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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第四章 カグヤ騒動
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姉の代わりにVTuber 40


「やっぱり天ケあまがせ君も知ってたかぁ~…………」


穂高ほだかの問いかけに、春奈は困り顔で呟き、答えた。


「結構噂になってるけど、大丈夫?

学校内はもちろん、学校外でもちらほらと噂されてるみたいだけど……」


「う~~ん……、ちょっと、私も困ってるんだけどね~~。

噂は否定してるし、これ以上はどうしようも無くって…………」


和歌月わかつき カグヤだっけ?

そんなに似てるかな??」


穂高は今、何度か春奈と会話をした中で、改めて自分の知るカグヤとの声を照らし合わせ、そんな風に呟いた。


曲がりになりにも、モノマネをしている穂高にとっては、カグヤと春奈は似ているとは思えず、確かに声のトーン等は近くはあったが、それでも口調や話し方のリズムなど、相違点の方が多く、大きく感じていた。


「流石に自分じゃ分からないよ。

――でも、似てないと私も思うけど…………。

皆には似てるって言われるし、そうなのかも」


(和歌月 カグヤって二期生だよな……?

二期生って事は、それなりに活動も長いし……、普通に考えれば現役高校生なんて事あり得ないんだけどな。

ましてや、疑われてる本人も否定してるし)


穂高は考えれば考える程、この噂の信憑性が無いところが見え、ただ声が似ているというだけで、ここまで真実のように伝わる噂を恐ろしくも感じた。


「俺も噂の否定に協力はするけど、面倒だったらあきらとかにも否定するのを手伝ってもらえばいいんじゃない?

桜木さくらぎ四天王は言わずもがな、昼休みとかによくつるんでる彰や、大貫おおぬき達も人気者だし、率先して否定してって貰えればすぐに噂は無くなるんじゃない?」


かなりごり押しの対策ではあったが、穂高はそれが今考えられる案では有効だと思い、学校では人気者、陽キャラであり、スクールカースト上位の力を使えばあっという間のようにも思えた。


「う~~ん、流石にそれは~…………」


穂高の提案に春奈は微妙そうな表情を浮かべ、唸るように呟いた。


そして、放課後になって数分。


二人が話し込んでいると、唐突に学校のチャイムが校内に鳴り響く。


「あ…………、もうこんな時間……」


話の途中で遮られた春奈は、チャイムに気が付くと、教室に備えられた時計を見て呟いた。


二人の聞いたチャイムは、放課後の部活動が本格的に始まる時間になるチャイムであり、意味合いとしては、どこの部活にも所属していない生徒、あるいは最終のホームルームが長引いている教員に時間を知らせる鐘だった。


このチャイムを聞けば、特に大きな用事の無い教員は、そそくさとホームルームを閉め、部活所属していないく、放課後教室でただ友人と会話をしていた生徒は、帰ろうとしたりしていた。


授業の始まりや終わりを告げるものより重要性は低いが、昔からそのチャイムは桜木高校で鳴っていた。


「――そろそろ帰るか……。

それじゃあ! このディスクは今日見て、明日には返すよ」


穂高は今日もいつも通り、リムの配信が控えているため、帰宅し準備の時間があり、区切りの良いタイミングでそれを切り出した。


「あ……、ちょっと、待ってッ」


穂高がそう言いながら、教室から出ようと歩き出すと、咄嗟にその行動は、春奈に止められた。


帰るのを止められた穂高は、素直に春奈の方へと振り返り、春奈は何故か、再び恥ずかしそうに、そして何かを言いずらそうにしていた。


「あ、あの~~さッ……、きょ、今日なんだけど、もう一つお願いがあってさ……」


不思議そうに春奈を見つめる穂高に対して、春奈は今にも恥ずかしさで爆発しそうになりながら、穂高にソレを伝えた。


「理由は聞かずに今日だけ…………、一緒に下校してくれないかな?」


 ◇ ◇ ◇ ◇


(な、なんでこうなった…………)


桜木高校からの帰り。


穂高は春奈に頼まれるがまま、断る理由も思いつかなかった為、春奈と共に下校していた。


「――――ご、ごめんね……? ほんと…………」


肩身が狭そうに、春奈は申し訳層にしながら小声で穂高に謝った。


「い、いや……、俺は別にいいんだけど……、そっちはいいの??」


穂高と春奈。


学校での立場は、傍から見ればかけ離れており、二人で下校をすれば、変に誤解される可能性も容易に考えられた。


「わ、あたしは全然大丈夫。

それよりも、天ケ瀬君の方に迷惑が掛かったちゃうかも……」


春奈はそう言いながら辺りを見渡し、まだまだ桜木高校から近い場所だった為、同じように下校している生徒の目を二人は引き、ただでさえ四天王とまで呼ばれる春奈は、余計に目立ってしまっていた。


(こりゃ、明日は地獄かもな…………)


目撃者があまりにも多く、春奈がかつてそういった事で噂を流した事も無かった為、明日は四方から質問攻めに会うであろう事を穂高は覚悟し、またその状況を思い浮かべれば思い浮かべる程、気分は憂鬱になった。


「頼まれ通り、理由は聞かないけど、俺で良かったのか?

これこそ、彰とか大貫とかに頼んだ方がいいだろ?」


「――――え、えぇ~~と……。

ちょっと、彰とかだと洒落にならない噂になりそうで……」


穂高の質問に対し、春奈の答え方はいささか抽象的すぎる答えだったが、穂高は春奈の言わんとしている事が、すぐに理解できてしまった。


「あぁ~~、何となく分かった……。

クラスの人気者同士だしな…………、傍から見れば理想そのものだし、こっちの噂の方が否定しても信じてくれ無さそう」


春奈は気を使って、わざわざ遠回しに穂高に伝えたつもりだったが、それはむしろ逆効果となり、客観的に見れば、増々穂高は惨めな様にも思えてしまっていた。


「ご、ごめんッ! ほ、ホント他意は無いんだよ!?

ただ、その頼みやすいというか……、周りの圧力もあるし…………」


春奈が気を使えば気を使う程に、穂高は微かに心にダメージを負ったが、それでも仕方がないと割り切ることは簡単だった。


「大丈夫だよ。

そこら辺は慣れてるし、変に気を使わなくても……。

というか、それよりも部活はいいのか? 確か、バスケ部だったんじゃ……」


「え? あ、あぁ~、いいのいいの!

今日はオフだし、桜木高校のバスケ部は残念ながら強豪じゃないしね……。

皆、それなりに自由にやってるから」


(自由にね…………。

結構、遅くまで練習してるイメージだったけど、大会の優勝目指してるとかってわけじゃないのか……)


「――ふ~~ん、そうゆうもんか」


穂高は少し違和感に感じる事もあったが、変にこれ以上追求することは無く、簡単に返事を返すとこの話題は途切れた。


そうして、お互いに上手く話題が見当たらず、数分間、無言でただ歩いている時間が続いたそんな時だった。


隣を歩く春奈はビクリと、何かに驚いたように体を跳ねらせ、その場に立ちすくみと、自信が歩いてきた道を振り返った。


もちろん、そんな春奈の行動に穂高が気づかないはずも無く、自分も立ち止まり、心配そうに春奈を見つめた後、春奈が振り返った視線の先へと、自分も視線を持っていった。


(――――何もいない……)


春奈が振り返った視線の先には、誰もおらず、特に変わったような様子も見受けられなかった。


「どうした?」


穂高は視線の先を確認すると、ようやく春奈へ声を掛けた。


「え……? あ、あぁ、いや……、何でもないよ!?」


穂高の質問に春奈は一瞬表情を暗くさせたが、すぐに取り繕う様に笑顔で、心配させないように答えた。


「――――そうか」


下校途中。


春奈のそんな行動は、この一度きりだったが、穂高はそんな春奈の行動が妙に気になっていた。


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