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第四十四話

「淀橋、何で神になんかなろうとするんだ。学校で男たちを侍らせれたら十分だったろ?」




 淀橋は俺を嗤わらう。


 マントの下は艶めかしいレオタードだった。動きやすさを重視したのだろう。まるで西洋の人形みたいに見える。




「あんなゴミども何の価値もないよ。神って、何万人に崇められるんでしょ? そっちの方が絶対に良いじゃない」




 俺は分かり合えないことを確信した。


 


「何人も犠牲になるぞ?」


「私が神になるために死ねるんだから良いじゃん……ムカついた? クリハラ君じゃ私に勝てないと思うけど」




 悔しいがその通りだ。意識を乗っ取られれば、そもそも戦闘にすらならない。


 それなら、ゾンビを狩りつくしてしまえば、淀橋を止められるし、ココも助けられるか?


 俺は鞘を腰に引っ掛けて剣を差し込んだ。




「勝手にすれば良いけど……無駄だと思うよ。このゾンビちゃんたちの脅威は文献にも記されていたしね。一度ゾンビになったら人間には戻れないよ」


「勝手にさせてもらうさ」




 こいつらをゾンビだと認識するあたり、同郷だと実感させられるな。別に嬉しくはないが。


 人間に戻れない所まで一緒なのか……。


 淀橋が本当のことを言っているとは限らないが、ゾンビになってしまった者を全員どうにかしなければならないのは一緒だ。




「ココ! 絶対に助けてやるから安心しろ! 王からもたんまり金をとってきてやるからな」




 ココが頷いたような気がした。


 俺は教会の中にいるゾンビを切り伏せてから、外に出た。それにしてもすさまじい切れ味だ。オーウェンさんの教えのお陰で、狙い通りの場所を斬れるようになっていた。




 外は地獄を再現したようなありさまだった。ゾンビに追われた人たちが悲鳴を上げながら、逃げ惑っている。


 警報の鐘が鳴り続けている。


 俺も責任の一端を担っている。罪悪感が無いといえば嘘になる。


 まず、人を襲っているゾンビにとびかかって、斬り伏せた。




「あ、ありがとうございます」




 老婆がすがるような目で俺のことを見ている。


 感謝の言葉には応えない。


 俺が一人を助けている間にも他の人が襲われている。これは一人じゃどうしようもないな。オーウェンさんに頼んで、騎士団を動かしてもらうしかない。


 王から情報が流れていたとすると、オーウェンさんもあるいは……。いや、それは確かめてみれば良い。




 俺は王城に向かうことにした。


 一人で走っていると道に迷いそうになった。思っている以上に、ココがいないと俺はこの世界で何もできないのかもしれない。


 助けられる人は助けながら進む。俺の手が回らない場所で、誰かが襲われていると思うと、心臓を握りしめられているような気がしてきた。


 王城付近はまだゾンビがいないみたいだった。


 衛兵は俺たちが王城に初めて入った時にいた人と同じだった。




「ああ、君か。どうしたんだ?」


「オーウェンさんに会いたくて」


「わかった。ちょっと待っていてくれ」




 すぐにオーウェンさんは城門まで駆けてきた。




「クリハラ君、どうしたんだ。どうやら街が大変なことになっているみたいでね。手身近に頼むよ」




 すでに情報は伝わっているみたいだった。


 俺は教団に潜入してからのことをできる限り、手身近に伝えた。




「……王を疑うのは早計じゃないかい? 君もあの方の優しさは知っているだろう?」




 どこかに怒りを感じる反応だった。




「いや、可能性というだけで、本当にそうだったかは分からないんですよ」


「だから、確かめろと? それはできない。僕は王に使える騎士だからね。それを王に確かめたかったら、僕を倒してからにするんだ」




 すさまじい忠誠心だ。このわからずやと言いたいところだが、争っている暇はない。王が教団とつながっていたかは、今となってはどうでも良いことだ。


 ゾンビをどうにかしないとすべてが終わってしまう。




「いや、この話は一旦保留にしましょう。まずはゾンビを先にどうにかしないと」


「それもそうだね。民の安全が最優先だ。ところでゾンビという名前は誰がつけたんだい?」


「俺の故郷では同じようなモンスターがゾンビって呼ばれてたんですよ」




 得心がいったようにオーウェンさんは頷いた。




「故郷に同じようなモンスターがいたなら倒し方を知ってるんじゃないかい?」




 ゾンビが実際にいたわけじゃないが、その辺の事情を説明するとややこしくなってしまう。


 俺はゾンビ映画でどういう風に彼らが倒されていたかを思い返した。


 


 大体、頭を銃でぶち抜かれてたような気がするな。


 俺はそれを知っていたからこそ、身体を斬りはしても頭は斬らなかった。元々人間だったゾンビもいるはずなのだ。




「首を切断したり、頭部を破壊したら動かなくなっていたと思います」


「なるほど、それは有益な情報だ。それと、一度咬まれた者はゾンビから人間に戻らないのか?」


「戻らないと、淀橋は言っていました」


「ふむ……。出来る限りゾンビは確保して殺さない方向で動こう。騎士団がゾンビはどうにかしてみせるから、君はヨドガワを倒せないかチャレンジしてみてくれないかい? 君ならできるはずだ」




 倒すのは難しいと思うが。どうせ倒さなければならない相手だ。ゾンビをどうにかするための人手は確保したし、もう一度立ち向かおう。


 力を手に入れた俺なら、あいつを倒す事だってできるはずだ。


 ここは日本の学校社会じゃないんだ。スクールカーストは存在しない。

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