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第三十六話

 衛兵が連れてきたのはオーウェンさんだった。


「クリハラ君、こんなに早くくるとは思ってなかったよ。嬉しいね。じゃあ、王のところまで案内しよう」


 まるで乙女かのようにオーウェンは微笑む。いや、乙女なのか、実際。


「ちょっと待ってくださいよ。王が俺たちのことを気に入ったって聞いたんですけど、なんで?」

「僕が君を推薦したからだね。『まだ10代なのに、S級冒険者でレベルも100を超えていそうで、正義感もある』とね。詳しい話は王に聞いてくれ」


 思った通りではあるが、「推薦」? なにかのコンテストにでも出させられるのだろうか。俺のレベルに関しては、それで正解だから恐ろしい。剣を交えただけでわかるのか。あるいは見るだけで。


 ココは不機嫌そうに顔をしかめている。

 オーウェンさんは慣れた足取りで王城に入ってどんどん進んでいく。中心にある赤い塔の上階に王はいるようだ。執事やメイドが慌ただしく動き回っている。

 室内の調度品は高級そうなものばかりで、革張りや、宝石がふんだんに使われている。

 エレベーターのようなものに乗り込む。


「ここからは、選ばれしものしか上がることのできない場所だよ。光栄に思うと良い……効果を表せ」


 俺たちを乗せた箱は上昇していく。

 

「え、落ちないですよね?」

「安心してくれ。城の凄腕魔法使い達が設計したものだからね。クリハラ君は驚かないのかい? 滅多に見られるものではないと思うけれど」

「別に驚きませんね」

 

 エレベーターなら何回乗ったかわからない。


「流石はクリハラ君だ。よし、ここで降りよう。この国のトップが集まっているから、失礼のないようにな」


 オーウェンはウィンクをしながら扉を魔法で開けた。

 見入ってしまいそうだ。女性だと知ったからこその魅力がある。


 地球にあったエレベーターと同じように両開きの扉が開くと、鏡のように反射しそうな滑らかな石材でできた広間があった。掲げられた松明が荘厳な雰囲気を作り出している。いや、ここにいる人物全員が高圧的な雰囲気を持っているせいかもしれない。

 中心には巨大な椅子に鎮座する人がいた。あれが王座で、座っているのが、もちろん王だろう。

 近づくにつれて、流石に緊張してくる。

 巨人を思わせる巨躯を持っており、頭が潰れるんじゃないかというほど大きな王冠をかぶっている。纏った赤いマントがその高貴さを際立たせている。


「騎士オーウェンよ、連れてきたか?」


 オーウェンは王の前で剣を立ててひざまずく。

 俺たちもそれを倣ってひざまずいた。木剣を立てるのは恥ずかしいからやめた。


「はい、国王様。例の者を連れて参りました」

「うむ。こいつがクリハラか。想像していたよりも若いな。顔を上げい」


 俺は言われた通りに顔を上げる。

 王はため息を吐く。失望されたのか?


「よく来たねえ! わしの孫と同じ歳くらいじゃろう。もてなそうじゃないか。オーウェン君もありがとう、報酬ははずむぞ」

「光栄です」

「え?」


 思わず声が出てしまった。王の威厳が消え去り、久しぶりに孫にあったおじいちゃんみたいになってしまったのだから。


「さあ、ついておいで食事でもしようじゃないか」


 王が側近のメイドに言伝すると立ち上がった。2メートルは超えていそうだな。王がエレベーターに乗り込んだので、俺たちも乗り込む。重量制限をオーバーしていそうだが正常に動いた。

 王がエレベーターを止めて、扉を開くと、その先には巨大な食卓があった。テーブルには肉料理やスイーツが豪華に乗せられている。湯気がたっているところを見ると作りたてみたいだ。王がメイドに言伝をしてから作られたのかもしれない。凄まじい早さだな。

 メイドさんが椅子をひいてくれたので、俺はそこに座った。俺の対面に巨大なテーブルを挟んで王とオーウェンが座った。ココは俺の隣だ。


「まずは食べると良い」


 俺たちは目の前にあった料理をつまんだ。美味しい。ギルドのレストランの料理に庶民的な美味しさがあるとすれば、こっちは高級で上品な美味しさがある。

 

「美味しいな……」

「そうじゃろう。メトカーフ王城の料理は世界最高峰だぞ」


 ココも無言で食べ続けている。

 緊張を紛らわせているのかもしれない。


「その隣にいる女の子は従者かな?」

「違いますよ。俺の雇い主です」

「ほう?」


「わ、私がクリハラに仕事を紹介して、報酬の何割かをもらっているんです」

 

 ココは顔をあげて、震える声で言った。


「なるほど二人で仕事をこなしているというわけか、それなら同席してもらっても構わんな。単刀直入に言おう。君の、君たちの力を借りたい。協力してもらえるか? 報酬ははずもう」


「はい! もちろんです!」


 俺より先に応えるなよ。と言いそうになったが、俺も世話になっている国の王からの頼みだから、断ろうとは思っていないしな。

 まだ詳細は聞いていないが、聞いてから断っても、この王が何かしてくることはないだろう。


「俺もやります」

「ありがとう。その頼みというのがな、「タルマハジャ教団の調査だ」」


 神もいるし、実際に「守り」もある以上、宗教もこの世界にあるよな。今まで気がつかなかった、というか気にしていなかったな。

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