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#11 グッバイ素材周回

「あんたねーーーっ!!!」


「わ、悪かった、儂が悪かった」



クロムとチャコは、よろず屋のおばあさんが、ひたすらバルザを箒でぶったたく様を、

ぽかーんとしながら見ていた。



「そういえば同郷とか書いてあったな……」



クロムはリレファン設定資料集の一節を思い出す。

バルザと、ビエナのよろず屋の主、ダリアは出身地が同じであり、

所謂幼馴染のような関係性である。



「全く。こんないい人達を捕まえて通り魔扱いするなんて。軍に行って道徳をわすれちまったのかい!?」


「わ、悪かった。すまないな、兄ちゃん達。何だかアンタを見てると嫌な胸騒ぎがしちまってな……」



バルザの勘はあながち間違いではない。クロムは実装された全精霊を最大レベルまで育てているため、

素材周回クエストである『風の試練』は数えきれないほど攻略している。

バルザを最速でボコボコにできるパーティも彼が考え出しており、ほかのプレイヤーのどの記録よりも早かったりする。



「い、いえ……誤解が解けたのなら何よりですよハッハッハ……」


「ようやくわかっていただけましたか……ふふん!」



チャコは何故かドヤ顔である。



「ぎゃう」



と、そこに見知らぬ顔が。

クロムには見覚えのあるその顔は、まさしく精霊に違いない。



「グリーンワイバーン。星4の中でも優秀な……何故ここに?」


「こいつはうちの用心棒さ」


「あ!いなかった用心棒って……!」


「そう。あの日はたまたまね……王都にいるこいつ(バルザ)に伝言を届けに行ってもらってたのさ」



定期便しか伝達手段がないと思ったが……ドラゴンには多少の距離は関係ないということだろう。



「このワイバーンは儂の子飼いでな。ビエナだけではなく、王都から距離のある各地において、

衛兵の手に負えない仕事が入ったら呼びつけてもらってるのさ」


「こいつのドラゴンは本当に早いからねえ。王都とビエナを一日で往復できるなんて羨ましいよ」



そういえば、クロムは自分達が来た当日はバルザはいなかったなと思ったら、そういう事だったのかと合点が行った。

ファンタジー世界という、飛行機や電車のない世界観でのドラゴンは非常に便利であることを理解する。



「……兄ちゃん達なら話してもいいか」


「え?」



バルザはそういうと、近くの椅子に座り、ゆっくりと話し始める。



「町民の行方不明の話……知ってるだろ。通り魔事件もそうだ。

こいつ(ダリア)から聞いた話だが……ついに星4クラスの召喚士も行方不明になったらしい」


「星4!?それって精霊がって事ですか?」


「ああ、精霊も星4で、本人の実力も星4以上はある冒険者だったらしい。

流石にそのレベルが相手じゃあ、ここの衛兵には荷が重いだろうよ」



星4レベルはゴロゴロいるはずなのだが、ここは治安をどうやって守ってるのか不安になってきた。



「いや……そんな心配な顔をしなくてもいいぜ、衛兵では確かに力不足だが……ここには王都公認の星4クラスの魔術師もいる。

さらにギルドが雇っている星4クラスの召喚士もまだいる。流石に治安は大丈夫だ」


「星5はいないんですか?」


「そうゴロゴロいてたまるかよ」


「そ、そうですか……」



クロムはさっき星5二人に襲われたところだし、グレッジマンさん家のメリエルも星5なのだが、そのことは黙っておいた方がいいのだろうか。



「やっぱ兄ちゃん……何かおかしいな。てめぇの精霊は星1一匹なのに、まるで星5を何人も知っているような……」


「し、知り合いが……そういう仕事しててぇ」


「そういう仕事ってなんだ!?召喚士クランでも作ってるのか!?」


「大きい声でおどかさない!!!!」


「アッハイ」



よろず屋主人、ダリアの一括で、大男は小さくなる。



「なあ兄ちゃん、良かったら儂らの仕事を手伝ってくれねえか?普通こんな事星1クラスの召喚士に頼むべきじゃあねえんだが……、あんたは何か違う……光るものを感じる気がする」


「ええ……」



チャコが横で、私は光るものを感じませんか!?とアピールしているが、

バルザはふっと目をそらす。


クロムは小さい声で、お前は既に輝いてるよと伝えると、ニコニコで椅子に座りなおす。



「難しいか……まあ、そうだな。無理は言えねえ。星4がやられてるとなっちゃあ、相手が星5クラスの召喚士でもおかしくねえ。

儂みたいにドラゴンを操る竜騎士は王都にもそう何人もいねえからな。応援を呼ぶのも大変なんだ……仕方ねえか」


バルザは非常に残念そうだったが、彼の中での諦めはついたようだ。

彼は持っていた革袋を漁ると、いくつかの素材を取り出して机に置く。


「この話は終わりにするか……。おいダリア、素材持ってきたが、これ買ってくれねえか」


机に置いた素材を見てダリアが鑑定を始める。

その素材を見た瞬間、クロムは立ち上がり、その勢いで椅子が後ろに倒れる。



「りょ、緑龍の鱗!!??」


「ああ。そうだが……ははーん?お前ら、もしかしてこれが欲しいのか?確かに加工すれば良い装飾品になるとかで、結構な値段になるもんな」


「いやっ…………はい。めちゃくちゃほしいです……」


「この素材、本当に売るのかい?」



何かを察したダリアが改めてバルザに問いかける。



「どうだ兄ちゃん、この鱗5枚で……儂の仕事を手伝うってのは!」


「…………ッ!!!」



ふと、クロムの脳裏に浮かぶ


存在する記憶――――。



何度やっても、何度やっても欲しい素材が落ちない地獄の無限周回。


寝落ちしてデイリーミッションをやり損ねた日、


物欲センサーのせいでほしい素材だけピンポイントで手に入らない日、


やっとの思いで手に入れた素材を、眠気からくるミスで売却してしまった日。



「あ……ああ……」



クロムにとって、欲しい素材が欲しい数量手に入る、というのは、

夢にまでみた状況である。


しかも緑龍の鱗は、星5クラスの風属性ドラゴンを倒した時に出るレアドロップアイテム。

今の手持ちがチャコ一人の彼にとっては、渡りに船どころではない。渡りに豪華客船だ。



「わ、わかッ……た……やらせて……ください!お願いします!」


「ハハハ!契約成立だ!頼んだぜ!兄ちゃん、そして兎のちっさい嬢ちゃん!」


「はい。よろしくお願いします」


「お任せください!!」



目をかけられているのはクロムの方とは言え、自分もカウントされている事に気が付いたチャコは、プルプルと耳を動かして喜びを表現していた。

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