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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第四章 カグヤ騒動
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姉の代わりにVTuber 47


穂高ほだかの質問を最後に、春奈はるなは目を点にさせ、驚いた表情を浮かべ、二人の間には沈黙が流れていた。


穂高からしてみれば、春奈の様子を見る限り、十中八九、春奈がストーカー被害にあっている事が確信できたが、質問を問いかけてから彼女の言葉をじっと待っていた。


「――え、えっと……、誰かから聞いたの?」


春奈はいつも通りに振舞おうとはしていたが、動揺しているのは穂高から見ても分かり、微かに体が震えているようにも見えた。


「何となく予想しただけ……。

女子バスケ部にも聞いたけど、誰も何も教えてはくれなかった」


「――そ、そう…………」


穂高は正直に春奈の質問に答え、この件に付いては慎重に、彼女が話してくれる素振りを見せるまでは、自分からは追及しないよう努めた。


「まぁ……、ここまでハッキリと聞かれちゃしょうがないよね……」


穂高からの話題に、春奈は考えが纏まった様子で一言呟き、穂高に話す覚悟を決め、春奈の呟いた言葉を穂高は聞き逃す事は無く、そこから詳細について尋ね始める。


「いつからなんだ? ストーカーされ始めたのは?」


「――ハッキリと何日とかは答えられないけど、私のある噂が流れ始めた頃だと思う……」


「噂…………、和歌月わかつき カグヤか?」


穂高は今日、この日までに感じた違和感と疑問を繋ぎ、答え合わせをするかのように春奈に尋ねていった。


「うん……。『チューンコネクト』のカグヤちゃんの声に似てるって噂が流れて、気付けばその噂はどんどんと大きくなって、SNS何かでもちらほら流れてるみたいで…………」


「周りには? 親とか先生には相談してるんだよな??」


段々と表情が暗くなっていく春奈に、穂高が一番聞きたかった質問を春奈に投げかけた。


「――それはね……? でも、先生にしか相談はできてない…………。

ほら、親とかにはさッ? 迷惑とか掛けたくなくて……」


「駄目だ。 今すぐ相談しろ」


春奈の気持ちが分からないわけでは無かったが、穂高はそれを否定した。


「――あ、アハハハ……、そうだよね…………。

今日、親に打ち明けるよ、だから安心して?

あ、天ケ瀬君、ちょっと顔怖いよ……」


当然だが、春奈はあまり話したくない話題の為、少し茶化そうと付け加えて話したが、穂高はそのノリに乗ることは出来なかった。


「そりゃ、顔も怖くなる。

本当は今、ここで親に連絡させたいけど、杉崎すぎさきの心の準備とかもあるだろ……。

今すぐとはもう言わないけど、必ず今日、相談しろよ?」


「――うん、分かった。 約束するよ」


春奈の返事を聞き入れ、穂高は少しは安堵し、ふぅっと息を吐いた。


しかし、穂高は少しは安心できたかもしれないが、問題の根本的な解決には至っておらず、春奈の不安が取り除かれたわけでなかった。


一瞬でも自分だけ安堵した穂高は、それに気付き、依然として不安の中にある春奈に、何かできる事は無いかと考え始めた。


「先生とかは、何か対策とかしてるんだよな?」


自分にこの問題を解決できる程の力を持っていない穂高は、自分を情けなくも感じながらも、春奈の安全について今一度整理する為、続けて質問をした。


「――うん。 一応、放課後の巡回の強化と万が一の事を想定して、警察とかにもそういった人物がいる情報を流してくれているみたい。

部活の顧問の先生も、この騒動が治まるまでは、部活に出なくてもいいって言ってくれてるし……」


(巡回か……、でも、それだけじゃ正直不安は拭いきれないよな…………。

詳しくないけど、ストーカーとかに関しては、実害があるまで下手に警察とかも動けないとか、よく聞く話でもあるしな……)


春奈の話を聞き、穂高はより一層難しい表情へと変わっていき、そんな穂高を逆に心配してか、春奈は気遣う様に話を続ける。


「――あッ、で、でも! 多分、もうストーカー行為もそんなに長くは続かないと思うよ?」


「どうしてだ??」


「――ほら、所詮は噂から起きたストーカーだったわけだし……。

カグヤの中身が私じゃ無い事なんて、すぐに分かると思う」


穂高は春奈の考え方に全面的に同意できるわけでは無かったが、話している事に一理あるのは分かった。


「楽観的過ぎると思うけどな……。

そもそも、時期が一緒なだけで、ストーカーの方の狙いが本当にカグヤ関連で、杉崎を狙っているのかも分からないだろ?

杉崎自体に興味を持ってストーカーしてるのかもしれないし……」


「それはないよ」


穂高の考えは簡単に断言できる程の意見では無かったが、春奈は真っ向からバッサリと、その考えを否定した。


そこまで自信満々に断言できるのか、穂高が不思議に思っていると春奈は続けて答え始める。


「一度、直接会って言葉を交わした事があるんだ」


「――え…………?」


春奈の思わぬ告白に、穂高は驚きのあまり思わず声を零した。


「ストーカーされ始めてるなって気付き始めた頃……。

部活終わりの下校中、一度だけ一人っきりになっちゃったタイミングがあってその時に、あっちから声を掛けて来たの。

その時にハッキリと「君って、和歌月 カグヤなの?」って聞いてきて……。

私……、怖くなってすぐにその場から逃げちゃったから、その他の事は分からないけど、目的がカグヤちゃんなのは分かる」


「気持ちわりぃな……」


穂高はこの話をしている中で、何度も感じていた嫌悪感をハッキリと口に出し、今まで以上に生々しい話に、苛立ちすら感じていた。


「――そんなこともあって……、噂さえなくなればこの問題は解決できると、そう思ってるんだ。

まぁ、否定しても否定しても、中々噂っていうのは消えないんだけどね?」


春奈が本当に困っているのは、考えるまでも無く容易に想像できたが、そこまで深刻に見せないよう軽く話し、乾いた笑みではあったが、笑みを浮かべながら話した。


(噂……、噂をどうにかできれば問題ないのか…………?

――――大体、なんでこんな面倒な事に杉崎が巻き込まれてんだ??

こいつはこんな問題を気遣う余裕も、時間も無い程に夢を追いかける事、青春を謳歌する事で忙しいのに…………)


仮にも数回交流もあり、間接的にではあったが、春奈に穂高は恩みたいなものもあった為、理不尽な事で振り回されている彼女の原状に納得いかなかった。


そして、必死に考えうる打開策の中で、有効だと確信できるものは無かったが、穂高は自分が力に成れそうな事が思い浮かんだ。


「――――なぁ、噂を無くすことに関してなんだけど……。

他の噂を大きくして広めるってのはどうだ??」


「――え?」


穂高は自分の思いついた作戦を提案する事に少し抵抗もあったが、それを春奈に伝えられずにはいられず、思いついた作戦を春奈にへと話した。


「――――えぇッ!? 恋人のフリッ!?!?」


穂高が思いついたことを全て、春奈へと伝えると、穂高は予想していたが、その通りに春奈は大きな声を上げ驚いた。


「良い方法なのかどうか分からないけど、カグヤの噂がガセだったって気づいた時、杉崎にも男の影がちらほら見えれば余計諦めるだろ?

――とゆうか、まず、一人で帰るのが危ない。

別に、相手役が俺である必要は無いから、杉崎の頼りになる男子を選んで貰って問題無いし。

彼氏役の人にもお願いして、それっぽい素振りを見せながらも、当事者たちの口からは、その関係について断言する事を無くしていけば、あやふやのまま上手く噂も出回るだろ?

噂の元凶である桜木高校を抑えられれば、段々とそういった話もなくなるだろうしな?」


「そ、そうかもしれないけど……、でも、ストーカーの一件が解決した後は??

違う噂で今度は困るんじゃ…………」


穂高の話を素直に聞いていたが、その作戦についての疑問はいくつか浮かび、春奈は不安げに穂高へ尋ねた。


「彼氏役、杉崎共に恋人だって断言しなきゃ問題無いだろ?

そういった雰囲気が出ていた男女でも、いつの間にか疎遠になってたら周りも察するだろうし……。

変に勘繰られたりするのは仕方ないかもしれないけど、雲隠れはできる。

――とゆうか、こんなの良くある話だろ??

恋人関係になりそうだった異性が、気付けば自然消滅してた……なんて…………」


「ま、まぁ……、そうなのかもしれないけど…………」


穂高の言っている事は、妙に説得力があり、納得できるところもあったが、全てに同意することはできず、全面的に賛同する事は出来なかった。


「恋人のフリとかは無理だよ。

――異性と付き合った事無いし…………」


「意外だな?? 四天王とか言われてるくらいだから、一度や二度あるものかと…………。

――んん~~、まぁでも、恋人のフリをわざわざ学校でまでもする必要は無いか……。

ストーカーに見せつけれれば、良いわけだし………」


違う噂でカグヤの噂を相殺しようかと、穂高は考えてもいたが、乗り気でない春奈を見て考えを改め始めた。


「――じゃあ、せめて。

今週と来週あたりくらいまで、一緒に下校できる異性を見付けて、恋人素振りをストーカー相手に見せるのはどうだ?

気になる人でも、既に相手がいれば諦めるだろ?」


「そ、それは……、そうかもね」


効果が薄い案だという事は、穂高も春奈も直感的に感じてはいたが、自分たちが出来うるであろう対策は、これぐらいしか出来なかった。


(ここ二日……、杉崎の反応をみれば、二日とも多分付けられてる……。

俺とじゃそう見えないのかもしれないけど、二日も同じ異性と下校してりゃ、どんなに鈍い奴でも察するだろうし、杉崎の事が好きであっても普通諦める。

――第一、一度会話を持ち掛けて拒絶されているのにも関わらず、つけ回すなんて、どう考えても異常……。

準備はある程度、必要になるかもしれないけど、もう一つ……。 思いついた案を試すか……)


「なぁ……、さっきの彼氏役の件…………。

まぁ、一緒に下校するだけだけど、俺にやらせてくれないか?」


穂高はストーカーを撃退することを決意すると、その為の行動を自然と起こし、春奈に提案を持ち掛けた。


春奈が心配だという気持ちも勿論、穂高にはあったが、それよりも、せっかくVtuberを目指す事を決めた春奈の邪魔をするストーカーに、むかっ腹が立ってしょうがなく、強引でも何でも、一日でも早くこの問題を解決したかった。





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