第五十話
「そうですね。私はそれを使って、クリハラをこの世界に連れてきました」
周りが一斉にどよめいた。
スキルの三段階目が、何度も使える人と、強力だが一度しか使えない人がいるらしい。
一度しか使えない人は珍しく、使用によって世界を変えてしまうほどの影響を及ぼすことがあるらしい。だからこそ、そのタイプのスキルを使える人は価値があると思われ、使用を国に管理されることもあるらしい。
そんなスキルを、俺を地球から連れてくるために使ったのか。
「国に、申請はしていたのか……」
家臣の一人がココに問い詰めようとする。
「そんな、固い事を言うでない。彼女がクリハラ君を連れてきてくれたから、今回の事件が大事に至らなかったのも確かじゃ」
王が家臣をなだめた。
「私たちはこれからどうなるのでしょうか?」
ココが心配そうに王に問う。
「今回はわしが気を抜いておったせいもあるし、どうもせんわい」
「なにか悪事を働くようなら、僕たち騎士団がすぐに駆け付けるよ。まあ、君たちはそうなるようなことはしないだろうけどね。ただ、教団に狙われる危険性はあるから気を付けてくれ。会議文書は王城で預かっているから大丈夫だとは思うけれど」
オーウェンさんがウィンクをする。格好いいなあ。
俺たちはこのまま自由の身になるようだった。王に、俺たちを捕らえておくことを進言する家臣たちもいたが、それは突っぱねられていた。
教団は再び会議文書を発動させるために、俺たちを捕らえようとする可能性があるのだ。もう淀川に操られることはないから問題はないはずだ。
俺たちは数日療養をした後、囚われている淀川に話を聞きに行った。
もちろん、鳳凰院のことだ。
地下牢で、ベッドに両腕と両足を縛りつけられ、何人にも監視されている。スキルを発動されると、対処できないからだ。
「おい、淀川」
淀川は血走った眼を俺に向けた。
「何か用? 私を憐みにきたの?」
「いや、鳳凰院について聞きに来た。あいつが教団を組織したのか?」
「答えない」
恨みを持っていながら、かつて好きになった人を裏切れないという葛藤があるように思えた。
「この世界に来てから、鳳凰院に協力させられてたんだろ? あいつはお前を道具としか思ってないぞ」
「違っ……いや、そうね。やっぱりおしえてあげる」
淀川はため息をつく。自分でもわかっていたのだろう。
「私は光也に会議文書の研究を任されてた。『お前が必要だから』って言われて断れなかった」
もし俺が同じ立場だったら、同じことをしていただろう。それくらいは想像できる。
「他の奴らも鳳凰院に協力しているのか?」
「……最初は合流してたんだけど、光也に協力的じゃなかったメンバーは消えた」
「消えたって……」
「どうなったか分からないけど、本当に突然姿を消したの」
鳳凰院が殺したのか? あの男ならやりかねない。
「朝比奈は元気にしてたけどな」
「朝比奈君に会ったんだ……光也は『あいつは、どこかでしょうもない事でもしてるだろ』ってあんまり興味ないみたいだったよ」
おそらく、自分の脅威になりそうな転移者は力が強くなる前に消したんだ。朝比奈の能力は強力だったが、淀川のものに比べたら弱いし、なにより頭が悪い。スキルを上手く生かせないだろう。
鳳凰院からすれば淀川は絶対に言うことを聞いてくれる良い駒だったのだ。だから消されなかった。
「お前ら、学校では仲良さそうだったのにな」
「仲良さそうに《《見えてた》》だけだよ」
そうだったのか。仲良く、弱者をいじめてるんだと思っていた。
「そうなのか。鳳凰院の場所は知ってるのか?」
「研究を任されてからは一回も会ってない」
やっぱりか。鳳凰院から淀川への好意は全くないと思ってよさそうだな。
俺はそれから何か情報を引き出せないかと質問を重ねたが、骨折り損だった。
「じゃあ、俺たちは行くよ」
「そう。光也によろしく」
「ああ、伝えておくよ」
俺たちはその場を後にした。
淀川は捕まったまま、特に脱出しようという気もないようだった。というか、もう何の気力も残っていなさそうだった。
「ココ、これからどうする?」
「とりあえず、ギルドに戻りましょう。アルルさんも心配しているでしょうし」
「そうだな」
俺たちは王やアルルさんに挨拶をして、王城を出た。王はお詫びを込めて、報酬で渡すと言っていた額を俺たちに渡してくれた。俺たちはそれを山分けにした。
ココは報酬をもらってから上機嫌だ。
いつもと変りないように思える。
「ココ、俺たちってビジネスパートナーだよな」
「いいえ、私たちは友達ですよ……それ以上になれるかもしれませんけどね」
それ以上って、親友とかか?
ココは上機嫌に、スッキプしながら街を進んで行く。




