婚約破棄の理由は『汚物の入ったスープを飲ませようとしたから』? 殿下、それはお味噌汁ですわ
リハビリ作品第5弾。
「第3回下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」参加作品の為、1000文字以内の超短編です。
「お前との婚約を破棄することをここに宣言する!」
第一王子たるクワァズ様がわたくしを指さし仰いました。
「理由をお伺いしても?」
「お前が私に変なものを食わせようとするからだ! 馬鹿にしている!」
「変なもの?」
「この前お前は、汚物の入ったスープを飲ませようとしただろ!」
殿下、それはお味噌汁ですわ。
タンパク質にアミノ酸、ビタミンミネラルなど沢山の栄養が期待できるミラクルフードを汚物だなんて。
「それに! 粘々したクサい豆を!」
それは納豆ですわ。
五大栄養素がすべて含まれたスーパーフードですわ。
「ねちょねちょした白い何かから取り出したクサい野菜!」
ぬか漬けですわ。
乳酸菌が身体の中をキレイにしてくれますわ。
「まったくもって気持ち悪いものばかりだ!」
全てわたくしが説明したにもかかわらず、殿下は聞く耳を全くお持ちになられませんでしたもの。まあ、理由は分かります。
「……殿下、その後ろのお方は?」
「君も知っているだろう。ジャンクフー家の令嬢カロリだ! 私がお前にいやがらせを受けていると知って同情し、私を支えてくれた!」
カロリ様は豊満な身体を揺らしながら殿下に密着されます。
殿下、それは色仕掛けですわ。
「成程。わたくしの代わりがそのお方というわけですね」
「か、代わりだと! 失礼な! それに、お前は一度たりとも触らせてすらもらえなかった! 美人だからと調子に乗るな!」
殿下、それが慎み深い令嬢というものですわ。
「しかも、カロリは異世界の知識持っている転生者なのだ!」
殿下、それはわたくしもですわ。
「食事を美味しくする魔法が使える!」
殿下、それはカロリーを増やす魔法ですわ。
「お前の魔法などモノを腐らせるだけだろう!」
殿下、それは発酵させる魔法ですわ。
「私はこんなに肌がツヤツヤに」
殿下、お前は脂ぎったデブですわ。
「かしこまりました。では、去りましょう」
わたくしが去ろうとすると後を追うように人々が付いてきます。
「お、お前らは!」
殿下、この国の宰相や将軍の皆々様ですわ。
「何故ソイツに?!」
殿下、ここは腐った国ですわ。では、ご機嫌よう。
その後、クワァズ様の国は政治腐敗も進みボロボロのようで、わたくしと夫である将軍が立ち上げた国に支援を求めてきましたわ。
「た、たすげでぐださい~」
殿下、それは『もう遅い』ですわ。
腐らせた食べ物は美味しく頂けても。
性根が腐ったお方は頂けません。
最後までお読み下さりありがとうございました。
久しぶりの婚約破棄令嬢モノは楽しかったです。
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