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第四十一話

「やあやあ、君たち。おめでとう、これで真の神候補だね」


 仮面の下から、さっきよりも親しげな声が聞こえてきた。

 広げられた両手は不自然なまでに長くて不気味だ。

 よろしく、と言いいながら差し伸べられた手を俺たちは渋々握り返した。硬くて温度を感じない。義手か?


「これは気にしないでくれ。 それじゃ、体のどこにでも良いから身に着けてくれ」


 赤色の、奇妙な紋様の入った仮面を手渡された。コルハジャに掘られた紋様と似ている。

 俺は腰のあたりにぶら下げた。

 ココは頭の上に載せていた。


「ついておいで……効果を表せ」


 壁が割れてさらに地下へと続く階段が現れた。

 ざわざわと誰かが喋っている人の声が聞こえてくる。

 中に入って最初に思い浮かんだ言葉は「研究所」だった。


 俺たちくらいの歳の若者が、奇怪な運動をしたり魔法を使ったりしている。若者達には計器から伸びた線が繋がれている。

 白衣を着た人達が計器の値を記録している。


「知っての通り、我々は神に対する祈りを数値化し、もっとも効率の良く神に気に入られる方法を研究している。あそこの石板が見えるか? あれの発見が我々が独立に至った原因だ」


 仮面の紋様と似た線の集合体で人の絵が描かれた石板があった。全ての計器から線がその石板に集中している。

 この部屋全体が蜘蛛の巣みたいだ。

 石板は光を点滅させている。

 祈りや、信仰心が結果として現れる世界では、祈りに効率の良さが求められたりするのか。これは、王に報告するに値するかもな。


「君たちを選んだ理由は、「他人を思いやる心」がある人物の祈りに、神が応えがちだったからさ」

「それが理由であんな試験を行なっていたのか?」

「そうだ。君たちは今からこの実験の手伝いをしてもらおうと思う。あの石板を活性化させられれば、神になれるよ」

 

 ココは話についていけないのか、首を傾げている。


「神になれるって、神は魔物の成れの果てじゃないんですか?」

「初代はそうだが、二代目以降もそうとは限らない。実際、エルフの神はエルフが二代目を継承しているよ」


 まさか、神が役職だとはな。

 

「じゃあ、君はこっちで君はこっちね」


 俺はランニングマシンそっくりな機械の前に立たされた。ココは自転車のような機械の前にたたされている。

 研究員達が俺たちの体に謎の紐の先についたパッドを貼って回った。

 ランニングマシンの上に立たされると、思った通りに動き始めた。


「では、走ってください。体を活性化しないとデータが取れないので」


 研究者も、あの仮面のやつと同じような声で喋った。

 言われた通りに走るが、何も特別なことはない。


「もう少し速めても良いですか?」

「わかりました」


 走る速度を上げる。


「疲れたら言ってください」


 疲れないと思うけどな。

 ココはすでに、息を切らしながら、自転車を漕ぎ続けている。いくら漕いでも進まないようになっているらしい。

 いくらなんでも、疲れるのが早くないか?


「ええ⁉︎」


 研究者は急に、ひっくり返った。仮面のせいで表情が見えないが、驚いていることはわかる。


「どうしたんですか?」

「見たことない数値ですよ」


 俺はタルマハジャ神から「守り」を授けられているから、それなりの結果が出てしまったのか?

 眩しいな。光の方向を見ると、石板が太陽みたいに光り輝いていた。

まずい、あの石板を活性化させると神になってしまうんだったか? 神になる気はないし、ここで目立ちすぎるのもよくないかもしれない。

 俺は体にまとわりついている線をはぎとった。

 石板の光は弱まった。

 周りは静寂に包まれた。


「な、なんだったんだ⁉︎」

「機械が壊れたんじゃないですか?」

「そ、そうかもしれないですね……もう一度測定しなおさないと……」


 同じことを繰り返しても確証を得られてしまうだけだ。


「あの、今日は疲れたので、終わりにしても良いですか?」

「だめだ」


 試験の司会をして、俺たちをここまで連れてきた仮面のやつが会話に割り込んできた。


「ここまで石板が強い反応を示したのは初めてだ。今すぐにでも、会議文書(もんじょ)が使えるか試さないとね」

「しかし……それは不可能だという結果が出たのではないのですか?」

「何事も試さなきゃわからないでしょ。クリハラ君、ちょっと付き合ってくれるかい? 君のガールフレンドも連れて行っても良いから」


 ガールフレンド? ココのことか。いちいち訂正するのもめんどくさいのでそこには触れない。


「いいですよ。行きましょう」

「献身的な信徒は大歓迎だよ」


 教団に協力するつもりはないが、彼らの思惑について知るなら、行った方が良さそうだ。

 そういえば、あいつはなぜ俺の名前を知っているんだ? 「クリハラ君」と俺のことを呼んだぞ。

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