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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十五章 波乱 ハムスターランド
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姉の代わりにVtuber 225


 ◇ ◇ ◇ ◇


ハムスターランド カントリーエリア


ハムスターランドの入場ホームから、最奥の位置にあるエリアに、穂高ほだか聖奈せなは、訪れていた。


入場直後にある、様々なお土産屋から、園内使用のグッズとして、最も人気の高い、キャラクターのカチューシャを身に着け、既にテーマパークに馴染んでいる穂高と聖奈は、腕を組みながら進んでいた。


「――ぶッ、フフフッ!

に、似合うねぇ~~、穂高君! そのカチューシャ」


会話をしつつ、園内を歩いていた穂高達だったが、既に、身に着けて数分が経過しているというのに、聖奈は思い出したかのように、穂高の現在の姿を見て、噴き出したように笑った。


「あのなぁ~~、俺だって着けたくて着けてるわけじゃ……、

――――もう外す」


楽しそうに笑う聖奈が不満なのか、穂高は心底、不服な表情を浮かべ、少し苛立った様子で、カチューシャを外そうとする。


「あぁッ! 待って待って! 外さないでよ~~。

ホントに似合ってるんだからさ~~」


頭に手をやる穂高の行動を制し、聖奈はカチューシャを外すのを阻止した。


「それに、今日は埋め合わせでしょ~~?

何でもいう事聞くって約束じゃん~~。

――ね? ほら、ウチとおそろだし、一人で着けてたらハズいしさぁ~~」


埋め合わせで来ている穂高は、その事を言われると、強気に出る事が出来ず、溜息を吐き、聖奈に従った。


「別に、カチューシャ着けるのはもういいけど、あんまり笑うなよな……」


「おけおけ、気を付ける」


疲れた様子で話す穂高に対して、聖奈は口では言うものの、既に笑みが零れており、反省した様子は、微塵も見えなかった。


そして、聖奈は一度解かれた腕を、再び組み直し、穂高の隣に並ぶ。


「――これも、どうにかならないのか??」


「ならな~~~い。

良いじゃん? 今二人っきりだしッ!

――てか、ウチはデートのつもりで、今日来てるんだしさぁ~~」


腕組にも納得いっていない穂高は、止めてくれるよう促すが、聖奈は止める様子無く、むしろ強く自身の方へと抱き寄せ、今日の思いを口に出す。


どこまでも、直線的な聖奈の行動と言論に、穂高はタジタジであり、早く他の者達と合流したいと、そのことだけが頭に過る。


「ねぇ~~えッ! 穂高君。

こ~~んなにアピールしてるのに、ウチって、まったくもって脈無し~~??

もうわざわざ口に出したりしないけどさぁ~~? 結構、ウチ頑張ってると思うんだけどぉ~~??」


聖奈は核心的な事は言わなかったが、今までの行動と言動で、ほぼほぼ答えは出ており、鈍い穂高と言えど、それに気付かない程、鈍感では無かった。


「――いやいや、頑張られても…………。

もっといるでしょ? それこそ今日会った奴らとか」


「今日会った? 楠木達??

――いや~~、イケメンだとは思うけど、趣味じゃないし……。

てか、話し逸らすなしぃ~~」


聖奈は膨れっ面をしながら、不満を口にした。


「まぁ、そっちが飽きるまでは、付き合うよ。

とりあえず、今日は約束だしな」


「――もう、どんだけ自己評価低いっていうか、興味無いわけ~~??

これじゃあ、次進めないじゃんッ!

今、行動起こしたって、結果が目に見えてるしッ!!」


聖奈は、赤裸々に話しながらも、肝心な事は、具体的に言葉にする事無く、続けて不満を漏らしながらも、穂高と共に会話を続けていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


ハムスターランド ウエスタンエリア。


別行動の進捗を元に、パインで連絡を取り合い、集合場所には、ウエスタンエリアが選ばれた。


決められた場所に続々と、春奈はるな達は集まっていき、最後に、穂高と聖奈が合流をし、ようやく全員が揃った。


「揃ったね!

それじゃあ、まずは何から行く??」


集まった面々を見渡し、場を仕切るように瑠衣るいが声を上げた。


そして、そんな瑠衣の声掛けに対し、元気よく、明るい口調で、菊池きくちが答える。


「やっぱり、ジェットコースター系でしょッ!?

遊園地来て、まずは乗らないとッ!」


「えぇ~~? 一番最初に??

もっと、ゆったりとしたアトラクション乗ってからにしない?」


「ゆったりとしたヤツは、待ち時間そこまで無いし、休憩にいくらでも乗れるでしょ~~?

人気アトラクションをまずは乗ろうよ!!」


瑠衣の意見は、菊池に却下され、菊池に賛同する者も多く見受けられた。


俊也しゅんやあきらは、どうなの??

やっぱり、ジェットコースターからがいいでしょ?」


「――う~~ん、俺はみんなに合わせるよ……。

俊也は??」


菊池の質問に、まずは彰が答え、彰はそのまま大貫おおぬきに話題を振るが、大貫は何故か意を決したように、何かを意気込むかのように答え始める。


「も、勿論ッ! 絶叫系好きだしなッ!!

は、ハルはどうだ? も、もし苦手なら隣にッ…………」


大貫の意気込んだ発言に、今度は全く別の方向から声が上がり、その声を上げた聖奈せなは、大貫の言葉を遮った。


「アタシは、絶叫系苦手だから、もし行くんだとしたら、得意そうな穂高君の隣ねッ!?

――怖いから、手握っててねッ?」


「――えぇ゛? 俺も得意じゃないけど…………」


急に聖奈から話を振られた穂高は、動揺しつつも、素直に返事を返した。


そして、他の面々の前で、露骨に穂高に対し、聖奈はスキンシップを取り、そんな聖奈を瑠衣は、訝しげに見つめ、春奈は二人から目線を逸らした。


「手を握るのも、乗り物中は嫌だよ。

手汗出そうだし……」


「いや、出ないから、ウチ」


「お前が出なくても、俺が出るかもだろ……」


聖奈的には良い雰囲気を作ったつもりだったが、デリカシーの無い穂高の発言に、冷たく聖奈は反論し、対して穂高は、真面目に手汗の心配ばかりを続けてしていた。


そんな穂高の反応に、聖奈は呆れた様にため息を付き、何故か瑠衣が楽しそうに、その光景を見つめていた。


松本まつもと君は、大丈夫?

いける?? 絶叫系」


一通り意見が出た所で、菊池は武志にも意見を尋ねた。


「大丈夫っす! 余裕です!!

――よければ、俺が隣に乗りますよ?

あらゆる障害から、貴方を守ります」


「アハハハ~~、何それ~~。

いいよッ! 一緒に乗ろっか?」


まるで正しくないが、武志なりの西洋の騎士が、忠誠を誓うような、そんなポーズを取りながら菊池にそう伝え、菊池は楽しそうに、武志の申し出を受けてた。


(――流石、内面も美人な四天王。

こんな奇人、変人、変態の武志までも、笑顔で相手してくれるとは……)


奇怪な行動を取る武志を尻目に、穂高はそんな事を思いつつ、全員の意見が纏まった事で、穂高達は人気アトラクションから回る事になった。

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