第二十五話
生命エネルギーに干渉するスキル……? ただ単に体力を削られるだけじゃないのか?
「馬鹿だなあ、繰原。生命エネルギーの量がレベルなら、生命エネルギーを燃やしちまえばレベルが下がるだろうが!」
「っ……!」
俺の生命エネルギーが燃やされることによって、朝比奈とのレベル差がまた10以上になってしまったということか。
思ったより厄介な能力だな。俺との相性が悪いというか。
手近なところにモンスターがいれば、それを倒してまたレベル上げをしてやるのだがな。次スキルを使って殴れば、あいつを倒せる自信がある。
「ほら、オレの仲間たち! あいつを殺しちまえ!」
「悪いな、お兄ちゃん、儂らも生きなきゃなんねえ」
朝比奈の傍にいたドワーフが斧掲げて、走ってくる。さみしそうに笑っている。自嘲だ。
俺は斧を避けて、ドワーフの腹に触る。スキルを発動して、そのまま軽めに蹴り上げた。大した抵抗も見せずにドワーフは吹き飛んでいく。
そもそも戦う気が無かったようだ。そりゃそうだ。自分を助けに来た相手を本気で殺す気になんてなれない。
「ちっ、あいつはやっぱり使えねえなあ。本当に伝説の戦士なのかあ?」
「オラオラ!」
サラマンダーが二つに割れた舌をくねらせながら、剣で斬りかかってくる。すさまじい速度だ、距離を取って避けようとするが、胸にかすってしまう。
剣が防具をえぐっていった。
次々とすさまじい剣戟が迫ってくる。避けるのでやっとで反撃することができない。
「すばしっこいな、小僧。だがアサヒナ様の力を借りるまでじゃないぜ。今忙しいからな、手を煩わせるわけにはいかない」
「良いぞ、ヘビ! 後は頼んだぜえ」
ひらひらと手を振って、朝比奈は遺跡の中へと消えていった。何を企んでいるんだ?
このサラマンダーは脅されているから戦っているというわけじゃないみたいだ。アサヒナを慕っている。
どこに尊敬できる要素があるのだろうか。まあ、あいつは人の心に付け入るのが上手いからな。丸め込んだのだろう。
「俺はあの人の人格に惚れ込んだわけじゃないぜ。強さだ。戦士は強さこそ正義なんだ!」
意外だ。日本では駆逐されつくした考え方だな。
「その考え方は正しくないな。あいつ自身が強いわけじゃないからな」
「戯言は俺に勝ってから言えよ!」
しゃべるのもやっとの状況だ。避けてはいるが、俺の意識の隙をついてくる攻撃は避けられない。適当に振っているように見えて、しっかり狙いのある攻撃だ。防具もいつまで持つかわからない。
このラッシュを止めたいが、俺に剣を正確に受け止めるような器用さはない。ならば……
俺も殴りと蹴りのラッシュを相手にかます。
「俺が腕で受け止めると思ったろ、スキルは使わせないぜ。拳闘士の割に、芸がないな……」
「なれるなら、剣士になりたいさ!」
攻撃が全く当たらないのだから仕方がない。
考えが読まれていた。
「ココ! 木をこっちに飛ばしてくれ!」
「木ですか⁉ わかりました」
しばらくして、俺とサラマンダーの間に巨木が現れた。俺が想像したのは丸太くらいのサイズだったんだけどな。
「なんだ!」
サラマンダーは驚いているが、すでに繰り出した攻撃をやめることはできない。
その先は巨木だ。
剣は食い込む。
「抜いてみろよ。力があるだけに深く刺さって、抜けないだろ」
相手が驚いている間にスキルを発動して、うろこに覆われた鼻頭に拳を叩き込んだ。
巨木が落下して爆音と振動を起こした。
何とか立っていたサラマンダーは尻餅をついて、そのまま倒れた。
よし、倒した。なかなか強い相手だったから、俺のレベルも上がっているはずだ。正確な数値はわからないが。
「ココ! ありがとう!」
「いいえ。報酬を分けてもらえればいくらでも手伝いますよ」
どんだけ欲しいんだよ……
「おい」
足元から声が聞こえる。サラマンダーだ。倒し切れていなかったか。
「やめろ、長年戦士をやってきたから分かるが、レベル差は十分に縮まったぞ。お前、「守り」持ちだな」
戦うだけで分かるのか。すごいな。
こいつの目的はなんだ?
「どういうつもりだ?」
「お前の言った通り、アサヒナは人格的にとても尊敬できない。戦士として不合格だ。あいつを倒すために俺はお前に協力したってだけのことだ。自分の力でどうにかできないのは不本意だがな」
「ふふっ、分かった。俺に任せとけ、絶対に朝比奈は止める。正しくないからな」
思わず笑いがこぼれてしまった。
……朝比奈に人望なんてないんだ。あいつはずっと孤独だな。
俺は遺跡に足を踏み込んだ。
ココも追いついてくる。
「よく勝てましたね。流石です」
「ここからが本番だからな。相手にやる気がなかったんじゃ誇れない」
「それもそうですね」
中は灯りが灯っていないのか、暗くて見通せない。
「怖いです」
「仕事、だろ?」
ココはぎゅっと俺の腕を掴んできた。心臓が跳ねる。
お化け屋敷に女子と行く機会があれば、こんな感じだったのかもしれない。
しょうがないから、そのまま進む。
大きな両開きの扉が現れた。
この先に、サシャ達がいるのだろうか。
俺とココは扉に手をかけた。




