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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第六章 六期生(前)
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姉の代わりにVTuber 78


佐伯さえきさん、今なんて……?」


驚きの言葉を聞いた穂高は、聞き返さずにはいられず、思わず佐伯の漏らした言葉の意味を聞き返した。


「――――あ……」


今まで機嫌が良かった佐伯は、急に我に返ったように言葉を発し、上がってきたテンションもみるみる下がっていく。


「リム達も先輩になるって…………」


「駄目ッ!! 聞かなかった事にしてッ!!」


佐伯が零した言葉を、穂高が復唱すると、佐伯は食い気味に、穂高に強く頼み込むようにして、言葉を発した。


「あちゃ~~……、私とした事が、まだ社内で秘密になってる事を、穂高君に漏らすとは……。

最近、色々と上手く行き過ぎていたせいか、気が緩んでた…………」


佐伯は穂高に漏らしてしまった事を激しく後悔しながら、呟いていたが、一度聞いてしまった以上、このまま詳細を聞かないわけにはいかなかった。


穂高は悪いと思いながらも、好奇心を抑えられずに、その話題に触れる。


「その……、さっきの話ってもしかして七期生?とかの話ですよね??

もう、七期生のメンバーが決まったんですか??」


六期生の正式なメンバーではなくとも、ここまで関りのある『チューンコネクト』の、新しいメンバーに興味が湧かないはずも無く、自然と声色も明るく、ワクワクとした気持ちを感じながら、質問をした。


「ま、待って待って!

私は何も言ってないから!!」


「今更、そんな言い訳通じないですよッ!!

何名なんですか?? 

二か月後って言ってましたよね? キャラクターとかももう仕上がってるんですか??」


穂高は質問する中で、こんなに興味を持っている自分に驚きつつも、沸き上がる好奇心から、宥める佐伯に引かず、続けて質問をぶつけた。


「い、いや、ホントに何もまだ言えないから~~!

デビューの正式発表だってまだだし、『チューンコネクト』のメンバーであったって、情報を漏らすのはマズいんだから!

――とゆうか、演者に漏らしてしまうのが、一番マズいのッ!!

何かの拍子で、配信中に公表されてない新メンバーの事を話しちゃう可能性が高いから!」


佐伯の弁明に穂高は、新メンバーの話はほぼ間違いなく真実であり、二か月後でなくとも近々に、リム達の後輩がデビューする予定がある事を確信した。


「大丈夫ですよ。

俺はリムの代打だし……、口も堅い方です。

誰にも言わないですから、教えてくださいよ……。

佐伯さんと姉貴は俺に借りもあるんですから、それぐらいいいじゃないですか」


穂高は汚いと思いつつも、自分がリムの成代わりをしている事を引き合いに出し、見返りを求める様に、佐伯に詰め寄った。


「はぁ~~……、話しちゃったのは私の方だし、しょうがないか…………。

絶対に他の皆には言っちゃダメだからね??」


「大丈夫ですよ!」


佐伯は念を押す様に穂高に伝えると、穂高は二つ返事で承諾し、少し急かす様に、具体的な話を促した。


「実は、七期生のオーディションを既にしててね?

一次審査までは終わってるの……」


「え……、一次ですか…………?」


佐伯の言葉を聞き、穂高は意外そうに声を漏らした。


業界にそこまで詳しくはない穂高ではあったが、二か月後にデビューという言葉を聞いていた為、いささか進行が遅い様にも思え、違和感を感じていた。


「二か月後辺りにはデビュー予定なんですよね?

詳しくないから分からないですけど、間に合うものなんですかね??」


「――それは…………、まぁ、スケジュール的には厳しいかな。

ただ、あくまで二か月後デビューを目標に動いてはいるよ」


穂高の質問に佐伯は答えずらそうに、言葉に詰まりながら話し、そんな佐伯の反応に、穂高は増々、違和感を感じた。


気になる点は多々あるものの、再度スケジュールに対して、穂高が言える事は特になく、違和感を感じつつも、その実態を上手く捉えられずにいた。


「キャラクターとかは決まってるんですか?」


「キャラクターねぇ~…………。

まぁ、1キャラだけは出来上がって来てはいるんだけど、もう一つはまだまだ、構想すら纏まってない」


「え……? 流石にマズいんじゃ…………?」


思った以上に難航している事を知り、穂高は今まで堪えていた感想を零した。


「――だから、まだ全然公表できる状態じゃ無いんだって……。

穂高君も、ホントに言っちゃ駄目だからね!?」


「言わないですよ……、流石に……」


思った以上に、まだまだ準備段階な、七期生のデビュー企画に、若干穂高は引き気味に答えた。


「そういえば、今回の七期生は何人ぐらいのデビューを予定してるんですか?」


「二人だね。

そこは一番初めに決まってた」


「へぇ~~、そうなんですか…………」


穂高は興味深そうに呟いた後、いつもより一層、狭き門になっている事で、このオーディションに応募していたであろう、春奈はるなの事を思い浮かべる。


(合格者二人って事は、杉崎すぎさきかなり厳しいんじゃないか……?

まだオーディションの結果を聞いてはないけど、言ってこないって事は…………)


穂高は早合点ではあったが、春奈がオーディションを突破できなかったのだと思い込み、応援していた節もあった為、残念に感じていた。


「――あッ、七期生と言えば、次の新人のキャラクターの原案は、lucky先生にやって貰う事に決まってるよ!

デビュー後は、親が同じだから何かと絡む事が多くなるかも……。

デビューしたらリムも先輩になるし、リムからそういった共通点を使って、コラボも持ち掛けるのも有りかもね。

先輩になるんだから、そういうところは穂高君から率先していかないとねッ!」


「いや、意気込んで俺に言われても…………」


二か月後のデビューは、あくまで目標、願望に近い、おおよその予定であって、本当のデビューは二か月よりも、期間が掛かる可能性は大いにあった。


そして二か月後、更にはその先の数か月後まで、穂高が姉の代わりを引き受けている確証は無かった。


その為、穂高は何とも答えずらそうに、言葉を詰まらせながら答えた。


「フフフッ、確かにそうね!

――何だかここ最近ずっと、穂高君と二人でリムを運営してきたから……、ついね?」


穂高に言われ、言うべき相手を間違えた佐伯は、静かに微笑みながら、言葉を返した。


その場しのぎの起用であった穂高だったが、成代わりを完遂させるために、佐伯と密に連絡を取り合い、情報共有、またリムの運営方針を相談していた為、不思議な信頼関係が、佐伯と穂高には築かれつつあった。


そんな信頼関係からか、つい、少し未来のリムの配信の計画までも、佐伯の口から出させた。


「まぁ、七期生の事は一旦置いておいて、近々のイベントとしては、五期生の一周年記念があるからね!

釘をさすようだけど、しっかり考えるんだよッ!?

リムとして何をするか……、そして六期生として何をするかをッ!!」


佐伯はその後も事務的な事を穂高に一通り伝えると、他にも仕事があるのか数分で手短に説明をし、ジスコードから抜けていった。


「ふぅ~~~……、疲れた……」


案件の撮影もあった事で、ジスコードを切ると、穂高は一気に疲労感に襲われ、自分が座る椅子の背もたれへ倒れこんだ。


「――――一周年記念か……」


体の力を抜き切り、腑抜けた穂高は、おもむろに呟いた。


「ジスコードでのやり取りは基本姉貴に任してるけど、姉貴がやり取りできるのは昼間だけだからなぁ~~。

まだ企画も決めきれてないし、間に合うのかどうか……」


誰もいない部屋で、穂高はポツリポツリと不安を零し、差し迫るイベントに危機感を感じていた。



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