姉の代わりにVtuber 225
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ハムスターランド カントリーエリア
ハムスターランドの入場ホームから、最奥の位置にあるエリアに、穂高と聖奈は、訪れていた。
入場直後にある、様々なお土産屋から、園内使用のグッズとして、最も人気の高い、キャラクターのカチューシャを身に着け、既にテーマパークに馴染んでいる穂高と聖奈は、腕を組みながら進んでいた。
「――ぶッ、フフフッ!
に、似合うねぇ~~、穂高君! そのカチューシャ」
会話をしつつ、園内を歩いていた穂高達だったが、既に、身に着けて数分が経過しているというのに、聖奈は思い出したかのように、穂高の現在の姿を見て、噴き出したように笑った。
「あのなぁ~~、俺だって着けたくて着けてるわけじゃ……、
――――もう外す」
楽しそうに笑う聖奈が不満なのか、穂高は心底、不服な表情を浮かべ、少し苛立った様子で、カチューシャを外そうとする。
「あぁッ! 待って待って! 外さないでよ~~。
ホントに似合ってるんだからさ~~」
頭に手をやる穂高の行動を制し、聖奈はカチューシャを外すのを阻止した。
「それに、今日は埋め合わせでしょ~~?
何でもいう事聞くって約束じゃん~~。
――ね? ほら、ウチとおそろだし、一人で着けてたらハズいしさぁ~~」
埋め合わせで来ている穂高は、その事を言われると、強気に出る事が出来ず、溜息を吐き、聖奈に従った。
「別に、カチューシャ着けるのはもういいけど、あんまり笑うなよな……」
「おけおけ、気を付ける」
疲れた様子で話す穂高に対して、聖奈は口では言うものの、既に笑みが零れており、反省した様子は、微塵も見えなかった。
そして、聖奈は一度解かれた腕を、再び組み直し、穂高の隣に並ぶ。
「――これも、どうにかならないのか??」
「ならな~~~い。
良いじゃん? 今二人っきりだしッ!
――てか、ウチはデートのつもりで、今日来てるんだしさぁ~~」
腕組にも納得いっていない穂高は、止めてくれるよう促すが、聖奈は止める様子無く、むしろ強く自身の方へと抱き寄せ、今日の思いを口に出す。
どこまでも、直線的な聖奈の行動と言論に、穂高はタジタジであり、早く他の者達と合流したいと、そのことだけが頭に過る。
「ねぇ~~えッ! 穂高君。
こ~~んなにアピールしてるのに、ウチって、まったくもって脈無し~~??
もうわざわざ口に出したりしないけどさぁ~~? 結構、ウチ頑張ってると思うんだけどぉ~~??」
聖奈は核心的な事は言わなかったが、今までの行動と言動で、ほぼほぼ答えは出ており、鈍い穂高と言えど、それに気付かない程、鈍感では無かった。
「――いやいや、頑張られても…………。
もっといるでしょ? それこそ今日会った奴らとか」
「今日会った? 楠木達??
――いや~~、イケメンだとは思うけど、趣味じゃないし……。
てか、話し逸らすなしぃ~~」
聖奈は膨れっ面をしながら、不満を口にした。
「まぁ、そっちが飽きるまでは、付き合うよ。
とりあえず、今日は約束だしな」
「――もう、どんだけ自己評価低いっていうか、興味無いわけ~~??
これじゃあ、次進めないじゃんッ!
今、行動起こしたって、結果が目に見えてるしッ!!」
聖奈は、赤裸々に話しながらも、肝心な事は、具体的に言葉にする事無く、続けて不満を漏らしながらも、穂高と共に会話を続けていった。
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ハムスターランド ウエスタンエリア。
別行動の進捗を元に、パインで連絡を取り合い、集合場所には、ウエスタンエリアが選ばれた。
決められた場所に続々と、春奈達は集まっていき、最後に、穂高と聖奈が合流をし、ようやく全員が揃った。
「揃ったね!
それじゃあ、まずは何から行く??」
集まった面々を見渡し、場を仕切るように瑠衣が声を上げた。
そして、そんな瑠衣の声掛けに対し、元気よく、明るい口調で、菊池が答える。
「やっぱり、ジェットコースター系でしょッ!?
遊園地来て、まずは乗らないとッ!」
「えぇ~~? 一番最初に??
もっと、ゆったりとしたアトラクション乗ってからにしない?」
「ゆったりとしたヤツは、待ち時間そこまで無いし、休憩にいくらでも乗れるでしょ~~?
人気アトラクションをまずは乗ろうよ!!」
瑠衣の意見は、菊池に却下され、菊池に賛同する者も多く見受けられた。
「俊也と彰は、どうなの??
やっぱり、ジェットコースターからがいいでしょ?」
「――う~~ん、俺はみんなに合わせるよ……。
俊也は??」
菊池の質問に、まずは彰が答え、彰はそのまま大貫に話題を振るが、大貫は何故か意を決したように、何かを意気込むかのように答え始める。
「も、勿論ッ! 絶叫系好きだしなッ!!
は、ハルはどうだ? も、もし苦手なら隣にッ…………」
大貫の意気込んだ発言に、今度は全く別の方向から声が上がり、その声を上げた聖奈は、大貫の言葉を遮った。
「アタシは、絶叫系苦手だから、もし行くんだとしたら、得意そうな穂高君の隣ねッ!?
――怖いから、手握っててねッ?」
「――えぇ゛? 俺も得意じゃないけど…………」
急に聖奈から話を振られた穂高は、動揺しつつも、素直に返事を返した。
そして、他の面々の前で、露骨に穂高に対し、聖奈はスキンシップを取り、そんな聖奈を瑠衣は、訝しげに見つめ、春奈は二人から目線を逸らした。
「手を握るのも、乗り物中は嫌だよ。
手汗出そうだし……」
「いや、出ないから、ウチ」
「お前が出なくても、俺が出るかもだろ……」
聖奈的には良い雰囲気を作ったつもりだったが、デリカシーの無い穂高の発言に、冷たく聖奈は反論し、対して穂高は、真面目に手汗の心配ばかりを続けてしていた。
そんな穂高の反応に、聖奈は呆れた様にため息を付き、何故か瑠衣が楽しそうに、その光景を見つめていた。
「松本君は、大丈夫?
いける?? 絶叫系」
一通り意見が出た所で、菊池は武志にも意見を尋ねた。
「大丈夫っす! 余裕です!!
――よければ、俺が隣に乗りますよ?
あらゆる障害から、貴方を守ります」
「アハハハ~~、何それ~~。
いいよッ! 一緒に乗ろっか?」
まるで正しくないが、武志なりの西洋の騎士が、忠誠を誓うような、そんなポーズを取りながら菊池にそう伝え、菊池は楽しそうに、武志の申し出を受けてた。
(――流石、内面も美人な四天王。
こんな奇人、変人、変態の武志までも、笑顔で相手してくれるとは……)
奇怪な行動を取る武志を尻目に、穂高はそんな事を思いつつ、全員の意見が纏まった事で、穂高達は人気アトラクションから回る事になった。




