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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第六章 六期生(前)
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姉の代わりにVTuber 87


「――何か、あきらの奴、変だったな~~?」


大貫おおぬき達に呼ばれた彰を見送り、再び、今度は三人での会話に戻ると、武志たけしは開口一番、違和感に感じていた事を話した。


「まぁ、色々あるんじゃないか? 楠木くすのきも……。

陽キャラ……、人気者故の悩み、みたいな?」


「確かに、生きずらそうではあるな」


瀬川せがわも彰の違和感には気づいており、何となくではあったが、自分の中で憶測のような推論を立てていた。


そして、瀬川の考えは、穂高ほだかにも理解できる部分があり、想像だけでは計り知れないが、心労は多そうに思えた。


「――でも、美人四人と交流できるんだぜ??

人間関係なんて安いもんだろ?」


「お前は相変わらずだな、武志……。

彰にその気が無かったら地獄だぞ??」


呑気に話す武志に、穂高は呆れた様に答え、三人は自然と彰の方へ視線が向く。


一瞬、暗い表情を見せた彰だったが、大貫のグループに本格的に混じると、そんな素振りは一切見せず、いつもの調子で楽しそうに、仲間たちと話していた。


「でもまぁ、楠木なら上手くやるだろ?

バスケ部でも、チームのまとめ役みたいなとこあるし、気も回るし。

少しギクシャクしてたって問題なさそうだけどな……」


「確かにな~~。

てか、何か悩みがあるならその内、俺らにでも話すでしょ?」


彰のいつも通りの様子を見て、少しは安心できたのか、瀬川と武志は、気にし過ぎだったと結論付けをし、彰の話題は一旦、終わりを迎えた。


そして、大貫の集団に視線を向けていた為か、武志は羨ましそうに、違う話を穂高達に振りかける。


「――それにしても、四天王の皆さんは今日も美しくて、可愛いよなぁ~~」


武志の惚気のろけあがった声に、穂高と瀬川は露骨に嫌な表情を浮かべた。


「そう思わないか? お前ら……。

四条しじょうさんは、やっぱりお嬢様気質なのか、気高さを孕んだ美しさがあるし。

菊池きくちさんは、守ってあげたくなるような可愛さ……。

杉崎すぎさきさんは、見た目がクールビューティだけど、時折みせる、女の子の仕草がギャップ萌えだし……。

一ノいちのせさんはッ…………」


「――おい、待てッ!

長いし、聞かされてるこっちは、不快極まりないからこれ以上はやめろ」


何度も聞いた事のある、武志の四天王への思いに、穂高は流石に最後までは聞いていられず、眉をひそめながら、武志の言葉を遮るようにして、声を上げた。


穂高の言葉に、瀬川は何も答えはしなかったが、首を縦に何度も降り、同意している意思を見せた。


「不快極まりないってなんだよ!

――大体、俺は悲しいよ……。

男子高校生なんて、普段こうゆう会話してるのが普通だろ??

――なのに、俺の周りときたら……、女に興味ない変態しかいない…………」


「変態呼ばわりとは失礼だな!!

興味無いわけじゃねぇよ! 武志みたいに、恥ずかし気も無く、大ぴらに話すのが嫌いなだけで」


「はぁ~~~?? 何、言ってんだ?

未だに大ぴらに話すのを恥ずかしがる高校生男子がいるか? 普通……。

ほんと、脳内中学生だな」


「――くッ!」


穂高は過去にも似たような事を、同い年の女子生徒から言われた事を思い出し、珍しく武志に言い負かされてしまった。


そんな、武志と穂高の醜い争いを見て、瀬川はため息を一つ付き、思い出したように、ある噂を穂高達に投げかけ始める。


「――あ、四天王で思い出したけどさ、天ケあまがせ、杉崎さんに何かした??」


「は? 何かってなんだよ……」


武志に睨みを利かせていた穂高だったが、瀬川の興味深い話題に、武志から視線を逸らし、まるで思い当たる節が無い様子で、瀬川に聞き返した。


「い、いや……、まぁ、噂で聞いたんだけど、何か、天ケ瀬が杉崎さんに言い寄ってるって……。

大貫と杉崎さんが良い感じの関係なのに、邪魔してるとかなんとか…………」


「はぁ??」


穂高は全く身に覚えのない噂に、思わず声を漏らした。


「なんで、俺が杉崎に言い寄らなきゃなんねぇんだ?」


「俺に言われても……。

あくまで噂だし、穂高も知らないくらいだし、まだそこまで大きくなってない噂だよ」


穂高は勿論、武志も驚いた表情を浮かべ、噂は知らなかった様子であり、噂を否定された瀬川は、少し困った様子で答えた。


「――まぁ、穂高と杉崎さん、最近仲良さげだったしな~~。

一時期は頻繁に一緒に下校してたもんなぁ~~?」


「いや、だからあれは色々あったんだよ。

俺だけでなく、杉崎とも交流の深い、女子バスケ部の生徒も軒並み否定してたろ??」


嫉妬している様子で話す武志に対して、穂高は必死に弁明した。


カグヤ騒動の一件の際、武志の言う通り、あまりに接点の無い穂高と春奈が一緒に下校していた事で、あらぬ噂を立てられたことがあったが、当人たちの否定と、春奈と仲が良い、同じ部活の女子生徒達が、強く反対した事で、事件の詳細は触れられることなく、何とか丸く収まっていた背景があった。


しかし、一度収まった噂話が、今度は形を変え、まだ影響力は弱かったが、確かに出回っていた。


(面倒な事になってきてんなぁ~~。

基本的には目立ちたくないし、変なところからリムの方に影響し始めたら最悪だな……)


穂高はまだ出回る前の、影響力の弱い状況で、噂話を耳にできた事を幸いと捉え、すぐさまに何とかしようと、そんな風に考え始めた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「彰君は、バスケ一択でしょ??」


穂高達のグループを抜け、いつものメンバーに合流した彰は、菊池きくち 梨沙りさからそんな言葉を掛けられていた。


「――うん、そうだね」


「よし! これでウチらのクラスの優勝は安泰だね!!」


にこやかに答える彰を見た梨沙は、自信ありげにそう告げ、忙しいそうに、今度はクラスを仕切るクラス委員の元へかけて行った。


元気に、楽しそうに球技祭の準備に奔走する梨沙の後姿を彰は見つめていると、今度は違う生徒から声が掛かる。


「彰~~、どうだった? 友達誘えたか??」


彰が声のする方へと視線を向けると、そこには若月と大貫の姿がそこにあった。


そして、声を掛けてきた若月の言葉に、彰の表情は一瞬だけ曇りがかった。


「いや、やっぱり嫌だって……。

クラスは優勝の雰囲気だし、足引っ張りたくないってさ」


彰は一瞬だけ表情が暗くなりはしたが、それを相手に悟られる事は無く、すぐにいつもの調子で若月の言葉に答えた。


「そっか~~、残念。

天ケ瀬、こないだのバスケの授業で、まぁまぁ動けてたから、戦力になりそうだったのにな?」


大貫の何気ない言葉に、彰は心がチクリと痛みを感じる。


(穂高を活躍する為の当て馬にしようとしてたのに、よく言うよ……。

別に、穂高はそこまでバスケが下手ってわけじゃ無いし、バスケ部の俺から見ても、動けてる方ではあるけど、運動神経が良い、大貫や若月には負けるし。

自分たちが出るつもりのバスケで、自分たちよりも実力の劣る生徒を引っ張り出したいだけの癖に……)


彰は若月と大貫が密かに話していた会話を耳にし、その内容が穂高を、自分たちが輝く為に、バスケに参加させるというものだという事を、知っていた。


初めて聞いた時は、驚愕したが、風の噂で、穂高が春奈と仲良くしているという話を聞き、すぐに合点がいった。


大貫と若月の事を心の底から、彰は嫌っているわけでは無く、一緒に居て楽しいと思える事も沢山あったが、こういった浅ましい部分は、二人に対して、一番嫌悪感を抱く部分だった。


(――――でも、そんな二人の思惑を知りながらも、穂高を誘った俺も同罪か……。

純粋に、楽しむ為に誘ってた、去年と一昨年とは大違いだな……)


大貫と若月に嫌悪感を感じる彰だったが、自分の中にも似たような醜さが芽生えてきている気がし、心の中で穂高に謝罪すると同時に、去年や一昨年と比べて、違う感情を持っている事を残念に感じていた。


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