第三十四話
どうしてなのだろうか。ココあれほど有名人であるオーウェンさんに興奮していたにもかかわらず、嫌悪感を抱いているみたいだ。
まあ、王城へは一人で行けば良いから別に良いのだけれど。
俺たちはまたギルドに戻るための道を歩き始めた。
サシャたちはもう少し体を休めてから、家に帰るそうだ。お礼と共に住所も教えてもらったので、また会えるだろう。
村人達はシープローチを駆除した時の三倍くらいの量の、ガジョの実を俺たちにくれた。重いけれど、持って帰らないわけにはいかない。
ギルドに到着する頃には夕日が差していた。
庭にたむろしていたやつらは、全員宿に帰ったか、依頼をこなしにいったのか、誰もいなかった。
中に入ると、食欲を誘う香りが漂ってくる。レストランからは酒盛りをする声が聞こえてきた。
どこか沈んだ顔をしたアルルさんが受付にいる。
「アルルさん、戻りましたよ」
「ああ、良かったー! 無事だったんですねー」
ケルシャ山で起こったことをアルルさんに俺は説明した。
「主を倒せてしまうなんてすごいですー」
甘えた声でアルルさんは言う。
もう騙されないぞ。
「この魔石のおかげですよ。主の弱点を教えてくれたんです」
「不思議ですねー。まあ、魔石にも相性がありますからー」
俺は他の魔石をつかったことがないから判断がつかないけれど、そんなものか。
「あと、朝比奈はオーウェンさんっていう騎士に連れていかれましたよ」
「ええ! あの美丈夫オーウェンですかー⁉︎ 良いですねー。騎士に連行されたということはもう立派な罪人ですから、私がどう言おうと問題ないですねー」
アルルさんは幸せそうに笑った。
気持ちはわかるが、怖いな。
「今日は言いたい放題しましょう」
「そりゃもちろんそうしますよー。じゃあ、これが報酬になります」
アルルさんはサンタクロースが担いでいそうな袋を持ち上げて、俺たちの前に置いた。
「おおー」
ココが目を輝かせながら、感嘆した。
中には金貨がぎっちり詰まっている。これが10万タルか。
「このまま持ち運ぶのは危険なので、ギルドに預けることができますがどうしますー?」
「じゃあ、そうさせてもらいます。ココもそれでいいよな?」
ココはアルルさんを疑いの目で一瞬見つめたが、頷いた。
俺たちはしばらく生活できるだけの金だけ受け取って、ギルドに残りは預けることにした。
「あと、お二人ともレベルは測って行きますかー?」
「お願いします」
「私も」
レベルは俺のスキルと直結するので知っておきたい。
アルルさんは機械を持ってくると俺たちにかざした。
「ええー。これは……クリハラさんのレベルが丁度100に到達しています!。……ココさんは31です。おめでとうございます」
驚きよりも困惑が勝っているみたいだ。
俺も驚いた。主との戦いでレベルが60以上上昇したことになる。
確かに、レベルの高いモンスターを何匹も倒しはしたが、そんなに上がるとは。
「100って、どのぐらいなんですか?」
「少なくとも、冒険者ギルドにはいませんねー。国直属の戦闘部隊、それこそ騎士団の猛者くらいしかこの国にはいないかとー」
とんでもないことになってしまったな。
ココもレベルが1上がっていたが、なんか、申し訳ないな。
「クリハラ……、」
目が潤んでいる。そりゃ苦しいよな。わかるよ。俺がどれだけ努力しても勝てない奴はいたからな。
謝るべきかどうか考えていると、ココの口角が上がってきたことがわかった。
喜んでる?
「クリハラ、はやっぱりすごいです。いいえ、私の見る目がすごいんですよ」
「確かに数100年に一度の才能ですねー」
褒められ慣れていないから、どういう反応をしていいかがわからない。ありがとう、も違うしな。
そういえば、いつもの野次が飛んでこないな。
「じゃあ、冒険者ライセンスに記入しますねー」
俺はアルルさんに冒険者ライセンスを手渡した。
「そういえば、ココは冒険者登録をしないのか?」
「私は、大丈夫です。一人で依頼を受けることはないので」
俺が依頼を受ければ良い話ではあるのだけれど。
「何か理由があるのか?」
「……聞かないでください。プライベートな質問は禁止です」
「詐欺罪で捕まったとか?」
「違いますよ!」
頬をぷっくりさせて怒っている。
スーツにフリルスカートなんて格好をしてたら怪しまれそうなものなんだけどな。
アルルさんが冒険者カードを持って帰ってきた。
レベル100、と書かれている。
「これからも依頼を引き受けてくれると助かりますー」
「もちろんです。じゃあ、俺たちはー、レストランに行くか?」
「そうしましょう」
アルルさんと別れて、俺たちはレストランに向かった。
宴会をしていたのにやけに静かだな、と思ったら、目と口を開き切ったまま全員がこちらを見ていた。
「驚きすぎて言葉が出なかったみたいですね」
「そう……なのか?」




