も冒険者をやる意味はなくなるな。まあ、西大付属の生徒と遭遇できたのは冒険者の仕事のお陰だし、続けるか。
「わかった。各自、休むか?」
「いいえ、二人で……その」
「二人で?」
ココはうつむいて何も言わなくなってしまう。
「ココ……? 二人で何だ?」
「急かさないでくださいよ! その、デート、しませんか?」
ココはトマトになってしまったかのように顔を赤らめている。今まで感情の読めなかったココにしてはわかりやすい「羞恥」の感情。
でーと? なんだそれ、美味しいのか?
「でーとってなんだ?」
「あ、あれ? もしかして向こうの世界ではそういう文化はないんですか? なら、忘れて下さい!」
デートか! 今までそんな文化とは無縁すぎて、言葉が理解できなかった。
走って階段を駆け上がり始めたココの肩を、俺は追いついて掴む。
「デート! 分かった。やろう。やろう」
「本当ですか……嬉しいです。じゃあ、また、明日」
ココはとぼとぼと自分の部屋に入って行った。俺も、頭が真っ白になったのでとりあえず、自分の部屋に入って、ベッドにダイブした。
柔らかい感触が俺を包んで、清潔な匂いが香った。
「デートって、俺たちは友達じゃなかったのか? 恋人に対して使う言葉だよな。いや、でも女の子同士なら二人で遊ぶことをデートって表現したりするよな」
俺はぶつぶつと呟いて思考を巡らせるが、ただグルグル回るだけで明確な答えは出なかった。
恋人のように俺の手を掴んで、嬉しそうに笑うココを想像してみる。可愛かったが、全く別人のようだ。
(コル、どう思う?)
(魔石に相談されても困る内容だな。我のことを何でもありの便利屋だと思っていないか?)
(違うのか?)
(違うわい! まあ、しょうがないから答えてやるが、あの女は十中八九、相棒に好意を抱いていると思うぞ)
(いや、信じられないなー。もう良いよ。ありがとう)
(聞いた割にてきとうだなー)
好意、か。ココが俺に好意を寄せていたとして、俺はどうだろうか? よくわからないな。
俺は今まで恋愛を意識したことすらなかったからな。
時間は過ぎていくが、全く寝れる気がしない。




