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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第一章  成り代わりVTuber
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姉の代わりにVTuber 5


 ◇ ◇ ◇ ◇


穂高ほだかは3日ぶり、休日を合わせれば5日ぶりの学校に、登校していた。


連日の出来事により、ほとんど睡眠はできておらず、頭もシャキッとしないまま、学校に訪れ、今日は午後に初めてのライブ配信という事もあり、学校にはほぼほぼ寝に来ているようなものだった。


(やっべ……、そういえばクラス替えしてんだ……。

始業式も出てねぇし、クラス分かんねぇぞ……)


穂高が成替わりの課題を出されたのが先週の事であり、今週の週の初めから高校三年生としての学校生活が始まり、課題をこなす為とは言え学校を休み、始業式も出ていなかった為、完全に自分がどのクラスに配属されているのか分からなくなっていた。


「とりあえず、あきら辺りに……」


穂高は小さく呟きながら、スマホを取り出し友人に連絡を取ろうとしたところ、不意に強い衝撃と男性の声が穂高に投げかけられた。


「よっすッ! 穂高ッ!!」


穂高は声を掛けられると共に、じゃれつかれるように、軽くタックルをされ、突然の事と連日の疲れのせいか、衝撃を受け止められず、2,3歩あるき、よろめいた。


「ッ! いってぇな、彰……」


「お? わりぃわりぃ、そんな強くやったつもりは無いんだけどなッ!」


眠そうに目を細め、穂高は友人である彰へ視線を送りながらそう悪態を付くと、彰はあまり悪びれた様子は無く、ワハハと笑いながら穂高にそう答えた。


「……ったく。

まぁ、丁度いいわ、俺のクラスどこになったか、お前知らないか?」


「ん? あ、あぁ~~、お前ここ最近休んでたもんな?

何してたんだよ?」


「質問に質問で返すな……。

ただ単に体調悪かっただけ。

で? 俺のクラスは??」


「ほんとかよ~~?

クラスは今年も俺と同じだぜ? よかったな。ボッチにならずにぃ~~」


「うっせ」


穂高は慣れ親しんだ距離感で、時には互いに悪態も付きながら、教室に向かい始めた彰の後を追った。


穂高の友人である、楠木くすのき あきらは、小学生以来からの古い友人であり、高校まで同じな腐れ縁だった。


小学校からの友達でもあった彰だったが、穂高と特に趣味嗜好が合うといったわけでもなく、帰宅部な穂高に対して彰はサッカー部に所属し、更にはゴリゴリのエースでもあった。


容姿も良く、いわゆるモテ男であり、いまいちパッとしないような印象を持つ穂高とは、少し毛色が違った存在だった。


「新しいクラスどんなだ?

誰か知り合いとか居たりすんのか?」


「んん? ん~~?

二年の頃同じで仲良かった奴だと、武志たけしだとか、瀬川せがわとかは同じクラスだぞ?

女子で言うと……」


「あぁ~~、女子はいい。

接点もねぇし」


「お前なぁ~~、思春期の中学生みたいなこと言ってんなよ……。

カッコ良くないし、モテないぞ~~?」


彰の言葉を遮るようにして話す穂高に、彰はため息交じりにそう答えた。


「はぁ~~? 女に媚びうる方がだせぇだろ?

クラスの可愛い子にへこへこと……。

それに頑張っても俺は女子にモテない!」


穂高ももちろん男性ではある為、女子からモテたい願望はあったが、それでも高校生活を二年も送り、そういった甘い青春に一度も巡り合った事が無かった為、完全にそっちの方面は諦めていた。


穂高のあまりにもきっぱりと、ハッキリとした物言いに、彰は何も反論することは無く、ただため息を漏らした。


「それにしても、武志と瀬川も同じクラスか~。

今年もあいつらとずっとつるんでそうだな」


「おう! そうだな!

また一年。 よろしくな!」


穂高はこの忙しい一週間の中、唯一心から嬉しいと思える報告を聞き、心が和らいだ。


「あッ!! そういえばさッ!

やべぇのよ! ウチのクラス!」


「なんだよ急に……」


三年生で予定されているイベントを思い出し、それらを彰達と向かえる事に胸を躍らせていると、彰は思い出したように声を上げ、楽しい妄想に耽っていたところを邪魔された穂高は、怪訝そうな表情で呟いた。


「いや、ウチのクラスな? なんと驚異の桜木さくらぎ四天王の4全員が同じクラスなんだよ!!

スゲくね? 4人全員だぞ!?

他のクラスの奴らからめちゃくちゃ羨ましがられたぞ?」


穂高と彰の通う桜木高校には、今現在、桜木四天王と呼ばれる美少女4人が在学していた。


誰かが付け、呼び始めたか分からないその絶妙にダサい呼び名は、いつの間にか定着し、桜木高校でその四人を知らない者はいなかった。


通称はダサいが、その4人は一括りにされ、名前が付く程はあり、穂高から見てもその4人は別格のようにも見えた。


「うげッ……、面倒そうなクラス…………」


「はぁ? どこがだよ!

1人でも嬉しいのに4人だぞ? 最高じゃねぇか!」


穂高はこのことにより、クラスでの女子の発言力が強くなりそうな、そんな予感を感じ、増々クラスで居心地が悪くなるのではないかと考えた。


(まぁ、俺みたいなパンピーが関わることも無い存在だろうし、荒波立てず、大人しく一年過ごそう……。

それに、学校生活を楽しむ余裕があるかどうかも、今年は分からねぇしな……)


「高校生活最後の一年ッ!!

幸先いいよなッ!? バラ色だぁ~~ッ!!」


隣でアホらしく喜ぶ彰に、穂高は溜まりにたまった疲れを吐き出す様に、大きなため息を付き、これから先の学校生活を改めて考えると、気分は最悪だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


ガヤガヤと楽し気な会話が飛び交う、3年B組。


天ケ瀬 穂高と楠木 彰が最後に送る高校生活のクラスがそのB組だった。


「あッ! 彰くんッ!? おッはよ~~!」


「おうッ!」


彰が一足先にクラスへ入ると、彰の姿を確認してか、男女問わず、彰に気分の良い挨拶を始めた。


3日も休んだ穂高はそんな彰の反応を見て、一気に気分が憂鬱になり、今すぐにでも家に帰りたく思ったが、今日も休めば、おそらく明日はもっと、学校に行きたくなくなるため、穂高は腹を括り、教室へと入った。


彰が入ってから間もないためか、教室に入る穂高に何人かの生徒は気が付いた。


穂高の姿を確認するなり、何人かの生徒は驚き硬直したが、すぐにその硬直は解け、自身の周りの気付いていない生徒に穂高の存在を話し始め、穂高は一気にクラス中の視線を集めた。


ひそひそと周りで話しながら、穂高を見つめる、穂高にとっては凄く気持ち悪い瞬間だった。


「お、おはようございま~~す……。

転入生ですよ~~……、なんちって……」


穂高はどんどんと声は小さくしぼんでいき、最後にはかき消えそうなくらい小さな声で、そう言い放った。


もちろん、久しぶりに学校に訪れ、穂高を知らない生徒も多くいたため、小ボケも受け入れることは無く、冷ややかな空気と冷たい目線が穂高に突き刺さる。


(さ……、最悪だ……。

想定できる中で、一番最悪な高校3年生の始まりだ…………)


ウケを狙ったつもりでもないが、場を和ませる気の利いた一言も、思い浮かぶはずも無く、何か言わないとと続けた言葉はだだスベりし、一瞬にしてクラスの痛い奴と化した。


それに輪をかける様に、穂高の事を知っている、特に男子生徒はクスクスと馬鹿にするように笑っており、身内でウケた事を、クラス全員に向けて披露した痛い奴とも思われかねなかった。


何を想定してもただ寒い、こんな卑屈な事を思っている生徒が仮にいなかったとしても、穂高はそれを想像してしまう程に心に傷を負い、精神的なダメージを受け、そそくさと逃げる様に、自分の席を尋ねる為、知り合いが集まるグループへと向かった。


「お前……、高校3年生の生活棒に振る気か?」


知り合いの多くいる男子生徒のグループに逃げ込むと、先程のだだスベリを見てクスクスと笑っていた一人、穂高の友人である松本まつもと 武志たけしが穂高にそう声を掛けた。


「あぁいう時ってなんていうのが正解なんだよ……」


「始業式初日から登校するのが正解なんだよ」


真っ青な穂高に対して、武志はケタケタと笑いながら答え、武志を含んだ他の男子生徒も穂高を笑い者にされていた。


そんな穂高の最悪な幕開けの高校生活とストリーマーとしての生活が始まった。



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