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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第六章 六期生(前)
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姉の代わりにVTuber 86


 ◇ ◇ ◇ ◇


桜木さくらぎ高校 3年B組教室。


桜木高校は、6月に入り初め、今年は6月末頃に行われる、球技祭の準備が始まっていた。


桜木高校の球技祭の準備と行っても、ほとんどが生徒会や、部活動に所属する生徒が行い、一般性との準備といえども、することは限られていた。


そして、その数少ない内の一つである、球技祭の種目決めが、穂高ほだかの教室でも行われていた。


「――――はい! じゃあ、まず経験者から埋めてから~~」


教卓に立ち、クラス委員としての役目を果たす生徒が、ガヤガヤといつも以上に盛り上がる、教室内で声を放った、


しかし、クラス委員の声は聞こえてはいるものの、楽しみの生徒が多数いる為か、雑談が鳴りやむ事は無く、穂高もその声を聞きながら、憂鬱そうに黒板を見つめた。


「――――なにつまんなそうにしてんだよ、穂高」


机にもたれ込むようにして、黒板を見つめる穂高に、席が近い親友であるあきらが声を掛けてきた。


穂高は話しかけてきた相手が彰だと気付くと、態度は変えず、そのままの姿勢で会話を続ける。


「そりゃ、つまらなそうにもするだろ?

準備が大変な文化祭と、程々に準備がある体育祭に比べりゃ、楽な行事ではあるけどさ?

このイベントは、部活動をしてる奴と、クラブチームやら何やらで、経験がある奴が輝く行事だろ??

帰宅部所属の俺からしたら、当て馬にされるイベントででしかないだろ……」


三年生にもなれば、恒例行事の本質にも気づき始め、こと球技祭においては、輝くやつが如実に現れる行事でもあった。


「――そんなこと言って~~、いざ、本番になれば、楽しいだろ? 球技祭……。

去年や一昨年だって楽しそうにしてたじゃんか……」


「それとこれとは、話が別だろ?

純粋にスポーツは嫌いじゃないし、やれば楽しくなるんだよ……。

ただ、今年はそうも言ってられないような気がすんだよ……、何となくだけどさ」


穂高は憂鬱そうにしながらも、球技祭は楽しめており、去年も一昨年も楽しい思い出で終われていた。


しかし、今年に関しては言えば、嫌な予感を感じる部分もあった。


そして、その悪い予感はすぐに的中する事になる。


「――今年はさ? 俺らのクラス、総合優勝狙えそうじゃない??」


ざわつく教室の中で、一際盛り上がる集団の中で、一人の陽気な男子生徒がそう言い放った。


その何気ない言葉に穂高は、眉を顰め、陽気な男子生徒の発言に、他の生徒達も反応し始めた。


「だよね!? ウチラのクラス、バスケ部のレギュラー3人もいるし! そのうちの一人はエースじゃん!?」


「サッカーだってレギュラーいるし、野球もいるじゃんッ!?!?

男子、強くね??」


「女子だって、バレーとバスケのレギュラーいるよ!!」


穂高の悪い予感は現実のものとなり、楽しい球技祭の雰囲気は一点、優勝も狙えるという雰囲気に、変わりつつあった。


(――――まぁ、そうなるわな……。

っとなると、俺は足を引っ張らないよう、勝率の悪い競技に出るようにするか……)


クラスの優勝を狙う雰囲気を察し、穂高はあくまで楽しい球技祭で、このイベントを終える為に、あまり勝てそうにない競技へ、目星をつけ始める。


「――バスケが有望だぞ~~?」


「嫌だよ! 俺の性格分かってるだろ?

バスケはお前と、瀬川せがわ……、部員のアイツと、後は運動神経いい奴で固めろ」


長い付き合いである彰は、穂高の考えを推測し、ニヤニヤと悪い笑みを浮かべながら、穂高に言葉をかけ、そんな彰に対して、心の底から嫌そうな表情を浮かべ、否定した後、バスケ種目の参加候補になりそうな生徒を一人一人指さした。


「えぇ~~、お前だって有力候補だろ?

バスケやってたじゃん」


「遊びでな。

中学の時はテニス部だし、完全に候補から外れてんだろ」


穂高をバスケに誘う彰に対して、穂高は頑なにそれを拒否し、彰の誘いには断固として乗らない意思を示した。


「瀬川も穂高とバスケやりたがってたのになぁ~~」


「勘弁してくれ。

俺に恥を搔かせて殺す気か?」


穂高も流石に、学校を背負って立つ程の実力がある彰や瀬川と、一緒に球技祭に参加するのは気が引け、遊びでバスケをする分には構わないが、クラスの優勝を掛けて参加するのは、まっぴら御免だった。


「――――とゆうか、お前。

いつまでも、俺に構ってないで、席も自由に移動して良いって言われたんだし、いつもの大貫おおぬき達のグループに戻れよ」


「えぇ~~、そんなつれない事言うなよ~。

武志たけしも瀬川もこっちに来そうじゃん」


穂高は気を利かせ、わざとうっとおしがるように彰に伝えたが、彰はいつものようにすんなりと、大貫達の元には行かず、ごねては、穂高と近い自分の席へ留まった。


彰のそんな態度に、穂高は一瞬、違和感を感じたが、そんな違和感を分析する間もなく、いつもの面子である武志と瀬川が穂高の元に訪れた。


「――お? 彰はあっち行かなくていいの??

珍しッ……」


武志は気さくに、何の他意も無く、ただ思った事を素直に口に出し、瀬川も口には出さなかったが、少しだけ珍しそうに、彰を見ていた。


「――う~~~ん、まぁ、お呼び出し、かかってないし?

呼ばれるまではこっちで、お前らとだべろうかなって……」


「そ!

――で? 何するよ? お前ら」


少し困った表情で答えた彰だったが、そんな彰を武志は気にすることも無く、すぐに話題を変え、自分が今一番話したい、熱い話題を穂高達に振りかけた。


「――俺は、バレーに行こうかな……今年は」


「マジ!? 穂高、バレーやった事あったっけ??」


穂高は黒板を見ながら、目星をつけた競技を呟くように答えると、武志は高いテンションで、穂高に追及した。


「――――無いけど、一番、プレッシャー掛からないだろ??

経験者もこのクラスいないし、勝ち負けとか考えず、純粋に楽しめそう」


「かぁぁぁぁぁああ! 相変わらず、冷めてんねぇ~~! 穂高は……。

クラスが総合優勝を狙ってるっていうのに…………。

どう思うよ? 彰??」


「やる気ないよねぇ~。

もっと、クラスの事を考えて、活躍できる競技を取るべきだと、俺は思うなぁ~~」


明らかに熱量が低い穂高に対して、武志は穂高の考えを否定し、彰はこの状況を楽しむように、わざと煽るように発言をした。


「総合優勝狙ってんなら、足引っ張んない方が良いだろ?

そうゆう、武志は何するつもりなんだよ」


「は? 俺は、サッカーに決まってるだろ!!

カッコいいしな!」


「小学生か? おめーは……」


武志に聞いた事を後悔するような回答に、穂高は呆れた様にため息を付き、更に武志に言葉を掛ける。


「大体、サッカーやった事あったか? お前……」


「無いよ。

でも、どこに才能が眠ってるかなんてわかんないだろ??

小学生、中学生の時には発言しなかった才能が覚醒してるかもしれないし!!

俺だって、彰や瀬川みたいに期待されたいッ!! 注目されてぇよッ!!」


(――ダメだコイツ…………)


穂高は、相変わらずの武志に、完全に呆れかえり、武志から瀬川へ視線を移し、今度は瀬川に会話を投げかける。


「瀬川は、バスケだろ?」


「うん……。まぁ、俺が選ばなくても、クラスの雰囲気から、バスケにさせられるだろうけどね?

優勝狙ってるみたいだし」


武志に比べ、瀬川はそこまでこのイベントで、テンションが上がっている様子はなく、いつも通り飄々とした様子で、穂高の質問に答えた。


「まぁ、このクラスにいる後一人のバスケ部は、良く分からんけど、瀬川と彰がいれば優勝は簡単そうだしな。

クラスの皆が、他の競技を選ぶことを許さないか……」


「だろうね……」


穂高の言葉に、瀬川は苦笑いを浮かべながら答え、今度は彰が何かを話し始めようとした、その時だった。


「彰~~~! こっち来いよ~~!

種目決めようぜ~~」


穂高の席から離れた位置で話す、一際目立つ集団から、穂高達に交じる彰に声が掛けられた。


穂高は声のする方へと視線を向けると、そこには大貫達の姿があり、グループの中には春奈はるなの姿もそこにあった。


不意に向けた穂高の視線は、春奈に向けられ、春奈も彰を呼ぶ為か、穂高の集団に視線を向けていた為、穂高と偶然にも視線がぶつかった。


不意の出来事であったが、穂高は動じる理由なく、そのまま春奈に視線を向けていると、春奈は、何故か少し慌てた様子で、穂高から視線を逸らした。


春奈のその行動に、穂高は疑問を感じたが、追求する術は無く、すぐさま思考を切り替え、彰に声を掛けた。


「――――ほら、呼ばれてんぞ?」


穂高はいつもの事だったので、特に気にした様子も無く、彰に声を掛けたが、彰はすぐには返事を返さなかった。


「――――彰?」


「あ、うん……。

じゃあ、行ってくるわ」


少しの間、沈黙が流れた後、中々大貫の元へ行こうとしない彰に、穂高は再度心配そうに声を掛けると、彰は少し困った雰囲気の笑顔を浮かべ、呼ばれた大貫達の元へと向かい始めた。


「――――どうしたんだ? アイツ……」


大貫の元へ向かう彰を見送る中、普段は鈍感な武志も、長い付き合いの友人の事だからか、不思議そうに呟き、武志と同じ感想を、瀬川も穂高も感じていた。



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