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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十四章 代役の終わりと門出
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姉の代わりにVTuber 219


放課後の校舎屋上。


人気のない校舎屋上には、冬の訪れを感じさせる冷たい風が吹き、部活動に勤しむ生徒達の声がこだまする中、二人の男女の生徒が立ち尽くしていた。


何も言葉を発しず、立ち尽くす二人は、顔を見合わせ、男子生徒、天ケあまがせ 穂高ほだかは、驚いた表情を浮かべたまま硬直し、もう一人の女子生徒、杉崎すぎさき 春奈はるなは、顔を真っ赤に染めながら、硬調くしていた。


数分の沈黙を経て、ようやく穂高が口を開く。


「――えっとぉ……、今、なんて?」


春奈の呟いた言葉を、穂高は聞き取れてはいたが、唐突であった事と、聞き間違いの可能性も考慮し、赤面している春奈に問いかけた。


「えッ!? あ、いや……、へ、変な意味じゃないよ??

と、友達としてって言うか……、なんと言うか」


「――あ、そう……、そうだよな?

わ、悪い、俺も変な風に捉えて。

ありえないよな~~、無い無いッ」


取り繕うように答えた春奈に対して、穂高も春奈の雰囲気に当てられてか、少し動揺した素振りを見せながらも、そう答えた。


嘘を付いた春奈に対して、穂高の放った言葉は本心であり、少しでも雰囲気に流された事を、穂高は恥ずかしく思った。


「無い無いって、そんな強く否定しなくても……」


穂高の反応に、春奈は、今度は相手に聞こえない程の小声で呟き、ぼそりと呟いた自分の独り言で、脳裏に浜崎はまさき ゆい愛葉あいば 聖奈せなの事が過った。


(――穂高君のこの感じ、私とそうゆう風な恋愛関係になるって、微塵も考えてない様子だ。

唯さんも愛葉さんも、穂高君に対して凄いアピールをしてる。

対して私は……、オーディションも受かって、穂高君とは益々接点が無くなってる。

忙しくもなって、どんどんやり取りも減って…………)


春奈は、聖奈と唯が脳裏に過った事で、段々と冷静さを取り戻し、ここ最近は、オーディション等も経て、行動力も付いてきた事もあり、大胆な事も、怖気ず実行する事が出来て来ていた。


そんな春奈は、バクバクと脈打つ鼓動を少しでも抑えるよう、自分の胸に手を置き、呼吸を整えると、真っすぐに穂高を捉える。


「穂高君、ごめんやっぱり今の無し!」


「――え?」


晴れやかな声と、笑みを浮かべながら春奈はそう言い放ち、穂高が呆気に取られている間に、続けて宣言する。


「好きだよッ!! 変な意味でッ!」


春奈の鼓動は、限界ギリギリだったが、一言も噛む事なく、しっかりと告白でき、突然の出来事に、穂高はフリーズした。


そして、告白をした春奈は、限界だった為に、硬直した穂高の隙を付くように、その場から退散しようとする。


「――へ、返事とかはいいからッ!

た、ただ、言いたくなっちゃっただけだし…………。

つ、つつッ、付き合うとかも…………、か、考えてな…………そ、それじゃあねッ!!」


堂々とした春奈は、一瞬の出来事であり、その場から退散しようとする春奈に、堂々とした様子は見る影も無く、穂高が呼び止めようとするも、すぐに言葉を吐き捨て、その場から退散していった。


足早に逃げられた春奈に、穂高は屋上でただ一人、取り残された。


そして、穂高は春奈の言った言葉を理解する為に、その場に数十分程留まる事になった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「――――なんだったんだ……、あれは」


放課後の出来事を終え、帰宅した穂高は、部屋に籠るなり、先程の出来事に関して、思考を巡らせていた。


(春奈が告白……? 俺に?? なんで?)


放課後の屋上でフリーズし、我に返って以降、穂高は春奈の言葉の意味を考え、帰宅しても尚、答えを出せずにいた。


(学校ではモテモテ、良い人なら選びたい放題のはずの春奈が、冴えない俺を……。

――とゆうか、大貫おおぬきは??

文化祭の練習とかで、交流あったし、劇の最後の方は、端から見た感じ良い雰囲気だったろ?)


様々な事を頭の中で巡らせる穂高だったが、脳裏に焼き付いた光景が、ふと思考中の穂高に思い返される。


  「好きだよッ!! 変な意味でッ!」


思い返される春奈は、少し顔を赤く染め、高揚したような、少し興奮しているようにも見え、快活な笑みを浮かべた彼女は、ハッキリと穂高にその言葉をぶつけていた。


「変な意味って、なんだよ…………」


告白をされてからここまで、穂高は何度もこの光景が頭を過っており、春奈の真意を考えようとしても、彼女の笑顔が浮かぶと、すぐに集中力を切らし、考えが吹き飛んでいた。


「あぁ~~ッ! もう駄目だッ!!

これ以上考えるのは止めよう!

――俺もアイツの雰囲気に、変に流されて良くない事を考えそうだ」


穂高は、何度目かの思考を、脳裏の光景に邪魔された事で、それ以上放課後の事を考えるのをやめようと、そう決断した。


(どんな意図で言ったであれ、くっそぉ~~~ッ!

明日、どんな顔して話せばいいんだ……)


穂高は春奈に悪態を付いた後、気分転換も兼ね、ゲーム機を起動させた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


杉崎邸 一室。


部屋に籠る、春奈はベットに寝そべりながら、電話相手の親友へと呼びかける。


「ど、どどど、どうしよぉ~~~、瑠衣るいぃ~~!!

――あ、明日の学校から、ど、どんな顔して会えば……」


意を決して気持ちを伝えた春奈だったが、自分の部屋では、放課後の出来事を酷く後悔しており、瑠衣に対して、泣きつくようにそう話した。


「どうも何も、今まで通り、普通に接するしかないでしょ。

――とゆうか、ハル!

私は春奈を見直したよぉ~~~!

遂に、告白をするなんてねぇ~~」


弱気な春奈に対し、瑠衣は前向きな様子であり、気持ちを伝えた春奈を、純粋に褒め称えていた。


そんな、どこか他人事のように話す瑠衣に、春奈は釘をさす様に、声を上げる。


「もうッ! 真剣にッ!!

――ねぇ、瑠衣~~、しばらく瑠衣の後ろに隠れさせてぇ~~~」


「いや、変だし、キモいよ……。

てか、ハル?

告白したのは、凄いけど、天ケ瀬君からの返事は??

付き合うの? とゆうか既に恋人???」


春奈と穂高の放課後の出来事を、包み隠さず知りたい瑠衣は、続けて踏み込んだ質問を投げかけた。


「えぇッ!? い、いや、つ、つつ、付き合うとかじゃ……。

た、ただ、気持ちを一方的に伝えただけだし、返事とかも聞いてない」


どんどんとか細く、自信なさげに春奈は話し、そんな春奈の言葉を聞き、瑠衣は大きな声を上げる。


「えぇ~~~ッ!?!? 返事聞いてないの?

な~~んの為に告白したのよぉ~~、ハル~~~。

パインは? なんかメッセージ飛んできたりはッ!?!?」


「と、特には…………」


瑠衣の声に急かされ、携帯を見る春奈だったが、メッセージの通知は無く、穂高からの連絡は、何もなかった。


「何やってんのよ~~、天ケ瀬君も~~~~!

ハル! 今すぐ何か、メッセージッ!!」


「い、いやいや、今日はもう無理ッ!!

もう限界ッ!!!」


瑠衣は執拗に呼びかけるも、春奈のキャパはもう無く、しばらく二人のそのやり取りは続くものの、結局春奈はその日、行動に移す事は出来なかった。


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