第二十三話
「はっはっは! お前たち、こんなに早く会えるとはな!! 遺跡の調査に行くんだって? 仕事熱心なもんだな。普段ならよその者を立ち入らせないが、今回は特別だ!」
「ありがとうございます、助かります」
グルードさんは村の説明をしながら、山まで連れて行ってくれた。
簡易的な木の門がある。両脇にいる衛兵はグルードさんの顔を見ると、門を開けてくれてた。
「さて、ここからがケルシャ山だ。モンスターもよく出るから気をつけろよって……、心配無用だっな。シープローチの大群を倒せるんだからな!」
「村の方たちに手伝ってもらわなきゃ厳しかったですよ。あの後、大丈夫でしたか?」
縛り上げられたシープローチは食べ物に加工して、村で食べたり、売ったりするそうだ。形はゴキブリに似ていたが、肉は羊の味がするのかもしれない。
思ったより、良い影響があったのだ。
「良かったですね、クリハラ。あなたの力は私のお金になるだけじゃなくて、人に良い影響を及ぼせるのですよ」
「そうだな……、それは良いことだけど、悪いやつがこの世から消えない限り、どうしようもない」
「はっは! 元も子もないことを言うなよ、クリハラの兄ちゃん!」
全くその通りなのだが、力を持った正しくないやつらを消す方が、手っ取り早いのは確かだ。
「おっと、ここらでは珍しいな」
グルードさんは飛び出してきた、巨大な虫型のモンスターを刀で薙ぎ払った。
次々と出てくるので、俺も殴りつける。
ココはスキルを使ってモンスターを真っ二つにしていた……?
空中で下半身を失った巨大な虫が、飛べなくなって落下していく。体液が宙を舞った。
「お姉さん、えげつないことするねえ」
「ココ、攻撃はできないんじゃなかったのか?」
虫の体液を器用に避けて、ココは涼しい顔をしている。
「下半身だけ、適当な場所にテレポートさせたんですよ。相手のレベルが高いと効かなくなるのですが」
「仕事だから」と色々割り切っているのかと思ったが、素の性格で感受性が狂っているような気がする。
生命エネルギーの大きさは防御力にもつながるんだな。
しばらく山を登ると、木々が少なくなっていき、青空が見えるようになってきた。心なしか、雲との距離が近くなっている気がする。空気が澄んでいるのがわかる。
日本の都会に慣れ切った俺は、こんなに自然の中が心地い事を意外に思った。
ココが息を切らし始めたので、休憩を入れながら登り続ける。
「兄ちゃんは汗一つかかないね。俺だって、よく山に登っている方なんだがなあ」
「毎日走りこんでましたから、体力にはそれなりに自信がありますよ」
「どれだけハードなトレーニングを積んだことやら」
グルードさんはあきれ顔で笑った。
毎日十キロのランニングぐらいだったら、誰でもこなせると思うけどな? 陸上選手なんてもっと走ってるわけだし。まあ、普通の人ならそこまでトレーニングをせずとも、体力がつくのだろうが。
「もうすぐ到着だ」
「逆にまだつかないのが不思議です」
「仕事なのに文句言ってても良いのか?」
「うるさいです」
言い返す言葉もなさそうだった。
不意に長大な階段が現れた。岩を削って作られているが、綺麗で掃除もされているみたいだ。
両端には腰辺りまでの高さがある石像が頂上まで並んでいる。四本足で立つ、生き物のようだ。ただ頭らしきものはなく、蜘蛛くもみたいだ。
「あれが主ですか?」
「そう言われているな、主が存在したのは数百年以上前のことだから、詳しいことはわかってない、すまないなあ、力になれなくて」
「いえいえ、ここに連れてきてもらっただけで十分です」
(ん……、強力な魔物の気配がするぞ)
急に頭の中でしゃべり声がした。もちろん、コルハジャだ。
(どういうことだコルハジャ?)
(今日はまともに呼んでくれるのだな。近くに強力な魔法使いか、魔物がおるから気をつけろということだ)
(わかった、ありがとうな)
サシャの父親がこの近くにいるのだろうか? その可能性は十分にある。
コルハジャが警告みたいなことをしてくれるのは意外だった。
俺たちは階段を登っていく。
「ちょっと待ってください、何か話声が聞こえませんか?」
俺とグルードさんが同時に黙って耳を澄ませる。微かに、人の喋り声が聞こえてきたような気がした。
「誰かいますね」
「まあ、村の誰かだろ。祈りに来るばあさんやじいさん達も、いるしな」
よそ者は入れないということだったから、グルードさんの言う通り村人なのだろう。
山に入るための門には衛兵がいるので、よそ者が通れはしないはずだ。
一抹の不安があるが、遺跡に行ってみれば全てがわかる。もし朝比奈がいるようなら、二人には逃げてもらって、俺だけで決着をつけよう。
地球からの因縁は地球人だけで断ち切らせてもらう。




