姉の代わりにVtuber 222
◇ ◇ ◇ ◇
超有名テーマパーク『ハムスターランド』。
聖奈との約束で訪れた穂高は、既に不穏な空気に身を包まれていた。
「偶然だねッ!? 天ケ瀬)あまがせ)君? 愛葉さん!!
こんな所で会うなんてッ!!」
聖奈と二人で、テーマパーク入り口で待ち合わせをし、いざ園内へ向かおうとしたその時、穂高達は、自分達と同じ学校、クラスメートである四条 瑠衣に声を掛けられ、その場に引き止められていた。
事前に穂高と聖奈が、訪れる時間を知っていた瑠衣は、ニコニコと笑顔を浮かべており、穂高の隣に寄り添って立つ聖奈は、怪訝そうに視線を瑠衣と、瑠衣が連れるその他の集団に飛ばした。
「――えっとぉ、四条さん??
偶然だね? みんなで楽しくココに来たの?」
思わぬ場所で出会えた事を、歓迎するような、そんな明るい口調で話しかけた瑠衣に対し、聖奈の声色は冷たく、辛うじて社交辞令と受け取れる程の物言いだった。
「そう! もう卒業も近いしね?
高校生の思い出作りの為にってッ!
――受験勉強の息抜きも兼ねてね??」
「ふ~~ん、そっ……。
――確かに仲良しグループね?」
聖奈の物言いにも瑠衣は怖気づ、明るく受け答えし、瑠衣の言葉を聞いて、聖奈は他の面々に視線を向ける。
瑠衣と共いにテーマパークに訪れたのは、大貫 俊也、菊池 梨沙、杉崎 春奈、楠木 彰のいつも仲良しグループの面々と、何故か一人、穂高と最も面識のある、松本 武志の姿がそこにあった。
(――彰が呼ばれるのはまだしも、なんで武志も呼ばれてんだ??
あまりのメンツに、ちょっとキョドってるし……)
桜木高校の四天王と呼ばれる女子メンバーの面々と、クラスで持て囃され、女子生徒からモテるイケメンの彰と大貫の中に、武志の姿は異様に映り、どこか落ち着きのない様子の武志を見て、穂高は不思議に感じていた。
「それじゃあ、邪魔しちゃ悪いしッ! 行こっか? 穂高君」
瑠衣とのやり取りに興味の無い聖奈は、会話も程々に、すぐさま二人で、テーマパークを回ろうと最速する。
しかし、そんな聖奈に対し、思い通りにはさせまいと、瑠衣は声を掛ける。
「えぇ~~? せっかく会えたんだから、一緒に回ろうよぉ~~。
ねぇ? みんな」
「――う、うんッ! そ、そうだね、瑠衣!!」
瑠衣は尋ねる様に、春奈達に問いかけると、春奈は力ずよく首を縦に振りながら、瑠衣の意見に同意した。
大貫や菊池は概ね、賛成の意見だったが、彰は渋い表情を浮かべ難色を示し、武志は穂高に対して、助けを求めるような、そんな視線を送っていた。
「え? 普通に邪魔だから嫌なんだけど??
デートのつもりだし」
聖奈は断固として、瑠衣の提案には乗らない態度であり、瑠衣はそんな聖奈を見て、穂高に目配せし、助けを求める。
「まぁ、皆で回るのも良いんじゃないか??
――とゆうか、俺はデートのつもりじゃないし……」
「は、はぁ? 穂高ぁ??
ちょっと、冗談キツイんだけど??」
瑠衣の提案に乗る為、穂高は瑠衣達と回る事を提案するが、聖奈からは強い拒絶をされる。
瑠衣の率いる集団に、聖奈の親しい者がいない事と、元々、穂高と二人で回る事を想定していた為、聖奈の反対は、当然想定出来た。
そして、拉致の開かない状況に、春奈が声を上げる。
「――み、皆で回った方が、効率良く、沢山の乗り物に乗れると思うよ?
テーマパークに入るなり、各役割を決めて、ファストパスを取りに行けるし……、ファストパスだって取りに行くときに、二人一組のペアで行けば、愛葉さんの要望にも添えるよね??
ほ、穂高君と二人きりの時間は取れるわけだし……」
「は、ハルッ!?」
春奈の提案に、聖奈は怪訝そうな表情を浮かべつつも熟考し、聖奈と穂高のデートを阻止しに来た瑠衣は、春奈からの申し出に、戸惑った様子だった。
そして、聖奈が答えを出す前に、もう一人の女子である菊池が声を上げる。
「そうだねッ!!
皆で先に回ってファストパス取れば、一緒に回れるし、基本的に何個も取れるしね? ファストパス。
パインで連絡取り合えば、ファストパスの時間被らないようにもできるし」
菊池はハムスターランドに行き慣れているのか、有益な情報を流しつつ、携帯を徐に操作し始める。
「――――っていう事で、はいッ!!
早速、愛葉さんと天ケ瀬君をパインのグループに、招待しちゃいましたぁ~~ッ!
これでいつでも連絡取り合えるし、逸れた時も、待ち合わせできるよッ」
菊池の行動は早く、満面の笑みを浮かべながら、自分の携帯の画面を、穂高と聖奈に見せつけた。
聖奈はそんな菊池の行動を快く思ってい無さそうであったが、穂高と二人きりになれる時間は確保できる為、渋々といった様子で、ようやく春奈達の提案を受け入れる。
「――はぁ~~~……、団体行動になるのは、凄く嫌だけど、ファストパズ取り合って、乗り物乗れる回数も増えるのは、魅力的だからね……。
でもッ! 乗り物乗るにしても、穂高の隣は私で固定だからねッ!?」
「――え? あ、う、うん。 そ、それでいいよぉ……」
聖奈はキッパリと、宣言するように春奈に言うと、春奈は聖奈の勢いに押される形で、少し未練がましい雰囲気を出しつつ、聖奈の提案を飲んだ。
そんな春奈と聖奈のやり取りの中、穂高はこっそり瑠衣に声を掛ける。
「――おい、事前に言われた通り、待ち合わせの時間と場所を、四条に教えたけど、どうゆうつもりだこれは……?」
穂高は今日に至るまで、瑠衣に、聖奈との今日の約束事を事前に教えていたが、瑠衣が何を当日しようとしているのかは、今この瞬間まで分かっておらず、目の前に広がるカオスな状況を見て、不満げな表情を浮かべて尋ねた。
「どうゆうつもりも何も、天ケ瀬君と愛葉さん二人っきりで遊園地なんて、承認できるわけないでしょ??
どうにも良い方法が見つからなかったから、いっそのこと団体にして有耶無耶にしようかと……」
「何でこんな纏まりの無さそうな……。
武志に関しては、なんでいるんだ??」
「纏まり無くないでしょ~~??
大貫達は仲良しメンバーだから、自然だし……。
松本君は…………、彰と天ケ瀬君の友達だし?? 話したら来たがってたし……」
瑠衣の説明を受け、穂高は改めて集団を見渡し、大きくため息を付いた。




