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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第一章  成り代わりVTuber
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姉の代わりにVTuber 6


 ◇ ◇ ◇ ◇


穂高ほだかは、三年初日の学校の授業だったが連日の疲れもあり、午前中は全く頭が機能せず、全ての授業が睡眠時間とかしていた。


そうして、時間は簡単に過ぎていき、気づけば時間は12時を周り、お昼休憩へと突入していた。


「お~~い、穂高。

昼だぞ昼!」


穂高は昼休みが始まると同時に、四時限目でも取った睡眠の続きを行おうと机に突っ伏し、睡眠を取っているところで声を掛けられた。


「今日一日中ダウンだったな?

教科担任も今日はそこら辺、緩い人だったからいいものの、厳しい人だったらアウトだぞ?」


穂高に声を掛けた男は、小学生からの友人である武志たけしであり、武志は購買で購入したと思われるパンを頬張りながら穂高にそう続けていった。


そして、そんな武志の傍には、同じく共通の友人である瀬川せがわ 勇気ゆうきもいた。


武志と瀬川はお昼休みになるなり購買へと行き、目当ての物を手に入れると、机に倒れこむように寝ていた、穂高の席の近くへ腰を降ろしていた。


「昼飯も食わないで……、具合悪いのか??」


武志に続いて瀬川も声を掛けると、穂高はようやく机から体を起こした。


まだまだ疲れは残っていたが、朝方よりは睡魔はひどくなく、それなりに思考も回る程には元気を取り戻した。


「具合は悪くねぇけど……。

昼か……。 武志、俺の飯は??」


「はぁッ!? 俺はお前の母親かッ!?

そんなんねぇよ!!」


穂高は段々と意識がはっきりしてくると、睡魔に続いて今度は空腹を感じ始め、思い返してみると、昨日も配信の事で大したものを口にできていなかった。


「いや、まじで冗談抜きでパンくれ……。

腹減って死にそうだ」


「お前……、今日一日ほとんど寝てただろ……。

おらよ! このハズレパンやるよ」


穂高に呆れつつも、武志は自分が勝ってきたパンの中で一番、おいしくなさそうなパンを穂高に渡した。


「そら豆……、枝豆チーズ……?

まぁ、何でもいいわ……。 

――――普通にうめぇし……」


穂高はハズレとも言われたパンに、期待をした様子も無く、ただ空腹を癒す為に口に入れたが、予想以上のうまさに驚いた。


「瀬川~。 今日の授業のノート、というか、今学期始まって受けた授業のノート貸してくれる?

今週末、土曜と日曜に写すから、金曜貸してもらえるとありがたいんだけど……」


「お前……、新学期始まるなり物乞い凄いな…………。

あれくれ、これくれと……」


パンをすぐに食べ終えると、穂高は今度は瀬川に頼み事をし始め、そんな穂高に武志は呆れた様子で、言葉を零した。


「え? あ、まぁ、金曜日に貸すのは大丈夫だけど……。

天ケあまがせ……、大丈夫か?? 

成績は心配ないんだろうけど、お前、ちょっと変だぞ?」


185cm程ある大きな体を持つ瀬川だが、その巨漢に見合わず、気の利いた大人しい彼は、穂高を心配するように答えた。


瀬川とはこの高校で知り合い仲良くなったが、小学生からの付き合いである武志や楠木くすのき あきら程に気の許せる、穂高の良き友人だった。


彰同様に、瀬川もその高身長と、キリリとした男前な面で、女子から人気がある生徒だったが、異性が苦手な面もあり、そういった浮ついた話は無く、穂高や武志とつるむことがほとんどだった。


「んん? 別に変わんないだろ?

新学期はじめにコケただけで……」


「それならいいんだけどな…………」


穂高は少し様子が変だと疑られた事に取り乱すはずも無く、プライベートの事情など彼等が分かるはずも無かった為、いつもの調子で難なく答えると、心配していた瀬川はそれ以上追求する事は無かった。


「彰は相変わらず、イケイケグループに取り込まれたか??」


穂高はこれ以上自分の話をしても盛り上がらず、意味もないため、新しいクラスの話題へと話を移した。


「まぁな……。 去年もそうだったけど、あいつは今年もバラ色の青春を送ってるよ!

羨ましい限りだ……」


武志は口ではそう言いながらも、別に彰に対して何か思うところがあるといった様子では無く、ただ事実を自虐的に、嫌味っぽく答えた。


彰も別に穂高たちと仲が悪いといった事は無く、むしろ休日は瀬川も含め四人で遊びに行ったりする事も多かったが、それでもクラスの中では所属するグループが少し違い、モテる彼はイケイケなグループ、いわば陽キャラのグループに所属していた。


学生の世界にもいろいろとややこしい事情があり、波風立てず平穏に、学校生活を送れるように自然にそうなり、そうしているだけの事だった。


「ほんとにバラ色に思えるか?

こないだ遊んだ時も愚痴零してたろ、アイツ……。

俺はモテなくとも、のらりくらりと、こうして生活できてる方がいいけどね」


「強がりか? モテた方がいいだろ……。

モテる奴が言うそれと、モテない奴が言うそれでは、意味合いが変わってくるぞ??」


「うっせぇなッ!

瀬川はどう思うよ?」


穂高は100%本心でそう答えたつもりだが、武志の反論でこれ以上何を言っても強がりにしか聞こえる事は無く、定説にするためにもモテる瀬川へ意見を仰いだ。


「う~~ん、俺は、そもそも女子が苦手だからな……。

楠木みたいになりたいかと言われと微妙だな…………」


「ほ~~れ見た事かッ!

モテる奴でもこう言ってるぞ!?」


瀬川の答えはある程度予測できたため、少しズルくもあったが、穂高は勝ち誇ったように武志にそう言い放った。


「瀬川に聞くのは卑怯だろ……。

てかよ? そんな事よりも面白い事があんだけどさッ!」


「お、お前……自分から振っといて……。

なんだよ、面白い話って」


穂高はせっかく自分が優勢になったにも関わらず、サクッとこの話題を、武志に終わらせられ、悪態を付きながらも、これ以上モテない自分がこの話題をする必要もないため、武志の話題に乗った。


さらに、武志の話に乗ったのにはもう一つ理由があった。


武志は、うわさ話に目が無く、クラスや学校、近隣の噂話を色々と知っており、中にはデマも含まれてはいたが、それでも武志の話には興味深いものが多かった。


そして、穂高はこの新クラスの事を良く知らず、クラスの中の人の話題であれば、どんなことでも知りたいのが、本心としてあった。


「クラスでのこのなんだけどさ……。

このクラスに桜木高校四天王が、全員揃っている事は知っていると思うんだけど、その中の一人、杉崎すぎさき 春奈はるなに関する事なんだけど。

実はさ、その杉崎がある有名人なんじゃないかって噂立ってるんだよね……」


武志の話に、穂高はそこまで強い興味を持ちはしなかったが、仮にこの話を大多数の人が知っている時に、自分が話に入れないと思い、あくまで平穏に暮らす為にも、武志の話に耳を貸した。


「お前らさ、『チューンコネクト』って知ってる??」


勿体ぶるように話された武志の話を聞き、穂高は武志からまさか、その単語が聞けるとは全く思っていなかった為、驚きのあまり、盛大にむせかえった。


「お、おいおい、大丈夫か天ケ瀬?」


「わ、悪い悪い……、大丈夫……。

名前は聞いたことあるぞ。 続けてくれ、武志」


穂高がむせかえった事で、武志の話は一時的に中断され、瀬川は心配するように穂高に声を掛けたが、武志の話の続きが気になり過ぎて、穂高はすぐに落ち着きを取り戻すと武志に話の続きを急かせた。


「ん? おう……。

それでな? その『チューンコネクト』っていうのは、ZouTubeで活躍されるストリーマーなんだけども……。

アニメ絵のアバターで基本、声だけで配信してるんだけど。

どうやらその『チューンコネクト』のメンバーの一人に、声が似てるらしいんだよ」


武志の話から何となく、穂高は話の結末を予測していたが、まさかの噂話に穂高は声が出なかった。



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