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姉の代わりにVTuber  作者: 下田 暗
第十四章 代役の終わりと門出
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姉の代わりにVTuber 216


88(ハチハチ)に、最後の言葉を振られ、ゲストの登場順に、各々の思いを話していった。


みっちょんとAQUAの言葉が終わり、必然的にてっちんの番へと移る。


穂高ほだかとの約束をした、春奈はるなは自然と配信を食い入るように見つめ、彼の言葉を待った。


「――えぇ~~と、まぁ、みっちょんもAQUAも言ってたんだけど、とにかく、当時は俺なんかの配信を、見てくれてありがとう。

有名じゃないし、面白い配信が出来てたのか、半信半疑の配信だったけど、俺は楽しかった。

――そして、何年か越しになって申し訳ないんだけど…………。

ごめんッ! 何も言わずに、急にこの界隈から姿を消して」


88の卒業配信で場違いである事は、穂高も重々承知であったが、これを言わずにはいられなかった。


そしてそれは、春奈との約束だからという理由だけでなく、この卒業配信の中で、言わなければならない、もう一つの理由が、穂高には出来ていた。


「配信を急に止めたのは、嫌になったからとか、つまらなくなったとかじゃなく、純粋に夢を諦めたから……。

応援してくれてた人達には悪いけど、もう、今も目指してない。

当時の夢は…………」


てっちんは、分かる人にだけ向け、簡潔に配信を辞めた理由を話し、続けて、ちらほらと見える見知った者達へ、言葉を送る。


「――もう、当時の夢を追いかけてはいないけど、俺は今、別にやりたい事が出来た。

それなりに、楽しく毎日を遅れてるし、その次の目標に向かって歩み始めてる。

ハチのこの卒業配信も、そういった次の目標に進む為の物なんだって、俺はそう解釈してる。

そして、なにより一番に伝えたかった事……、88のこの卒業配信だけど、コメントの中にちらほらと見知った顔がある事、気付いてるからなッ!?

――お前ら、俺が配信を辞めても、ハチの所にまだ居てくれて、本当にありがとうッ」


穂高は自分の気持ちを素直に、配信に乗せ、てっちんのその言葉には、様々なコメントが流れるも、ほとんどのコメントが好意的な物だった。


「――――穂高君……」


88の卒業配信を見ていた春奈はるなは、てっちんの言葉を嚙みしめるように呟き、そして、穂高の言葉を聞いて、無性に何かをやりたいという気持ち、早く配信をしたいという気持ちが湧き出て来た。


春奈のその感情は、88の配信で憧れのてっちんと、88の絡みを見ている中で、ふつふつと湧き上がり、穂高の言葉を最後に、感情が爆発していた。


「やらなきゃッ!!」


春奈はそう言うと、88の卒業配信を閉じ、視聴を止め、デビューまでの課題をこなし始める。


「――三人共、ありがとうねッ!

そして、私からも……。

元々、みっちょんやAQUA、てっちんの視聴者だった君達に。

本当にありがとう! 彼、彼女等を見つけて、好きで居てくれて。

――おかげで私は、幸せな配信活動が出来ましたッ!!」


88の声は、少しだけ震えており、歓喜余っている事が、声から伝わった。


「おいッ! まだ、お前の挨拶は早いだろ??」


「そうだよ~~、ちょっと、感極まってるし」


88の言葉に、てっちんとみっちょんはツッコミを入れつつ、最後は場を和ませながら、ゲストとして配信を後にした。


88の配信は、予定通りその後も続き、後半は直近の活動の部分の振り返りでもあった為、かなり盛り上がり、ゲストも88に負けない程の、知名度ある大物配信者が多く、コメント欄も湧き上がっていた。


そして、そんな後半の配信も、前半のてっちん達との配信のように、例に漏れず、各々ゲストが最後のコメントを残し、再び88一人だけの配信へと戻る。


「――いやぁ~~、振り返ってみれば、やっぱり色々あったねぇ~~」


後半のゲストが抜け、88は考え深そうにそう話だし、卒業配信の締めと、今後の自分の身の振りに対して、ようやく口を開く。


「卒業配信も、全ての進行を追えたわけだし……、ここいらで、どうして88を辞める事にするのか、そして、今後はどうしていくのか、その話しでもしますか」


ずっと濁してきた本題に、コメント欄はざわつき、88は意を決したように話し出す。


「まずは、どうして88を辞める事にするのか……、だけど。

う~~ん、いざ口にするとなるど難しいね?

まぁ、まず確実に言える事は、今の配信のスタイルに、物凄い孤独を感じたからって言うのが一番の理由かな」


88はそう言い放ち、穂高に話した配信を辞める理由を、そのまま視聴者に話す。


「コラボとか、色々今でもしていたんだけどさ?

ある程度、活動して有名になっていくと、コラボ相手とかも、話題性のある人が多くなって、好きとか嫌いとか以前に、やっぱり数字が指標になってくるんだ。

お互いに最初は気を遣うし、本当の意味で仲良くなるのは時間が掛かる。

――別にそこに対して、大きなストレスを感じていたわけじゃないけど、段々と不自由を感じてね?

昔は、自分の気になる相手に、自由に声をかけて、仲良くなって……、仲良くなりすぎて入り浸っちゃったり……とか、そういうのがすごく楽しかったんだけど、それも中々できなくなって。

なにより、そんな事をしていた昔の仲間達は、どんどんと月日が経つにつれ、配信をやめていって、ついには一人になっちゃってさ??

実際は、そんな事無いし、今付き合いがある人達だって、みんな良い人ばっかりなんだけど、頭では分かっているんだけど……、ちょっとその人達がいなくなるのが、あまりに辛くて…………」


88はつらりつらりと自分の気持ちを、不器用に語っていき、既に出番を終えている穂高であったが、88のその最後の言葉を真剣に、配信を通して聞いていた。


「そんな事もあって、私は多分、一人では長期に渡って活動が出来ないだと判断したの。

最近は、レコード契約も有難い事に頂いて、いろんな仕事も貰えてる事から、個人で配信していくのは難しいと感じていたし。

――――だから、私は、個人配信主である88を卒業して、ある企業に今後、所属する事になります。

独りだと感じない程に、温かい環境があり、沢山の仲間がいる環境。

端から見ていて、とても魅力的に見えるそのグループに、私は入ります」


88の発言に、コメント欄では様々な憶測が飛び交い、配信者が所属する企業や、VTuber企業の名前もあがったりしていた。


「私、88は、『チューンコネクト』に来年から所属させていただきますッ!!」


88は、そう高らかに宣言し、自分の視聴者に、告白をした。

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