姉の代わりにVtuber 223
「――ねぇハル、結局組み分け天ケ瀬君とじゃないし。
愛葉さんに乗り物の固定とか、決められちゃってたけど、あれで良かったの??」
早速、ファストパスを取る為に、二人一組に分かれた瑠衣は、少し強引に春奈とペアを組み、つい先程の出来事に関して、春奈に尋ねた。
「まぁ、しょ、しょうがないよね……。
元々、愛葉さんと穂高君二人で、この遊園地回る予定だったわけだし……。
瑠衣から話聞いて、今日まで色々と計画練ってきたけど、優先はあっちだよ。
偶然を装って合流して、今後、一緒に回ってくれるってなっただけ御の字だ。
穂高君だって、愛葉さんの意見を尊重すると思う」
春奈は自信なさげな様子で話し、春奈の声色から、容易に不安を感じ取れた。
「た、確かに最低限達成しなきゃならなかった、第一目標を達成できた事は喜ばしいけど……。
――こんなの春奈の方が不利過ぎるよ」
春奈に肩入れする瑠衣は当然、まだまだ現状に納得がいっておらず、今後も隙あらば、穂高と春奈、二人っきりにさせようと、そんな事ばかりを考えていた。
「まぁ、これ以上を望んでも仕方ないよ? 瑠衣。
――それよりも、他の皆は大丈夫かな??」
真剣に考える瑠衣に対して、春奈は半ば現実逃避気味に、話を逸らす。
「大丈夫じゃない??
俊也は、春奈と一緒に回りたがってたけど、結局今は、友達の梨沙と回ってるでしょ?
松本君は、あんまり接点無い人が多いのかもしれないけど、今一緒に回ってるのは、彰だから。
彰と天ケ瀬君と松本君って、昔からの友達みたいだし……」
瑠衣は、二人組を分けた時の事を思い浮かべながら、春奈にそう話した。
大貫は、春奈に好意を寄せている事もあり、当然の様に、今回の遊園地でも、春奈となるべく関わろうとしていたが、瑠衣は今後の作戦会議もある為、春奈と話したい事が山ほどあり、半ば強引に、春奈と二人でファストパスを取りに行く事を決めていた。
そして、瑠衣との勝負敗れた大貫は、仲の良い彰に声を掛けるも、回りの空気をよく読む彰は、武志を気遣い、結果、他の仲の良い菊池と回る事になった。
「ねぇ、瑠衣。
私と瑠衣が遊園地に来るのは分かるけど、どうして俊也とか彰とかも呼んだの?」
「え? いやぁ~~、流石にハルと二人きりじゃ、愛葉さんに警戒されるなって……。
絶対、同行を許してくれないし、だったら、男性陣も誘ってなるべく警戒されないようにって。
見ようによっては、4ペア男女のデート? みたいな??
――私と春奈、俊也、彰の四人でも良かったんだけど……、俊也を呼ぶと、それはそれでややこしい事になるからなぁ~~」
春奈の質問に、瑠衣は嘘偽りなく自分の考えを話し、大貫の事に関しては、小声で、少しだけ面倒そうに呟いた。
大貫から直接、告白などをされたわけではない春奈であったが、瑠衣の言わんとする事を若干理解でき、文化祭を機に、薄々と大貫の好意を春奈は感じ取っていた。
「――ね、ねぇ瑠衣。
ずっと気になってて、多分勘違いかもって、ずっと思い込んでいたんだけどさぁ……。
自分で言うのも凄い、恥ずかしいんだけど、俊介って、もしかして…………」
春奈が核心を言いかけた所で、瑠衣は春奈の言葉を遮る。
「えッ!? 気付いてなかったの??
俊也って、一年くらい前から……、いや、これ以上は、私から言う事じゃ無いな。
――多分、近いうち……、下手すれば今日、俊也からなんかあるかもね。
いやぁ~~、ヘタレ過ぎだね、アイツは……」
春奈がそこまで確信めいていなかった事に、瑠衣は驚いた後、鈍感な春奈を責める事は無く、いつまでも行動に移さない、大貫の方の愚痴を呟いた。
好意を向けられ慣れている春奈は、この手の話に、そこまで強く羞恥心を感じる事は無かったが、大貫は身近な関係であった為、いつもよりかは恥ずかしく感じた。
「仲良いグループで、付き合いも長くなってきて、今更ギクシャク……。
勘弁して欲しいよ、俊也……」
◇ ◇ ◇ ◇
ハムスターランド一角 トゥーンワールドエリア。
二人一組に分かれた、楠木 彰と松本 武志は、トゥーンワールドエリアへと訪れていた。
「――はぁ~~、折角のハムスターランド……。
なんで、野郎と二人で……」
トゥーンワールドエリアに来て以降、武志の愚痴は止まらず、彰はそんな武志の愚痴に、苦笑いを浮かべていた。
「野郎二人って……。
武志、今日みんなと会って以降、上がりっぱなしじゃん。
女の子と二人、梨沙とか瑠衣とかと二人っきりになって、平常でいられるの??
俺は、少しでも落ち着くように、フォローしてあげたんだよ?」
彰は武志の愚痴に嫌な顔せず、それでも言いたい事はしっかりと武志に伝えた。
幼い頃からの友人である為、言葉には遠慮なく、武志も、痛い所を付かれたのか、渋い表情を浮かべる。
「いやな? 徐々に落ち着いていくよ! 俺だって!!
初めてじゃないんだから、四条さん達とは……。
た、ただ今日は、イツメン……、穂高とか、瀬川がいないから、様子おかしくなってただけで……」
「様子おかしい自覚あったんだ。
――でも、なら自分でも良かったって思うでしょ? ちょっとハーフタイム挟めて」
「ハーフタイムが長いわ!
メインエリアからトゥーンワールド入るまでの少しの時間で良い。
流石にもう女の子と話したいッ!!」
武志の我儘は止まらず、相手が彰という事もあって、遠慮は無かった。
そして、そんな愚痴も数分で終わり、武志は別の話題を彰に振り出す。
「彰はなんで、今日の集まり来たんだ?」
「え? なんでって……、そりゃ、俊也達は友達だし」
武志の質問に、彰は少し困惑した様子で答え、彰の反応を見て、武志はいつになく、真剣な面持ちで話し出す。
「ホントにそれだけか?
――彰とは、長い付き合いだし、色々と分かんだよなぁ~~、話さなくっても……。
俺もそこまで馬鹿じゃないし」
武志は意味ありげにそう呟いた後、彰を正面に捉えた。
「なぁ……、今日、なんかあるんだろ??
――俺も、浮足立ってたけど、俺から見れば、お前も今日、少し変だぞ?」
武志の突拍子もない発言に、彰は思い当たる節があり、腐れ縁である武志に、それは見抜かれていた。




