表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/75

第四十六話

「何の話だい?」




 鳳凰院は純真無垢な少年のような笑顔を淀川に見せる。本当に意図を理解していないように見える。だが、この男がそこまで鈍感なはずがない。絶対にわざとだ。




「だから、私が光也を好きってこと」




 記憶の中の淀川は赤らめた顔を伏せる。


 ここまで言ってしまえば、鳳凰院も確信的なことを言わざるを得ないだろう。こんな表情を見せることが淀川にもあったんだな。この記憶は高校一年が始まってすぐのことだ。黒板に書かれた日付を見たらわかる。二人の関係は中学生の頃から始まっていたはずだ。本人が散々周りに自慢していたから教室の隅にいた俺でも知っている。


 本物の淀川はガタガタ震えている。




「はは」


「え?」


「ははははは」




 鳳凰院は狂ってしまったかのように笑い始める。




「分かった。きららの気持ちは伝わったよ。君はボクのものになるよ」


「じゃあ⁉ 私と……」


「いや、ボクはこの世の全てを手にするつもりなのさ。だから君はボクの恋人にはなれない。そもそも、少し外見が良いだけの、実家が少し太いだけの小娘がボクと対等になれると思うかい?」


「そんなこと、ない。光也だって、ただの高校生だよ」




 記憶の中の淀川は涙を目の端に溜めている。




「今はな。ただ、異世界を手に入れられれば、地球もボクのものだ。鳳凰院グループがこの世を支配する。そうなればきららも僕の支配下だ。嬉しいだろ」


「そんな冗談みたいなこと……本気で」


「本気さ。ボクの奴隷になるってなら話は聞くが? どうする? そうじゃなければ裏の顔を知ってしまった以上ボクに関わらないでくれ。もしばらせば君を消すぐらい容易い。じゃあな」




 鳳凰院は鞄を肩に抱えて、教室から出て行った。


 教室に残された淀川は呆然とした表情で涙を流していた。自分が泣いていることにも気が付いていないみたいだった。




 本物の淀川は震えが止まらないみたいだった。今まで信じていた、慕っていた男がまさかこんな奴だとは思っていなかったのだろう。俺は父親の工場が鳳凰院グループに買収されたときから知っていたが。友人が知らなかったのは皮肉だな。あいつはエゴの塊だ。


 でも、淀川が男をたぶらかしていた理由が分かった気がする。鳳凰院を忘れるため、鳳凰院に女としての価値を認めてもらうため。そんなところだろう。神になろうとしているのも同様に、価値を認めてもらうためだ。


 だからといって、この世界の人間が死んでも良いわけじゃない。


 それは正しくない。




 俺は本物の淀川に近づく。




「俺にスキルを使っても、自分が苦しむだけだぞ。ゾンビたちを止めてくれ」


「どうして、どうして、どうして、光也はおかしくなったの。クリハラ君、やってくれたね」




 恋する乙女の面影はどこにもない。親の仇を目の前にしたように俺をねめつけている。




「やり返しても、淀川が苦しむだけだぞ」


「ド陰キャが調子に乗って……参式さんしき!」




 淀川が叫ぶと、俺たちは現実に引き戻された。ゾンビが湧きだす教会だ。すでに日は沈んでおり、魔法陣だけが唯一の光源だ。青白い光が空間を満たしている。


 


 淀川と俺の間に、巨大なゾンビが現れた。身長は五メートルはある。


 これが淀川のスキルの三段階目か?


 大きな幻想を見せるだけなら、脅しにしかならないと思うが……。




 巨大ゾンビが雑に腕を振って俺を攻撃しようとしてくる。一応避ける。


 腕が通り過ぎると、風圧を感じた。


 風圧? 存在していない幻想なのにか?




「淀川、これはお前が見せてる幻想なのか?」


「そうだよ! 物理攻撃が可能な幻想だよ。肉体に攻撃されたという幻想を見せることで実際にダメージを負わせるんだ。本人の身体が傷つくんだから、もうスキルは通用しないよ! くたばれ!」




 弐式は、精神攻撃だったから、淀川に跳ね返すことができたが、俺の身体に物理ダメージが入ってしまうなら跳ね返しようもない。


 俺は生命エネルギーと見た目を自分に戻した。




 体の細胞が怪我をしたという幻想にとらわれて、実際に怪我をした状態になってしまうということか?


 生命エネルギーをコピーしたところで傷つくのは俺の身体というわけか。


 厄介だな。幻想に攻撃は通用しないのだから。




 俺は飛んでくる巨大な手を剣で斬りつけるが予想通り、何の手ごたえもなく通過してしまう。それでも手が掠った、肩には痛みがあった。


 こんなチートみたいなスキルとどう戦えば良いんだ?


 本人を叩くしかないが、これだけ巨大なゾンビに守られていればそれも叶わない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ