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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第六章 六期生(前)
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姉の代わりにVTuber 89


途中、リムに関してしゃべり過ぎ、危ない場面もあった穂高ほだかだったが、致命的な事が起きる事も無く、主に春奈はるなとは『チューンコネクト』の話題で、会話は途切れる事は無かった。


「――なるほど~~……、そんな事がシノブちゃんと、アノニスちゃんの間で起こってたんだね」


「背景知ると余計に面白いだろ? あの配信も。

つくづく、あの三期生の二人は相性が良いというか、コラボしてもハズレがないよな」


話題はどんどんとディープなものになっていき、コアなファンが話すような、そんな話題でも、穂高は話に付いていけ、春奈も、目指しているだけあってか、『チューンコネクト』の事は相当に熟知していた。


ただ、穂高はリムを演じるうえで、とことん『チューンコネクト』を調べ上げていた為、知識量に関して言えば、少しだけ、穂高の方が上回った。


そうして、『チューンコネクト』の事を話していると、時間もアッと言う間に経ち、気付けば、桜木高校の最寄り駅へとたどり着いていた。


駅に付いた事で、盛り上がっていた話は、一旦切り上げられ、穂高も、春奈も、帰りがここから異なってくる為、話題が少しずつ変わっていく。


「天ケ瀬君は下りだよね?

私、上りだから、ここまでだね……」


駅の改札付近へとたどり着くと、名残惜しそうに春奈が呟いた。


「――そうだな……。

まぁ、話したいことがあればPainパインでも連絡取れるし、また何か悩むことがあれば、いつでも連絡寄こせよ?」


協力してもらう立場だからか、春奈は少しだけ、穂高に遠慮を見せる節があり、穂高はそんな遠慮をさせないよう、改めて釘をさす様に、そう言葉を返した。


「――う、うん。

そうするよ」


(――――ん?)


名残惜しそうにも見えた春奈だったが、何かを伝えたいようにも、穂高からは見え、春奈の振る舞いから、穂高は違和感を少し感じた。


しかし、そんな違和感を追求する暇はなく、次の電車が差し迫る。


穂高は駅の時計を確認するし、改札へ向かおうとしたその時だった。


「あ、あの、天ケ瀬君ッ!」


何か言いたげに思えた穂高の予想は的中し、時間通りに訪れようとしている電車に、向かおうとした穂高を、引き留めるように、春奈は声を上げた。


「ん? どした??」


「――あ、えっと……、なんていうか……。

天ケ瀬君に聞きたいことがッ……」


穂高は特段嫌がる素振りを見せる事は無く、春奈は言いずらい事なのか、中々言葉は出てこず、春奈が本題を言おうとしたそのタイミングで、今度は穂高のポケットに入った携帯が鳴り出した。


「あ、悪い! ちょっと待ってくれ」


穂高は、リム関連で緊急の事があれば分かるよう、美絆みき佐伯さえき、『チューンコネクトプロダクション』の関係者の着信は、メールでも鳴るように設定しており、音が出せない所であっても、バイブレーションで通知が分かるように施していた。


そんな携帯が鳴り響き、穂高は春奈の言葉よりも携帯を優先させた。


穂高は春奈に一言、断りを入れ、携帯を確認するとそこには、姉である美絆のメッセージが届いていた。


美絆   穂高? 学校終わってる??

     学校終わったら、大至急病院に来て!

     佐伯さんもいるから!!


「――――は? なんで、急に…………」


美絆のメッセージを確認すると、穂高は困惑した表情で、自然と声が漏れ、美絆が大至急、穂高を招集する理由が全く見当もつかなかった。


ただ、こんなメッセージは過去に一度も無く、何かが起こっている事だけは、文章からヒシヒシと伝わってきていた。


「ごめん、杉崎!

話の続きはまた今度聞くから!」


携帯を見ていた穂高は顔を上げると、目の前で不思議そうに穂高を見つめる春奈に、謝罪をし、すぐさま病院に向かう為、来た道を引き返し始めた。


「――え、あ……、天ケ瀬君……」


春奈の声は穂高には届くことなく、険しい表情の穂高は走って、駅から出ると、近くに止まっていたタクシーに颯爽と乗り込み、呼び止める間もなく、その場から去っていった。


「――行っちゃった…………」


過ぎ去った穂高の方向を見つめ、春奈はポツリと呟いた。


(天ケ瀬君に、あの噂の話、知ってるか聞こうとしたんだけどな…………。

――でも、今日、普通に接してくれた感じを見ると、多分、知らないのかも……)


春奈は、学校でもイケイケなグループに所属しているせいか、嫌でも色々な話が舞い込み、その中には様々な噂話も交じっていた。


今日も、下校している際に穂高を見つけた時、聞いた噂話が脳を過り、穂高に声を掛ける事を躊躇した節が、春奈にはあった。


そんな、噂される春奈であったが、遠ざかる穂高を見て、このまま声を掛けない事の方が、後々に後悔が大きくなる気がし、些細な事ではあったが、こうした小さな積み重ねから、どんどんと穂高との距離が離れていくような、そんな不安を感じ、気付いた時には穂高に声をかけていた。


(――天ケ瀬君にこれ以上、迷惑を掛けちゃうかとも思ったけど……、やっぱり声を掛けて良かったな…………)


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――――来たぞ~~、姉貴~」


穂高は、タクシーを使い急いで姉の病室へと向かい、美絆のベットまで近づくと、到着した事を美絆に伝えた。


「あ、来たね……、穂高」


穂高が病室に付くと、美絆のメッセージの通り、佐伯の姿もそこにあり、何故か二人が纏う雰囲気が、少しだけ重いように、穂高は感じられた。


「なんだよ、あのメッセージ、怖いだろ……。

――リム関連でなんか、俺がやらかしたか??」


穂高はここに来るまででも、不安を感じており、一番可能性のありそうな、自分の失態を疑っていた。


「いや、穂高君は大丈夫。

リムはこれ以上に無いくらい上手くやれてるし……」


「え? じゃあ、一体何があったんですか??」


リム関連じゃないとすれば、至急、こうやって呼ばれる理由が、穂高には見当もつかず、顔を少しだけしかめ、佐伯に尋ねた。


「六期生に関する事よ……。

予知見よちみ チヨが炎上したの」


「――――は……?」


暗い表情で発せられた佐伯の言葉に、穂高は呆然と立ち尽くし、すぐに佐伯の言葉を理解することが出来ず、思わず声を漏らした。





誤字脱字報告ありがとうございます。

いつもすみません、助かっています。

後、ここからがようやく本題です(汗

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