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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十四章 代役の終わりと門出
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姉の代わりにVTuber 221


 ◇ ◇ ◇ ◇


1限目と2限目の間。


授業間の小休憩に、穂高ほだか瑠衣るいに呼び出されていた。


「ねぇ、天ケあまがせ君って、結構チャラくて、女の子を泣かせるタイプの人??」


空き教室に呼び出された穂高は、開口一番、瑠衣にそう尋ねられ、瑠衣は心底不機嫌そうに、穂高を見つめていた。


そして、状況が理解できてない穂高は、瑠衣の態度と、質問の意味が理解できなかった。


「――はぁ? 何を急に……」


「急にじゃないでしょ? 普通に。

――あのね? 天ケ瀬君?? 今日の朝のアレはなに!?

なんで、愛葉あいばさんを遊園地に誘ってるわけ??」


ピンと来ていない様子の穂高に対し、瑠衣は途中、呆れた様にため息を付きながら、言葉を濁すことなく、端的に尋ねた。


「遊園地? あ。あぁ。アレの事。

アレは別に、文化祭の時に、聖奈せな達の約束を守れなかったから、お詫びにってだけで……。

――っていうか、俺はチケットを渡すだけで。別に一緒に行くつもりじゃ…………」


「いやいやッ! 天ケ瀬君ッ!!

あんな渡し方じゃ、一緒に行こうって誘ってるのと同じだからね!?

天ケ瀬君にどんな思惑があろうと。チケットだけ渡して、「ハイッ、後はお好きにどうぞ」なんて、ならないからッ!

しかも、渡してる相手も愛葉さんだし……」


穂高の弁解は、瑠衣には通用せず、弁解すればするほどに、瑠衣の機嫌が悪く、怒っているようにも見受けられた。


「あのさぁッ!? 天ケ瀬君ッ!

いくら、鈍感で鈍い天ケ瀬君と言えど、気付いてはいるんでしょ?? 愛葉さんの好意に」


大親友の春奈はるなの為、瑠衣は変に臆することは無く、言葉も選ばずに、穂高に続けて尋ねた。


「好意って……、別にそこまでの事じゃないだろ?

薄々、所々に感じはするものの、四条しじょうの言う好意も一時的な物だろ? 多分……。

言わずもがな、聖奈はモテるし、偶々変に目立った俺に、今は興味を持ってるだけで、多分そのうち飽きるだろうし……。

地味な俺には、ちょっかい掛けて遊んでるだけだろ」


穂高は瑠衣の言葉に、嘘偽りなく、自分の考えを話し、聖奈の好意を感じてはいるものの、そこまで大事に考えてはいなかった。


「――なにそれ…………。

じゃあ、天ケ瀬君に告白した春奈に対しても、そんな風に考えてるの??」


穂高の考えに、瑠衣は増々不機嫌になり、穂高を睨むようにして、冷たく言い放った。


「い、いや、別に春奈は…………。

――っていうか、やっぱり知ってるのか」


「誤魔化さないでッ!

春奈と愛葉さん、どう思ってるのッ!?」


穂高は。話を逸らすつもりは無かったが、瑠衣にとって、春奈に対して穂高がどう思っているのか、それ以外に興味は無く、少しでも話題が逸れる事を嫌った。


「どう思ってるって別に、普通に友達だと……。

昨日の今日で俺もまだ、頭の整理がついてない」


「整理付いてないって、嫌いなのッ!? 好きなのッ!? どっちッ!」


珍しく弱々しい様子を見せる穂高に対し、瑠衣はここで決着を付ける勢いで、尋ねた。


「す、好きとか、嫌いとか、俺にはまだよく……。

それに、春奈には告白されはしたものの、別に付き合うとか、どうとか……」


煮え切らない返事ばかり返す穂高に、瑠衣はいよいよ気をそがれ、今日一番の大きなため息を付く。


「――天ケ瀬君。

かなり、この手の話題はポンコツだね…………、ホント……。

いや、私の知らない所で、かなりハルを助けてくれてたみたいで、天ケ瀬君に対しては、凄い良い印象を持ってはいたけど……、ちょっと、どうかと思うよ??」


怪訝そうな表情を浮かべ、訝しむような視線を穂高に向け、瑠衣は歯に衣着せぬ物言いで、キッパリと話した。


「あのね? 天ケ瀬君。

分からない分からないなんて言って、碌に答えも出さずに、このまま居たら、春奈を誰かに取られちゃうよ??

あんな美人で良い子、すぐに誰か良い男が寄ってくるんだから」


「は、はぁ……」


瑠衣の言葉は、穂高には上手く刺さらず、穂高の表情もピンと来ていない様子だった。


しかし、そんな穂高の反応にも、瑠衣はめげる事は無かった。


「それに、今の天ケ瀬君の状況。

天ケ瀬君が故意に作り出したわけではないにせよ、優柔不断な状況だと思わない??

愛葉さんの好意にはうっすらと気付いていて、春奈には気持ちを伝えられて……、そんな中、答えも出さずに愛葉さんと遊園地に行く。

不純だよ、私から見れば。

春奈に対して、キープみたいな事する気??」


「ちがッ! そんなつもりは……。

――はぁ~~~……、でも、そうだな、四条の言う通り、そう見えても仕方ないよな」


穂高は完全に参っている様子で、大きなため息を付き、少し考え込むようにした後、思い立ったかのようにゆっくりと顔を上げる。


「――断ってくるか…………」


穂高はボソりとそう呟くと、瑠衣はほんの一瞬明るい表情を浮かべるが、すぐに疑問が浮かび、表情は再び険しく戻る。


「――ちょっと待って、天ケ瀬君!

断るって何を??」


「え? いや、春奈に今の気持ちを伝えようと……」


穂高の言葉に、瑠衣は慌てふためき、今にも行動に起こそうとする穂高を、全力で止める。


「ちょっと待って! 待って!!

気持ち? 何て??

もしかして、さっき言った通りに言うつもりじゃ……」


「そのつもり。

――春奈からは、別に付き合うとか、そういうのをお願いされたわけじゃないけど、春奈は勇気を出して、きっちり告白をして、自分は何も言わずにだんまりなんて、親友の四条からしてみれば、不順にも見えるよな」


罰の悪そうに話す穂高に、瑠衣はあたふたした様子で穂高を見つめ、余計に拗れていく状況に、更に頭を悩ませた。


「駄目ッ! それを伝えるのは駄目!!

天ケ瀬君。まだ頭の整理が付いてないんでしょ? 春奈も気持ちを伝えただけで、ちょ、ちょっとニュアンス曖昧だし……。

まぁ、今までの春奈にしては。凄い進歩なんだけどぉ~~……。

――あぁ~~~ッ、もうッ!! なんで、天ケ瀬君はチケット渡しちゃったわけッ!?!?」


思うように話が進まない瑠衣は、いよいよ頭がパンクし、ここまで悩む事になった発端の穂高を、途端に非難した。


「いや、そんな事言われてもな……。

聖奈の約束を破った穴埋めをしただけだし」


たじろぐ穂高に、瑠衣は思考を巡らせ、悩みに悩んだ上、穂高に声を上げる。


「天ケ瀬君ッ! チケットまだあるよねッ!? 何枚ある??」


「え? あぁ、遊園地の??

後、二枚だな」


「頂戴ッ! どうせ愛葉さんに渡した二枚で、二人・・で行くんだろうし、もう必要ないでしょ??」


「ま、まぁそうだけど……」


ポケットからチケットを出し、残りの枚数を見せた穂高に対し、瑠衣は穂高からチケットをぶん取り、今後の方針を考え始める。


「――二枚かぁ……、足りない分は、ウチにも招待券ありそうだし、チケットの補填はするとして……、どうやって、誰を巻き込むか…………」


瑠衣はブツブツと呟きながら、計画を練り、空き教室から出て行こうと、穂高に背を向けた。


穂高はそんな、瑠衣を不思議そうに見つめていたが、背を向けたはずの瑠衣は、思い出したかのように、体を捻り穂高に向ける。


「――――あッ! 天ケ瀬君!

もう余計な事しないでね!? 春奈に対しても、変に答えを急がない事ッ!!

そもそも、天ケ瀬君は「好き」って言われただけで、「付き合って♪」とは言われてないんだから。

勘違いして、行動に移さないように! 分かった??」


対応がコロコロと変わる瑠衣に、穂高は不満を感じつつも、元々特に穂高から告白に対して言及するつもりも無かった為、瑠衣の言葉に承諾する返事を返した。


穂高の返事を聞くと、瑠衣は再び難しい表情を浮かべながら、教室を後にし、穂高一人その教室に取り残された。


「――な、なんだったんだ……、この時間は…………」


穂高はため息を一息つき、瑠衣に続いて、空き教室を後にした。

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