第二十八話
足に絡みついたツタに触れてスキルを発動させて、ちぎる。縄みたいな硬さだ。このままじゃ体力がもたない。落ちないようにゆっくり登っていたが、ツタに追いつかれる前に辿り着こう。
足が滑って落ちそうになるが、なんとか堪える。
脚の付け根まで登り切って、中心の魔石に手を伸ばしてみる。ギリギリ届かない距離だ。壊すなんてもってのほかだ。長いハンマーみたいな物があれば壊せるはずだ。
(コ! 長いハンマーは出せないか? おい、コ!)
(ん? 我か⁉︎ 我に言っておるのか? もはや略すという次元ではないぞ。急ぎの用だろうから、答えてやるが、出せるぞ。無から有を生み出す力が魔術だからな。ただ、強度は補償できんから使えるのは一回きりだ)
流石にコ、だけじゃ通じなかったか。コルハジャに魔法を使ってもらいたくなるのは、急ぎの場面が多いからな。略せたら楽なのだけれど。
一回でも使えれば十分だ。それで壊れなければ、もう一度試せば良い。
(スマホは話している相手の顔もみることができるぞ。この知識でどうだ?)
(それはすごいな音声以外も伝えることができるのか。わかった。では)
「効果を現せ」
俺の右手の中に冷たい感触が現れた。金属がどんどん伸びていき、先に塊が生成された。一色の金属でできた無骨な物ではあるが、俺が想像した通りのハンマーだ。一度で壊れてしまうとは思えない。
ここから跳んで、その勢いでハンマーを振り下ろそう。
(コル、俺が跳んだら空中浮遊の魔法を俺にかけてくれ。スマホは動画を撮影できる。この知識で頼む)
(もうコルで構わん! 動画も撮れる……スマホという道具は本当に万能であるな。空中浮遊……やったことはないが了解した)
やったことないのか 失明させられかけたことがあるだけに不安だが、ここまできたら後には引けない。
よし、行こう。
足に力を入れて、赤く大きな魔石に向かって跳躍する。狙いを定めて、ハンマーを振り下ろす。
手応えが薄い……。ただでさえ道具を使うのが苦手なのに、空中で扱おうとするのは不可能だったか?
ふわりと自分の体にかかる重力が和らぐのがわかった。これが空中浮遊の魔法か。速度は遅いが、自分の進みたい方向に体が動く。
中心の魔石を見上げてみると、わずかにヒビが入っているだけだった。
握っていたハンマーが塵になって消えた。
(ぐおおおおおお、どうしてわかったんだ小僧!)
体を揺すぶられているような気分にさせられる声だ。
主が中心を傷つけられて苦しんでいるのだろう。
「見つけられたことよりも自白した方がお前のミスだと思うぞ」
どうしてわかったのかは不明だが、コルの言った通り、赤い魔石が中心だったようだ。問題はどうやって追撃するかだ。
考えながら着地すると、岩が盛り上がって赤い魔石を隠してしまった。
しまった。これじゃあどうしようもない。
(長くは隠して置けないはずだぞ。それができるなら元から隠しているはずだからな)
(なるほど、良いこと言うじゃないか)
(にっしっし! 我を誰だと思っている⁉︎ 推薦者のコルハジャ様だぞ!)
岩で隠れてしまった部分を見上げる。
周辺がひび割れて、魔石を覆った岩石ごと崩れ落ちてきた。
避けると、地面にめり込んだ。
「どうなってんだ?」
これじゃあ弱点を晒しているのと変わらない。
(魔石を守ったことで、他の魔石と連携が取れなくなってしまったんだろうな)
仕組みはよくわからないが、それならありがたい。
岩石から四つの円柱が生えてくると、それを脚にして立ち上がった。高さは三メートルほどで、随分スケールダウンしている。
(我輩をこんな姿にしてしまうとは、いつどきでも人間というのは野蛮だな。大人しく封印されてやったのに……よっぽど滅ぼされたがっているみたいだな。まずはお前からだ)
小さくなった主の立つ周辺の地面が蠢き始めた。また、モンスターを呼び出す気だろう。鋏が見えた。またゴリクラブか。だが、大きさが桁違いだぞ。
それこそ鋏だけで一メートルはありそうだ。それが四体。
最後の悪あがきか。
スキルを使えば、大きくなったところでどうにでもなるはずだ。
地面から這い出そうとしているゴリクラブに触れて、スキルを発動する。
だめだ。青く光らない。レベルが10以上離れてるのか⁉︎ 俺のレベルは40だった。それから何体かモンスターを倒したはずだ。
一体のレベルが50以上……。
いや、レベル差は単純に生命エネルギーの量が違うというだけのことだ。倒せないわけじゃない。
足に力をこめて、思いっきり鋏に蹴りを入れる。びくりともしない。蹴った足の方が痛いくらいだった。




