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第四十九話

 俺はココをおぶって、王城まで戻った。道中はひどいもので、家が崩れていたり、火事が起こったりしていた。負傷者は、騎士団や、何かしらの集団に治療されていた。街にいたゾンビは消失したみたいだった。


 衛兵に、オーウェンさんに戻るようにいわれたことを告げるとすぐに入れてくれた。事情聴取をされそうになったが、満身創痍な俺たちの状態を見たせいか、医務室に連れて行かれた。医者による魔法の治療が施されるとだいぶ楽になった。 


「あの、噛まれた人たちは元に戻りましたか?」

「ああ。全員が人間に戻ったよ。怪我も大方治したよ。不思議なことに、首をはねられた者も首がくっついて生き返ったよ」


 医者は首を振りながらそう言った。

 よかった。ゾンビに噛まれた人間が元に戻らないというのは、淀川の俺を怖がらせるための嘘だったのだ。


 急に眠くなって視界が暗転した。

 流石に血を流しすぎたか。


 目を覚ますと、俺は重い空気を纏った大人たちに囲まれていた。王を中心として豪奢な身なりをした男女が並んでいる。家臣たちなのだろうか?

 

「申し訳なかった」


 意外にも王が俺たちに頭を下げた。

 右隣のベッドでココも驚いている。


「わしが気を抜いておったせいで、洗脳されてしまったんじゃ」

「僕たちも王を守る立場にありながら……不甲斐ない」


 オーウェンさんを始めとして家臣たちも頭を下げた。


「いやいや、俺達が原因になったのは間違いないですから」

「君たちは巻き込まれた被害者でもあるよ。どうか気に病まないでほしい。それと、不躾は承知だが、何が起こったのかを詳しく聞かせてほしい」


 教団の試験を受けてから幻覚のせいで会議文書を発動してしまったことまでを話した。王は俺たちに教団の調査を依頼した記憶がないらしい。しかし、不思議なことに、王は淀川に幻術をかけられた記憶もないらしかった。それについては調査がされるらしい。


「君たちは巫女だったり、会議文書のトリガーになれたり、何者なんじゃ?」


 ココはそういう家系だからということで説明できるが、俺に関しては本当にわからない。ただ、自分の出自を明かしてしまっても良いような気がした。


「私は、代々巫女が生まれる家系なんです」

「俺は、こことは別の世界から来たんです」

「クリハラ⁉︎」


 ココは俺が暴露したことに驚いたみたいだった。


「まさか、そんなわけはなかろう。噂程度に転移者がいたとは聞いたことがあったが、与太話の類じゃと思っておるぞ」


 周りの家臣は疑いの目を向けてきている。地球の存在はメトカーフ王国では知られていないらしい、それに、異世界転移者を選定する試験の存在など全く知らなさそうだ。

 俺はそんな試験があったことを王と家臣たちに説明した。


「幻術で狂ってしまったわけではあるまいな? 王の前で虚言は死罪だぞ」

「そんな法律はないわい。それなら証明できるものはあるか?」


 俺はスマホの電源をつける。電源を切っておいて良かった。ずっと起動し続けていたらバッテリーが持たなかっただろう。地球で撮った写真を見せる。

 飛行機の写真を見せて、飛んでいる様子を見せる。

 そして、王の写真を撮って彼らに見せる。


 全員が目を見開きながら、俺に質問をぶつけてくる。


「これは……信じざるを得ないようだな。彼らが見たことがないなら、間違いない」


 家臣たちはかなりのインテリ揃いらしい。


「ケルシャ山で主を呼び起こしたのも、今回の事件を起こしたのも、俺たち地球人なんです。なんの目的があって、俺たちが転移させられたのかはわかりませんが、すみません。俺たちのせいで」


 地球人がこの世界に転移する意味はあっても、この世界にとっての意味がわからないのだ。

 家臣たちは俺に非難の言葉を述べた。


「ちょっと待ってください。事件を起こしたのはちきゅう? 人かもしれませんが、それを解決したのはこのクリハラ君です」 


 オーウェンさんが弁護してくれた。

 俺は転移者選定試験の不正について説明し、俺だけがココに連れてこられたことも話した。


「そうです。私がこの世界にスキルを使って連れてきました」

「スキルって、世界間を移動するほどのものになると、生涯に一度しか使えないタイプのものでは……」


 オーウェンは何かを察したのか、顔から血の気が引いている。

 生涯に一度しか使えないって、そんなスキルがあるのか?



 

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